米国大統領選挙に関する色々について

いよいよ米国大統領選挙の投票日まで30日間を切って来た。

多くの選挙予測が出ているが、両候補の支持率の差は僅差であり、大統領選挙の終盤の状況は非常にタイトなものになっていると言う見方も多い。

 
 
 

しかしながら、私の肌感覚では、メインストリーム・メディアが報道するような「カマラ・ハリス副大統領が僅差ではあるが、トランプ前大統領をリードしている。」と言うような印象は正直受けておらず、投票日が近付くにつれて、トランプ前大統領が目に見える形で寧ろリードを広げているのかなと正直感じる。

そういった印象を持つに至るには幾つか理由がある。

カマラ・ハリス副大統領候補自身が抱える根本的な問題は、彼女が、民主党内の大統領選挙の予備選を経ずに、バイデン大統領が2024年度の大統領選挙には不出馬と言う決定を受けて、民主党の幹部の意向で事実上出馬が決まってしまったと言うプロセスに在るのは間違いない。

左翼・リベラルな有権者の中でも、カマラ・ハリス副大統領を推している人は沢山いるものの、民主党の中にも、例えば、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏、ミシガン州知事のグレッチェン・ウィットマー氏など人気のある有力候補者はいた訳で、そういった有力候補と比較・検討する機会を民主党支持者が奪われたと言うところに、それなりの大きな心の蟠りが残っていることである。

もう1つカマラ・ハリス副大統領の支持が十分でないのかなと感じる理由は、これまで3年半以上、バイデン政権の副大統領として政権側にいたものの、彼女にこれと言った実績が殆どなくて、政権誕生以来、各方面ワード・サラダな発言を繰り返して来たからだ。

彼女がインフレに陥った現状を打破する経済政策を挙げても、南部からの不法難民が山のように押し寄せて来ている難民問題に対するソリューションを公約に入れても、何故、この3年半の間にこうした問題にまともに対峙してこなかったのか、理屈を持って説明できないところに、その根本的な問題がある。

直近の3年半の間、経済政策や移民・国境政策に正しく向き合っていない副大統領が、何故、次の4年間で正しく政策を実行できるのだろうか。

批判を恐れず、彼女がそれでも高い支持率を維持していると言われる最大の理由は、やはり、認知能力に明らかに問題があると指摘を受けて来たバイデン大統領では、さすがにトランプ前大統領と大統領選の一騎打ちでは勝算が見込めないと言う状態が続いた後、ある面、民主党のウルトラCの方法で、彼女が民主党の大統領候補で選ばれたことで、民主党の支持者からは、これでトランプ前大統領と互角に戦える候補者を得たと言う安堵感が広がった為である。

換言すれば、トランプ前大統領に対抗できるのなら、誰でも良かった訳であり、「反トランプ」が彼女を支持する最大の理由であると言える。

最後に、民主党支持者がカマラ・ハリス副大統領を推している1つの要素は、彼女が女性であり、白人じゃないと言うことにあるのかと思う。

確かに、彼女が大統領になれば、女性で初めて、非白人で初めてと言う形容詞が付くからだ。

米国では、バイデン政権下で、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)が至るところで浸透して来たのは間違いない。

私自身は、例えば、女性の更なる社会での活躍に決して反対するものではないが、例えば、米国の軍隊での昇進や人事上の重要なポストの任命に、DEIが大きな役割を果たすような状況には大きな危機感を感じる。

DEIの推進が目的になって、本来、組織が果たす役割が果たせなくなっているのではないかと思う。

実際、カマラ・ハリス氏が2016年に副大統領に選ばれた際にも、彼女の性別や人種が大きな理由の1つであるのは明らかであり、しかしながら、米国の副大統領のような重要なポジションを、DEIを強く意識して、決めていいのかなと言う強い懸念がある。

やはり、そういった大事なポジションは、能力、知見、実績といったところ見て、選定・任命されて当然であろう。

深読みすれば、バイデン大統領を見れば非常に明らかであるが、バイデン大統領の認知能力の低下は政権の初期から随分と指摘があったが、彼は、この3年半の間、米国の大統領職を務め、8月までは民主党の次期大統領候補であった訳で、世界の大国の米国であっても実際に国を動かしているのは選挙で選ばれた米国の大統領でないことは自明であり、それ以前の米国大統領の時代とは、国の実質的な統治のスタイルが大きく変わって来たと言える。

その観点からすれば、神輿に担ぐ大統領は、女性で初めて、非白人で初めてと言う形容詞が付く方が座りがいいのかもしれない。

さて、メディアでは米国大統領選挙に大きな影響を与える「10月のサプライズ」が話題になっており、ヒラリー・クリントン氏も警戒していた。

彼女は、長年、ワシントンに居て、そういったものがよく見えるのであろう。

私は、イスラエルの中東での動きと米国のハリケーンは10月のサプライズになりつつあるのかなと感じる。

イスラエルによる中東地域のコンフリクトの拡大は、中東を起点とした第3次世界大戦が起こり得るのではないかと言う強い懸念をもたらしており、イスラエルによるガザでの人質解放と言う当初の目的から大きく逸脱しているのは明らかで、米国がイスラエルに対して強い影響力を行使できず、イスラエルにより、必要のない、パレスチナ人への無差別攻撃を許し、今、イスラエルの真の目的であったのではと感じる、イランやイランが支援するヒズボラへの攻撃に拡大したことは、民主党支持者層の中にはイスラエルの直近の軍事・外交に懸念・不快感を示す者が結構多い中で、明らかにマイナス要因である。

イスラエルの武器の大半は米国が提供している訳で、米国からの軍事支援がストップされれば、イスラエルと言えども戦争は継続できないことは自明であるにも拘わらず、米国はイスラエルをコントロールしているようにはとても思えないのが現状だ。

この間のイランによるミサイル攻撃の報復を宣言しているイスラエルが、仮に、報道されているようなイランの石油精製設備をターゲットに報復攻撃に出れば、米国の面子は更に大きく潰れるだろう。

最後に、米国の南部を襲った大型のハリケーンは、非常に大きな被害をもたらし、今なお、復旧の目途が立たない地域が多くあると報道されている。

バイデン政権も復旧・復興作業に尽力はしている中、「カマラ・ハリス副大統領は、新しいFEMAプログラムの下で、ハリケーン救済のために750ドルを “本当に必要としている “人たちに渡すと言うが、ウクライナには何十億ドルも送れるのに、すべてを失ったアメリカ人は750ドルしか受け取れないのか?」と言う非難が上がっている。

米国が東ヨーロッパも小国である、ウクライナ支援に何故、それほど巨額の軍事・財政面の支援を続けないといけないのか、これはこれで今度の大統領選挙の大きな外交上の論争になっているが、思いがけないハリケーンによる被害から、ネガティブな形で米国のウクライに係る外交政策に再度スポットが当たっているのも、カマラ・ハリス陣営にとっては「10月のサプライズ」と言えるのではないだろうか。

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