Daniel DavisのDeep Diveのインタビューで退役米陸軍大佐の Douglas Macgregor は、イラン戦争、中東における米国の立場、イスラエルとの関係、そしてウクライナ戦争について幅広く論じた。全体を通じた彼の主張は、「米国は軍事的には依然として強大だが、政治的・経済的・外交的には急速に追い詰められており、イランとの対立においてもウクライナ問題においても、自らの限界に直面している」というものであった。
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1.イランとの「合意間近」というトランプ発言への懐疑
マクレガーは、トランプ大統領が繰り返し主張している「イランとの包括的合意が間近に迫っている」という発言について、極めて否定的な見方を示した。
彼によれば、現時点で実際に交渉がまとまる兆候はほとんど存在せず、トランプが何を根拠に楽観的な発言をしているのか理解できないという。以前に存在したとされる覚書(MOU)も最終的には破棄されており、現在の状況から見て、近い将来に大きな合意が成立するとは考えにくいと述べた。
また、金融市場やウォール街の一部が依然としてトランプ発言を信用していること自体が不思議であり、市場は大統領の発言を過大評価していると指摘した。
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2.トランプは戦争を望んでいなかったが、抜け出せなくなっている
マクレガーは、トランプ自身は本質的にこの戦争を望んでいなかったとの見方を示した。
彼の分析では、トランプは選挙期間中にイスラエル支持勢力や大口支援者に対して約束した政策を実行する義務を感じており、その結果として軍事行動を開始した。しかし実際には戦争の長期化を望んでおらず、むしろ早期に手を引きたいと考えているという。
ただし問題は、戦争を終わらせることが政治的に非常に困難になっている点である。トランプは「強い指導者」「常に勝者」というイメージを自ら作り上げてきたため、現時点で撤退や妥協を選択すると、自ら構築した政治的イメージを傷つけることになる。そのため、戦争を終わらせたい一方で、それを公然と認められない状態に陥っているという見方を示した。
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3.世界の大多数はイラン支持という認識
インタビューのタイトルにもなっている中心的な論点は、「世界はイランを支持している」という主張である。
マクレガーによれば、中国、ロシア、トルコ、エジプト、さらには多くのグローバルサウス諸国は、軍事的な支援の程度には差があるものの、基本的にはイラン側に立っているという。
彼は、ペルシャ湾の混乱についても「イランが原因ではなく、米国の軍事介入が原因である」という見方が世界の大多数で共有されていると述べた。米国国内ではイランが航行の自由を妨害しているという説明がなされているが、中国やロシア、中東諸国では全く異なる認識が広がっているというのである。
さらに、イランは過去数年間にわたり米国との対立回避を模索していたにもかかわらず、最終的に米国が軍事力を行使したことで現在の危機が生じたと主張した。
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4.イランは崩壊せず、むしろ米国が先に限界を迎える
マクレガーは、この戦争を「競争的崩壊(Competitive Collapse)」と表現した。
つまり、どちらが先に耐えられなくなるかという持久戦であり、彼はイランではなく米国側が先に限界を迎える可能性が高いと考えている。
その理由として、
* 米国の財政赤字
* 国債市場の脆弱性
* インフレ圧力
* 戦略石油備蓄の減少
* エネルギー価格上昇
などを挙げた。
彼は特に、2026年夏から秋にかけて米国経済への負担が急増し、9月頃には現在の政策を維持できなくなる可能性があると予測している。
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5.イラン軍は予想以上に強靭だった
米国政府はこれまで、イラン海軍や防空網をほぼ無力化したと説明してきた。
しかしマクレガーは、その評価は誇張されていると主張する。
彼は、米軍のMQ-9リーパー無人機が多数撃墜されていることを例に挙げ、米軍のISR(情報・監視・偵察)能力は大きく低下していると指摘した。
また、イランは戦争開始時よりも現在の方が軍事的能力が向上しており、中国やロシアから技術的支援を受けている可能性もあると述べた。イランの技術者や軍事計画担当者は米国が考えている以上に優秀であり、戦争が長引くほどイランに有利になると分析した。
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6.米国とイスラエルの利害は一致していない
インタビューでは、トランプ政権とイスラエルのネタニヤフ政権との間に生じつつある温度差についても議論された。
マクレガーによれば、米国の最大目標は「イランの核兵器保有阻止」であるのに対し、イスラエルの目標はより広範である。
イスラエルにとって最も重要なのは、
* ヒズボラの弱体化
* 北部国境の安全確保
* レバノン南部からの脅威除去
であり、イラン問題はその一部に過ぎない。
そのため、たとえ米国とイランが妥協に近づいたとしても、イスラエルがそれに全面的に従う保証はないと指摘した。
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7.ヒズボラ問題は最も解決困難な争点
マクレガーは、イスラエル軍首脳部が絶対に妥協できない問題としてヒズボラを挙げた。
イスラエル北部の住民が安全に帰還するためには、ヒズボラが現在の軍事能力を維持したままでは不可能だというのがイスラエル側の認識である。
しかし同時に、イスラエルが軍事力だけでヒズボラを完全に排除できる可能性も低いと認めた。
その結果、レバノン南部問題は政治的妥協も軍事的解決も困難な「袋小路」に陥っているとの見方を示した。
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8.米国の中東支配は終わりつつある
マクレガーは、戦争が終結した後も米国が中東で従来通りの影響力を維持することは難しいと考えている。
彼は、米軍基地への攻撃や地域諸国の反応を踏まえ、
> 米国は事実上ペルシャ湾地域から追い出された
とまで述べた。
今後、中東諸国は中国やロシアとの関係を強化する一方で、米国との軍事協力には以前ほど積極的ではなくなる可能性が高いという。
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9.アジアの米軍基地戦略への批判
マクレガーは、中東問題から話題を広げ、在日米軍や在韓米軍のような前方展開基地の有効性についても疑問を呈した。
ドローン、長距離ミサイル、精密攻撃技術の発展によって、固定基地はかつてよりもはるかに脆弱になっているという。
また、日本や韓国の国民は中国との戦争を望んでおらず、経済面では中国との関係維持を重視しているとも指摘した。
彼は、米国が中国との対立を煽ることで、むしろ同盟国を危険にさらしていると主張した。
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10.ウクライナ戦争への見方
ウクライナ戦争については、英国・フランス・ドイツが戦後の安定化部隊構想を進めていることについて言及した。
マクレガーは、このような構想はロシア側から見れば「ウクライナを再び対ロシア軍事拠点として再建する計画」に映るため、ロシアが戦争を終わらせる動機を弱めるだけだと分析した。
また、プーチン大統領が依然としてトランプとの何らかの合意に期待しているように見えることについても疑問を呈し、「現在の米国政府はイランに対してさえ約束を保証できないのだから、ロシアが期待するのは非現実的だ」と述べた。
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11.ウクライナ国家は疲弊しつつある
最後にマクレガーは、ウクライナ国内で強制徴兵への反発が強まっていることに触れた。
地方では徴兵担当者と住民が衝突する事例も報じられており、国民の戦争疲れは深刻化しているという。
彼は現在のウクライナ政府を、
* 民主的正統性を失った体制
* 外部資金によって維持されている構造
と厳しく評価した。
そして、西側からの資金供給が続く限り戦争は継続するが、資金が止まれば状況は急速に変化するとの見方を示した。
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12.総括
マクレガーの主張を要約すると、
1. イランは降伏しない。
2. 世界の多くの国はイラン寄りである。
3. 米国経済の方が先に圧力を受ける可能性が高い。
4. 米国とイスラエルの利害は完全には一致していない。
5. 中東における米国の影響力は低下している。
6. ウクライナ戦争も軍事的解決より政治的・財政的限界が先に訪れる可能性がある。
というものであり、米国が二つの戦争で同時に長期的な戦略的優位を維持することは難しいというのが、彼の一貫した結論であった。