TikTok社・米国事業の行方

TikTok社の米国でのアクセス禁止のデッドラインである1月19日が目前に迫る中で、ここに来て、色々な動きが出て来ているので、これに関する情報をシェアしていきたい。

 
 
 

1月13日のForbesの

“Supreme Court Could Rule On TikTok Ban Wednesday‐After Signaling It May Uphold Law”

の記事によれば、

「米国の連邦最高裁判所は、金曜日の口頭弁論で、TikTok社がByteDanceから離脱しない限り、TikTok社を禁止する連邦法を支持する可能性を示唆し、TikTok社がこの政策に反対していることに懐疑的な見方を示したため、早ければ1月15日(水曜日)にもTikTok社の運命について判決を下す可能性がある。」

と報じている。

米国の連邦最高裁判所は、

「TikTok社が親会社のByteDanceから分離しなければ禁止されるという連邦法が憲法修正第1条に違反するかどうか」

に関して、1月10日に口頭弁論の機会を設けた。

同社と同社のアプリケーションのコンテンツ・クリエーターは、この米国禁止令はプラットフォーム上のすべての言論を遮断することになり、彼らの憲法修正第1条の権利を侵害すると主張する一方で、米国政府は、ByteDanceが中国の所有者であることから、この米国禁止令は国家安全保障のために必要であると言う主張を繰り返した。

連邦最高裁判所がいつ判決を下すかは不明だが、同裁判所は水曜日に係争中の事件の意見を発表すると発表しており、その中にはTikTokの禁止に関する判決も含まれる可能性が十分ある。

1月19日の米国禁止令のデッドラインの設定は、トランプ次期大統領の就任日が翌日の1月20日になっていることから、大統領選挙中からTikTokの米国禁止令に反対の意見を述べて来た、トランプ次期大統領が就任日当日に大統領令を出しても間に合わない状態にあり、トランプ次期大統領にとっても、難しい対応を迫られていたのは事実である。

係る状況下で、トランプ次期大統領は、連邦最高裁判所にアミカスブリーフを提出し、米国でTikTok社を禁止する法律の実施を延期するよう求めるという異例の措置をとった。

この準備書面では、トランプ次期大統領は、新政権がこの問題の「政治的解決」を追求できるようになるまで、TikTok社の禁止令の発効を一時停止するよう最高裁判所に要請し、禁止措置を延期することで、次期政権がTikTok社の全国的な閉鎖を防ぐための解決策を交渉できると主張していた。

また、同書面の中では、

「トランプ次期大統領だけが、政府によって表明された国家安全保障上の懸念に対処しつつ、プラットフォームを救うための解決策を交渉するための完璧な取引の専門知識、選挙での信任、政治的意志を持っている。」

とも主張していた。

しかしながら、1月10日の前述の口頭弁論を考慮すると、最高裁判所がTikTok社の禁止令の発効を一時停止するような判決を出す可能性は小さくなったのかなと言う印象を受けた。

1月14日のBloombergの

“China Discusses Sale of TikTok US to Musk as One Possible Option”

の記事では、

「関係者によれば、“表現の自由”を定めた憲法に違反するというTikTok社側の主張が退けられた場合に備え、マスク氏が傘下に置くX(旧ツイッター)がTikTok社の米国事業の経営権を取得し、一体的に運営するシナリオが検討されているという。」

と言う内容が報じられている。

ここで、トランプ次期大統領とTikTok社の米国禁止令を巡る重要な事実として留意すべきこととして、トランプ次期大統領の大統領選挙期間中の超大口の支持者である、Jaff Yass氏(フィラデルフィアを拠点とするトレーディング会社Susquehanna International Group, LLP (SIG)の共同創業者)が彼個人及びSIGを通じて、TikTok社のオーナーであるByteDance Ltd.の超大口投資家であることは、決して忘れてはいけない。

トランプ次期大統領自身にTikTok社の米国禁止令の適応を何としても遅らせたい必要性がある中で、トランプ次期大統領の強力な支援者であり、TikTok社の米国事業の買収に際しても十分な資金的な裏付けを持つ、イーロン・マスク氏に本件の支援を求めたとしても、全く不思議ではないと言える。

前述のBloombergの記事によれば、

「中国当局はTikTok社をバイトダンスの傘下にとどめることを強く望んでいるが、最高裁の判事らは10日の口頭弁論で、法律が支持される可能性が高いと示唆した。」

と述べ、

「関係者によると、イーロン・マスク氏と注目度の高い取引を行う可能性は、中国当局にとって魅力的であり、最終的にTikTok社が売却されるかどうかに関し、中国政府が発言権を持つことも予想される。」

と報じている。

中国政府にとっても、TESLAの中国事業を通じて、イーロン・マスク氏とは長年、良好な関係を構築して来ているだけに、トランプ次期大統領が大きな信頼を置いている、イーロン・マスク氏を絡めて、トランプ次期米政権への対処を巡る広範な協議の一環として、TikTok社の米国事業に係る緊急対応策の検討をすることは十分メリットがあると判断したと思われる。

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