G7及びEUで凍結している、ロシア中央銀行の資産から発生する収益を用いたウクライナ支援についての最近の動き

欧米でのウクライへの支援の方法として、ロシアの中央銀行が海外で保有する資産が先の経済支援で凍結されており、この凍結した資産が生み出す収益を担保にした債券を発行して、この発行手取り金をウクライナの支援に充当することを米国が計画し、G7諸国国に承認してもらう予定だと言うニュースが3月22日のBloombergで報道された。

この報道によれば、「G7諸国及びEUで凍結しているロシア中央銀行を新たに作る特別目的会社(SPC)に集めて、その凍結した資産から発生する収益(配当、利子)を担保に「自由の債券」を発行するようだ。

米国が提案する債券発行に発行手取り金は、米国の議会で承認されないままでいるウクライナへの600億ドルの支援予算とほぼ同程度の規模になると言う。

 

米国以外では、ベルギーがこの債券発行スキームに賛成のようだ。一方、ドイツ、フランス、イタリアは、これには反対のようだ。

一方、「3月21日にブリュッセルで開かれている欧州連合(EU)首脳会議は、凍結されたロシアの資産から得られる資金をウクライナ支援に充てる計画について、まだ合意に至っていないが、後日さらなる協議を行うことで合意した」とFrance 24は報道している。

また、Guardian によると、「欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は木曜日遅く、ブリュッセルで開催されたEU首脳会議の初日の終わりに、この欧州委員会による提案は今年中に30億ユーロを生み出し、7月までに最初の10億ユーロをウクライナに提供できると述べた。」と伝えている。

さらに、このスキームでウクライナ支援に充てる資金の使途は、90%を軍事計画に、10%を復興に充てることになっており、ハンガリーの懸念に応えるため、一部の資金がEUの世界各地の平和維持活動への資金提供に回される可能性もあるとのことだ。

具体的なスキームとしては、ウクライナ向けに武器を購入する為に、EUが運営するファンドにロシア中央銀行の凍結資産からの収益を還流させることを想定している。

米国/ベルギーとEUが提案するスキームには違いがあるが、ロシア中央銀行の凍結資産からの収益にフォーカスを当てていることには変わりなく、今のところは、凍結した資産を売却してまでは想定してないようだ。

受取利息や配当等の収益をウクライナ支援の源泉するのであって、ロシア中銀の資産を没収してる訳ではないから、「まだ、大丈夫ではないか」と言う安易な発想であるが、受取利息や配当もロシア中銀の資産の一部であることに変わりはないとするのが普通の金融リテラシーのある人の考え方だ。

一方、米国/ベルギーが提案している債券発行の場合、想像するに、債券の毎年の利払いをロシア中銀の凍結した資産から収益で賄うことを期待しており、EU案と比べるとよりレバレッジが効いて、より多額の支援をウクライナにすることが可能と見ているのではないか。

しかし、債券発行スキームの場合、発行体であるSPCにロシア中央銀行が保有する資産を一旦売却することになり、世界的なコンセンサスが得られている国際経済法の下では、各国の中央銀行は第三者による保管資産に対するいかなる強制執行からも免除されている中では、ロシア中央銀行の資産を管理しているベルギーの証券決済機関のEuroclear Bank SA/NVに資産売却の権限はない。

ロシアは、この債券発行に係る自国資産の所有権を確認する訴訟や債券の発行体(SPC)へ自国資産を不当に処分したとして、Euroclear Bank SA/NVに損害賠償請求を起こすのではないかと思われるが、このような訴訟が起こされた中で、SPCの発行する債券などに投資する投資家はまずいないだろう。

また、資本市場で起債する際には、通常、S&PやMoody‘s等の格付機関に信用格付けを付与してもらうのが市場慣行となっているが、両社から格付けを取得することなど期待できないと考えてよいのではないか。

(ひょっとすると、G7あるいはNATO加盟国の保証が入るのかもしれない。)

ロシアは、いずれの場合であっても、ロシア中央銀行の凍結した資産を用いたウクライナ支援が実現したら、対抗手段として、ロシア国内にある西側の資産の凍結や没収を進めることになろう。

しかし、この場合は、民間企業が保有する資産や権益が対象となる見込みだ。JTグループのロシア事業や日本の商社等が権益を有するやロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」「サハリン2」にもリスクが発生するだろう。

2月中旬に出た、FitchRatingのプレス・リリースによれば、2023年末時点で、Euroclear Bank SA/NVはロシア中央銀行の凍結された資産を含むロシアの凍結資産約1,300億ユーロを管理し、2023年には金利収入44億ユーロ、ベルギー法人税収入11億ユーロを生み出したとされている。

欧州を代表する証券決済システムのEuroclear Bank SA/NVに於いて、ロシア中央銀行の資産やその収益が所有者の意向に反する形で利用されたとなれば、他の中央銀行、ソブリン・ウエルス・ファンド、機関投資家及び富裕層に与える影響は大きく、欧米の有価証券を保有するリスクが一段と顕在化し、米国国債や欧州の各国国債などからの資産離れが進む可能性があるだろう。

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