米国でのTikTok禁止を巡る動きについて

既にこの件は一度取り上げたが、米国内外で動きもあり、再度取り上げることにしよう。

米国でのTikTok禁止は、表向きは、中国政府がTikTokを通じて米国民の個人情報にアクセスする恐れがあり、米国の安全保障の観点から、TikTokの親会社であるByteDanceは中国企業なので、米国の事業を売却しない限り、米国でのTikTokへのアクセスを禁止すると言うものだ。

これについては、米国下院は既にこの法案を可決し、上院での採決次第となっている。

米国の上院では、この法案以外にも重要な法案が沢山ある中で、十分な審議もせずに採決していいのかと言うことを上院院内総務チャック・シューマー氏が述べており、商業委員会のマリア・キャントウェル委員長の発言を見ると、3月20日(水曜日)の機密ブリーフィング後、TikTokに関する次のステップとしてインテル委員会と商業委員会が合同で公聴会を開く可能性が高いことを示唆している。

こうした公聴会を開催する動きが出て来ると、法案自体が会期内に十分審査されず、採決されない可能性が上がるだろう。

米国のTikTokユーザーの反応は大きくて、地元選出の上院議員に当該法案に署名しないように求める動きを含めて、大きなうねりになっている。

今年は米国も大統領選挙だけでなくて、総選挙の年でもあるので、こうしたユーザーの動きには議員も軽視することは出来ないのではないか。

さて、3月中旬に、米連邦取引委員会(FTC)がMetaのフェイスブック部門のプライバシー慣行に関する調査を再開することを当面止めることはできないと、米連邦控訴裁判所は同社がすでに50億ドルの罰金を支払い、さまざまな保護措置に同意しているにもかかわらず、異議を唱えたことが分かった。

さて、親会社と言われるByteDance Ltd.は、本社はケイマン諸島で、近い将来のIPOを目指して、創業者が保有している株式は20%程度、残りは従業員と大手機関投資家を含む投資家が保有していることは前回もお伝えした。

また、米国の事業運営については、トランプ大統領の第1期政権時代にも安全保障上の問題が指摘されており、紆余曲折はあったものの2022年6月に、「米国のユーザー・トラフィック全てが『Oracle Cloud Infrastructure』に送られている。」と発表している。

実は、ByteDanceは今回のような米国当局の動きを想定して、幾つかの計画を準備して来たと言われている。

データセンター・ジャーナリストのセバスチャン・モス氏によると、その1年後、TikTokは「プロジェクト・テキサス」を発表し、15億ドルを投じてデータの管理をオラクルに委ね、ソースコードはTikTok U.S.データ・セキュリティと呼ばれる米国政府承認の社内委員会が監督することを約束し、同時にTikTokは、欧州における同様のリスクを回避するため、「プロジェクト・クローバー」を立ち上げたとしている。

このプロジェクトは、欧州のユーザーデータをすべてEU域内に留めるというものであった。

このように、米国安全保障上の懸念を取り除く為に「プロジェクト・テキサス」を発表し、コーポレート・スキーム、株主構成も変えて来たが、TikTok禁止法案は可決されてしまった。

反中国の流れが高まる中で、政治色の濃い動きが目立って来ていると言ってもよいだろう。

では、この政治的な動きの背景には何があるのだろうか?

仮に、中国政府がTikTokを通じて、米国民の個人情報を収集し、本来の目的以外に使用可能であるとしたら、他のSNSでは米国のインテリジェンス機関による同種の恐れはないとは正直言えないだろう。

私は、詰まるところは、TikTokの商業的な成功を見て、なお且つ今後の成長のポテンシャルを鑑みると、TikTokの米国事業を潰すか、合併吸収したいと思う影響力の大きい人達がいたと言うことなのかなと考えている。

ここで、TikTokの米国事業を見てみれば、いかに魅力的なのかもお分かり頂けるかと思う。

3月14日に、オックスフォード・エコノミクスは、米国の中小企業がTikTokで生み出した経済効果を測定した調査結果の概要を発表した。

2023年夏に実施された調査によると、以下のようになっている。

  • TikTokでマーケティングや広告を行った米国の中小企業(SMB)は、2023年に約150億ドルの収益を生み出した。

  • また、TikTokを利用する中小企業は、TikTokが提供する無料サービスにも大きな価値を置いており、これが有機的な成長を支えている。これら2つの価値の流れを合わせると、2023年の米国の国内総生産に242億ドルの貢献を支えた。

  • この調査ではまた、中小企業の約40%が、米国で700万の企業と1億7,000万人のアクティブ・ユーザーを抱えるTikTokは自社の存在に不可欠だと答えていることもわかった。
 

また、3月15日のFinancial Timesは、TikTokの米国売上高が160億ドルに到達と報道し、TikTok CEOは、最近の動画で、米国では上記のSMBやクリエーターの数が併せて約300,000に到達し、同サービスが禁止になれば、職を失う恐れがあると警告している。

米国上院での動きは引き続き要注目であるが、TikTokの今回の米国での禁止措置に対して、同社のユーザーに直接働きかけ、議会に苦情を申し立てるよう促した。

これにより、同社と米国議会との直接的な対立から、表現の自由をめぐる米国政府と米国市民とのより広範な対立へと物語をシフトさせて来ている中で、トランプ大統領もTikTokの米国での禁止はフリー・スピーチの観点から懸念を表明しており、今後の動向には眼が離せない。

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