米国によるロシア産濃縮ウランの輸入禁止に係る法令の動き

米国上院は4月30日に、ロシア産濃縮ウランの輸入を禁止する法案(The Prohibiting Russian Uranium Imports Act)を全会一致で可決し、バイデン大統領の署名を待つばかりとなった。(下院は昨年12月、同法案を可決済み)

この禁止令は法案成立日から90日後に発効するが、米国の原子炉を稼動させるための低濃縮ウランの代替供給源がない場合、あるいはロシア産ウランの輸入が国益にかなうと判断された場合は、エネルギー省が免除を認めることになる。

但し、免除があったとしても、法案はロシア産ウランの輸入量を2024年に476,536kg(または476.5トン)に制限し、2027年まで毎年許容量を減らしていき、2028年には免除は終了する。(Bloomberg、Nuclear Newswire)

2023年10月、ホワイトハウスはロシアからの濃縮ウラン輸入を長期的に禁止することを求め、それを「国家安全保障上の優先事項」と表現した。

当時のファクトシートでバイデン政権は、「ロシアのウラン供給源への依存はアメリカ経済にリスクをもたらす 」と主張していた。(RT)

ここで、濃縮ウランの使用用途を改めて確認すると、低濃度の濃縮ウランは原子力発電の燃料に、高濃度の濃縮ウランは原子爆弾の製造に使用されると理解されている。

原子力発電は米国の発電ミックスにおいて重要かつ不可欠な役割を果たしており、国内総電力の約18%を供給し、クリーンで信頼性の高い電力の最大の供給源となっている。(意外に思われる方もいらっしゃるかとは思うが、原子力発電は、クリーン・エネルギーの分類となっている。)

このように原子力発電の燃料に必須の濃縮ウランではあるが、米国はこれまでどのようにこれを確保して来たのだろうか。

米エネルギー省によると、2022年、ロシアは米国に出荷される濃縮ウランの24%を供給しており、重要な燃料のトップ輸入国となっている。

米国にはウラン鉱床があるが、需要を満たすには十分ではない。世界のウラン生産量の半分近くをロシアが占めている。(RT)

米国にとって、ロシア産濃縮ウランに代わる主な選択肢は、URENCO(濃縮プラントを運営するドイツ、オランダ、英国、米国の企業のコンソーシアム)、ORANO(大規模商業濃縮プラントを運営するフランス企業)、CNNC(濃縮プラントを運営する中国の国有原子力企業)、そして米国国内での増産と思われる。

Foreign Policyによれば、「URENCOはロシア産ウランへの依存を減らすため、加盟国全体で濃縮能力の拡大を急いでいる一方、フランスはまた、国内のウラン濃縮能力を高める計画を発表し、中国は近年、濃縮ウランの対米輸出を増やしており、ロシアの供給源に取って代わる可能性がある。」としている。

ロシア産濃縮ウランの輸入を禁止する法案が施行されても、米国政府は、ウラン燃料の国内生産と濃縮能力を強化する27億ドルの計画を発表しており、これによる米国内の増産や前述の企業からの輸入で、米国内では大きな問題は生じないのではないかと言う見方もある一方で、Bloombergは、核燃料市場調査会社UxCのジョナサン・ヒンゼ社長のコメントを引用し、禁止措置によって濃縮ウラン価格が20%上昇し、1SWU(業界における標準測定単位)が200米ドルにもなる可能性があると警告している。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール