想像以上に困難なプロセスが伴う、ウクライナ戦争の停戦の実現

トランプ大統領の第二期政権が始まり、いよいよウクライナ戦争の停戦がいつ、どのような型で実現するのが俄然注目されて来た。

 
 
 

大統領選挙中から、トランプ大統領は就任して24時間で停戦合意すると強調して来たが、タイミングに関しては、就任後6か月以内と訂正し、停戦実現の難しさ、複雑さを改めて感じる。

大枠としては、トランプ政権は2025年にウクライナへの追加支援向け予算を計上しないとしていることから、予算的にはMATOやその他のG7諸国が米国負担分を肩代わりしない限り、ウクライナはロシアとの戦争を継続出来ないことになり、ウクライナは停戦に向けてロシアと交渉を始めざるを得ないと言うことになろう。

トランプ大統領の今回の公約には、米国の高インフレの是正であり、高止まりしたエネルギー価格の引き下げが含まれており、ウクライナ戦争の停戦が実現し、ロシアの原油や天然ガスに対する経済制裁が解除あるいは大幅に緩和されるか否かは、トランプ大統領の高インフレの是正に係る公約の実現の可否に大きく影響することになろう。

停戦に関して、ロシアの立場で考えると、既に報道されているように、ウクライナに対する特殊軍事オペレーションで勝ち取った東ウクライナの領土の確保や、ウクライナのNATO加盟不可辺りが重要な条件になると思うが、停戦後のロシア経済の今後を考慮すると、前述の2項目と同程度あるいはそれ以上に重要なものは、EU及びG7による経済制裁の解除であろう。

ロシアに対する制裁は幾重にも課されているが、ロシアの主要な金融機関がSWIFTから締め出されたり、約2,700億ユーロのロシア中央銀行の外貨建てリザーブがEU及びG7諸国で凍結されていること、ロシア産の原油や天然ガスの輸出規制が強化されていること等、ロシア経済の成長に大きな影響が出ていることには違いなく、この辺りの経済制裁が停戦とともにどの程度解除されるかは停戦に向けて重要な交渉材料となろう。

特に、バイデン前政権時代の最後にロシア中央銀行の外貨建てリザーブを凍結するだけでなく、凍結した外貨建てリザーブとして保有していた主要国の国債等から得られるインカム収入を返済の原資とするEU及びG7のウクライナ向けの協調融資(総額約500億ドル)の一部が昨年末までに実行されてしまっていることも問題の解決を複雑にしているのではないかと思う。

ウクライナ支援するEUの動きを改めて確認すると、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長やカヤ・カッラス欧州連合外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長などは、従来通りのウクライナ支援の姿勢を変えていないが、欧州を国別に見ると、フランス、ドイツではウクライナを強く支援して来た左翼・リベラル政権が風前の灯になっており、これらの現政権の受け皿になる保守政権はいずれもウクライナ支援に対して反対の立場を取っている状況にある。

ウクライナ停戦に係るEUの難しいところは、EUのウルズラ・フォンデアライエン氏やカヤ・カッラス氏が真に欧州全体のインタレストを代表しているかと言う根源的な問題があることだ。

こうしてウクライナ停戦を改めて考えると、一時的な休戦を実現することは可能であるが、前述の条件に加えて、戦争で甚大な被害を受けたウクライナの国土の復興をどのように行うのか?と言った点に踏み込むと、各国の費用負担の話しにもなり、問題が山積しているのもまた、事実だ。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、事実上、NATOの代理戦争として、ウクライナ戦争でロシアと戦って来ただけに、NATOの主要国である米国がウクライナ戦争を止めると宣言している状況下では如何せん戦争を継続することは事実上不可能であるが、停戦の条件については、ロシアのプーチン大統領と米国のトランプ大統領のトップ会談で是々非々の協議しないとなかなか先に進まないのではないかと思料する。

しかし、バイデン政権下では実現するのは大変難しいと見られていた、ハマス・イスラエルの紛争もトランプ大統領の強い影響力で就任式直前に停戦が実現したもの事実である。

ディールすることにかけては、世界一の指導者であるトランプ大統領が、プーチン大統領とどのような形で停戦をディールするのか、世界は大きな期待をもって注目している。

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