トランプ政権を支える新しいシンク・タンク_American First Policy Institute

保守系のシンク・タンクと言えば、Heritage Foundation、 American Enterprise Institute、Hoover Institution等が有名かと思われるが、トランプ前大統領が第二期トランプ政権で実現したい各種政策・法案の準備を進めているのは、実はこうした伝統的な保守系シンク・タンクではなく、歴史の浅いAmerican First Policy Instituteであると言われている。

 
 
 

10月24日のNew York Timesの

“The Group at the Center of Trump’s Planning for a Second Term Is One You Haven’t Heard of”

の記事によると、

「この夏の終わり、著名な右派系シンク・タンクは、ドナルド・J・トランプ第2次政権で働く方法を学ぶため、全米から保守派を招いた。

しかし、今回の会合は、その事業や主要な後援者であるヘリテージ財団とは何の関係もない。

その代わり、アメリカ第一政策研究所(American First Policy Institute (“AFPI”))の仕事であった。

この右派シンク・タンクは、ほとんど宣伝も精査もされることなく、トランプ陣営の主要パートナーとして、再び権力を振るうための具体的な計画を立てている。」

と報じている。

同記事では、同研究所の概要について、

「AFPIとして知られるこのグループは、2020年後半にテキサス州の3人の富豪によって設立され、瞬く間にトランプ氏の政治組織のほぼ隅々にまで入り込み、トランプ氏の2期目計画において他のどの外部プレーヤーよりも緊密な関係を築いている。」

と紹介している。

同研究所のホームページを見ると、その設立のミッションとして

「アメリカ第一政策研究所(AFPI)は501(c)(3)の非営利、無所属の研究機関である。

AFPIは、アメリカ国民を第一に考える政策を推進するために存在する。 AFPIの指導原則は、自由、自由企業、国家の偉大さ、アメリカの軍事的優位性、アメリカの利益のための外交政策への関与、アメリカの労働者、家族、地域社会の優先である。」

を掲げていることが分かる。

再び同記事に戻ると、

「トランプ氏は、そのリーダーの一人で、トランプ氏の元内閣メンバーで長年の友人であるリンダ・マクマホン氏を公式移行チームの共同議長に選んだ。

同じくトランプ政権で働き、現在は非営利団体の最高責任者であるブルック・ロリンズ氏は、トランプ氏の首席補佐官候補として取り沙汰されている。

同研究所には、過去数年間、復帰を計画していた元トランプ政権関係者が多数在籍しており、ここ数週間、数名が静かに選挙移行チームのフルタイム勤務に移っている。」

と報じている。

さらに、同記事では]

「プロジェクト2025と同様、この研究所は連邦政府各機関の人員配置と政策課題の設定に関する計画を策定し、初日からトランプ氏への忠誠と行政権の積極的な行使を優先させた。

ロリンズ氏はインタビューを拒否したが、AFPIはトランプ氏が選挙に勝利した場合に署名できるよう、すでに300近い大統領令を起草しているという。」

とも述べている。

次期トランプ政権の政策ではないかと議論を呼んだものとしては、ヘリテージ財団の“プロジェクト2025”が一時期話題となったが、これに関連して、同記事では

「トランプ氏がどの政策を優先させるかを予測することは不可能であり、非営利団体のスポークスマンであるマーク・ロッター氏は、同団体は “いかなる候補者、選挙運動、政権移行を代表して発言するものではない”と指摘した。」

と述べているものの、一方で、

「しかし、ヘリテージの“プロジェクト2025”の作成者たちとは異なり、AFPIの政権移行計画の主要な立案者たちは、現在トランプ陣営に助言している。」

と報じており、AFPIが深くトランプ次期政権に浸透していることを表している。

今回のWeekly Summaryを書くに際して気が付いたことは、外務省のホームページにAFPIの特別フェローが上川外務大臣、林内閣官房長官を表敬訪問していたことだ。

同省のホームページには以下のような記述があった。

  • 9月3日、午前10時40分から約20分間、上川陽子外務大臣は、訪日中のロバート・ウィルキー・アメリカファースト政策研究所特別フェロー(The Honorable Robert Wilkie, Distinguished Fellow, America First Policy Institute)の表敬を受けたところ、概要は以下のとおりです。
 
 
  1. 冒頭、上川大臣は、ウィルキー特別フェローの訪日を歓迎するとともに、日米両国は深い信頼と重層的な友好関係で結ばれ、国際社会の問題に共に取り組むグローバル・パートナーであり、同盟の抑止力・対処力の一層の強化に取り組んでいる旨述べました。

  2. 双方は、インド太平洋地域が抱える諸課題について意見交換を行い、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化する上で、日米連携及び同志国の強化の重要性について一致しました。
  • 9月2日、午前11時40分から約30分間、林芳正内閣官房長官は、訪日中のロバート・ウィルキー・アメリカファースト政策研究所特別フェロー(The Honorable Robert Wilkie, Distinguished Fellow, America First Policy Institute)の表敬を受けたところ、概要は以下のとおりです。
    1. 冒頭、林官房長官から、日米両国は深い信頼と重層的な友好関係で結ばれ、国際社会の問題に共に取り組むグローバル・パートナーであり、ウィルキー特別フェローと意見交換できることを楽しみにしていた旨述べました。

    2. 両者は、日米同盟の重要性等につき懇談するとともに、日米関係の更なる強化に向け、それぞれ取り組んでいくことで一致しました。

最後に、AFPIが掲げるビジョンを見てみよう。

“アメリカ・ファースト・アジェンダ”と題された政策集のビジョンについては、同記事では、

「そのビジョンはトランプ主義に劣らない: 家族計画連盟への連邦政府の資金援助を停止し、薬物による中絶を含め、中絶前の超音波検査を義務付けることを求めている。

また、武器携帯許可証を50州すべてで相互利用できるようにし、石油生産量を増やし、パリ協定から米国を離脱させ、メディケイド受給者に就労条件を課し、法的に2つの性別しか確立しないことを求めている。」

と述べている。

さらに、

「また、ある重要な分野では“プロジェクト2025”よりもかなり踏み込んだ内容となっており、連邦政府職員の公務員保護をほぼすべて撤廃し、自由意志による職員とすることを求めている。

これは、トランプ氏とその側近が、第一次政権で邪魔になったと考えるキャリア職員を根絶やしにすることができると支持者たちは考えている戦略だ。」

とし、

「“当局は、差別的でない理由であれば、外部からの不服申し立てなしに自由に職員を解任できるようにすべきだ”と、研究所の政策集には書かれている。」

ことを明らかにしている。

米国大統領選挙でまで1週間を切って、結果が待ち遠しいが、仮にトランプ前大統領が勝っても、ロケット・スタートが切れるような準備は整いつつあるようだ。

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