米国大統領選挙を振り返って

トランプ前大統領が115日の米国大統領選挙に勝利し、上院で過半数を確保、下院でも過半数の議席を確保できる見込みが強まったこともあり、民主党及び同党の支持者の中では、今回、何故このような結末を迎えるに至ったのか?その原因分析が随所で始まっているようだ。

 
 
 
 
 

そういう意味では、選挙予測を行った各社の予想が、随分と外れたことも特徴的であると言える。

終盤でもカマラ・ハリス副大統領とトランプ前大統領の支持率が拮抗している、あるいは、カマラ・ハリス副大統領が僅差でリードはしているものの、依然として結果を断定的予測できる状況にないと言うものが多かったと言う印象を持っている。

メインストリーム・メディアは、民主党のプロパガンダを垂れ流していると言われるほど、左翼・リベラル志向が強いことから、保守系の支持者からは、選挙予測の方法やサンプル抽出方法になんらかのバイアスがかかっているのではないかとの指摘もあったくらいだ。

そういう意味では、上記の選挙結果を受けて、民主党支持者の中では、

「こんなはずじゃなかったのに、どうしちゃったのか」

と言う疑問が湧いて来るのも全く不思議でない。むしろ、選挙予想を賭けの対象にするPolymarketKalshiPredictIt などのBetting marketsTruth Socialの運営会社でナスダック市場に上場していて、トランプ前大統領が発行済み株式の約58.7%を保有する、Trump Media & Technology Groupの株価の推移の方が、今回の選挙結果を正しく予見していたのかなと思われる。

さて、前述の選挙に係る、民主党及びその支持者側の敗因分析を見ると、

①カマラ・ハリス副大統領がそもそも勝てる見込みがなかったと言うものや

②ジョー・バイデン大統領が事実上キック・アウトされて同副大統領が民主党の大統領候補になった経緯が民主的でなかったとか、あるいは

③このような“民主的でない”プロセスを経た結果、バイデン大統領に対してあった十分な支持者層から支援を同副大統領は得られなかったとか、さらに、

④イスラエルによるガザ地区での停戦が長く実現しないことに対する現政権への不満や信頼感の低下や、

⑤これまで民主党の岩盤支持層と言われた、黒人及びヒスパニック系の支持が十分得られなかったと言った点を列挙されるものが多いように見える。

しかし、不思議なことに、バイデン・ハリス政権がこの四年間で実施した政策や実績に対しては、真摯に反省するものはあまり見受けられないと言える。

自己批判になってしまうと言えばそれまでだが、例えば、米国南部の国境に於けるオープン・ボーダー政策は、左翼・リベラル派が強く支持して来たDEI方針の具現化したものであると言えるが、普通の人の国家観から大きく乖離していることになかなか気が付かないと言うのは誠に不思議だ。

この点、保守系の論客と言われる人達の分析には傾聴すべき点が幾つもある。

Dan Bonginoが米国大統領選挙の結果を端的に表しているとして紹介した、CNNの報道番組で保守系のストラテジストのScott Jennings氏が以下のような主旨で大変興味深いコメントをしています。

  • Jennings氏は、最近の選挙結果がアメリカ国民、特に労働者階級からの強い政治変革への要請を表していると彼が考えていることを強調しています。彼は共和党の勝利を、「普通のアメリカ人」が政治エリートやメディアに無視され、軽視されていると感じているメッセージとして解釈しています。

  • 彼は、政治やメディアのエスタブリッシュメントを批判し、アイデンティティ政治や象徴的な問題に重点を置きすぎており、インフレ、雇用の安定、治安など、労働者階級のアメリカ人にとって最も重要な経済的・日常的な問題に対応していないと指摘しています。

  • 彼は、民主党を中心に両党がこれらの問題に対応する重要性を過小評価しており、トランプ前大統領のポピュリスト的なメッセージがこれらのフラストレーションを認識しているために共鳴したと述べています。

  • 彼は、メディアや世論調査業界が自らのアプローチを根本的に再評価する必要があると考えており、このシフトを正確に予測・理解することに失敗したと述べています。

  • 彼は、政治指導者やアナリストが重要であり続けるためには、ますます「ワシントンのいつものやり方」に幻滅を感じている平均的なアメリカ人の声にもっと耳を傾ける必要があると結論づけています。

Jennings氏のコメントの中で出て来た

“アイデンティティ政治”

とは、特定の社会集団のメンバーが直面する不公平な経験を共有することに根ざした政治活動や理論を指しており、これらの集団は、人種または民族、 性別または性的指向、宗教、社会階級、障害の有無、国籍などの要素によって、しばしば定義される。

この

“アイデンティティ政治”

に関しては、デイリー・ワイヤー名誉編集長のBen Shapiroが、Amazon Prime Liveのブライアン・ウィリアムズの選挙中継に参加し、その中でなかなか興味深い発言をしているので、ここに紹介したい。

  • 「民主党が何回かの選挙サイクルの間、投票率向上のために頼りにしてきたアイデンティティ政治が、この時点で大きく崩れたということだと思います。民主党は、カマラ・ハリス候補を支持するヒスパニック系票の大躍進を期待していた。しかし、それは実現しそうにありません」とシャピロ氏。

  • 「ヒスパニック系住民のトランプ大統領への、より広い意味での共和党へのシフトは、かなり現実的です。黒人男性有権者もトランプ支持を表明しているという。

  • シャピロ氏は、「共和党の候補者がこれらの層にアピールしているのは、民主党のように彼らに迎合していないからだ。」と述べた。

  • 「トランプ大統領をどう思おうと、彼はほとんどすべての人に同じアピールをする傾向がある。彼は、民主党が伝統的に行ってきたような、ハリスのための白人の男のための別のキャンペーンを行うような、ある種の同じ方法で、民族グループごとに人々を本当に分解しようとしない。」

アイデンティティ・ポリティクスの時代は終わりに近づいているのかもしれない。

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