円安ドル高が続くが、「もしトラ」時には外国為替はどう動くのか?

4月23日のニューヨーク外国為替市場では米ドルに対して円安が進み、ドル・円相場は一時、1米ドルル=154円88銭まで値下がりして、34年ぶりの円安・ドル高を再び更新しした。

3月の日銀金融政策決定会合における一連の金融政策変更は、プラスの金利環境に回帰する歴史的に大きなステップであり、それまで続いた円安ドル高トレンドが転換するのではと予想する声も市場の中にはあったと思う。

ところが、日銀が「マイナス金利の解除」という政策転換を実施したにもかかわらず、ドル高円安が進んでいるのが現状だ。

これをやや後講釈的に説明すると、米国経済が予想以上に堅調で、インフレの収束に時間がかかり、6月にも始まるのではないかと言う利下げが遅れるとの見方が背景にあることや、一方で日銀は前述の通り、マイナス金利を解除したけれども、日本経済は急激な金利上昇に耐えられないので、当面、緩和的政策を続けざるを得ないと言う状況もあり、日米の金利差がむしろ拡大する方向にあることが、現在の円安ドル高を支えていると言える。

また、日本経済が過去30年間、経済の成長が停滞していることや高齢化社会がいっそう進んでいる状況を鑑み、日本経済に対する信頼度や注目度が国際的に落ちていることが円安の要因と見ている人も結構多い。

 
 

4月23日に円安ドル高が一段と進んだタイミングで、トランプ前米国大統領が自身のTruth Socialで「ドルは対円で34年ぶりの高値を付けた。

米国にとって大惨事だ」と投稿したことが、市場関係者の間でも話題になった。

同大統領は、

「私が大統領だった時には、日本と中国、特に中国には、そんなこと(自国通貨を切り下げて輸出を増やすこと)はできないと説明するのに多くの時間を費やした。」と述べ、「(ドル高は)愚かな人々には聞こえがいいが、わが国の製造業者などにとっては災難だ。彼らは実際に競争することができず、多くのビジネスを失うか、「賢い」国に工場を建設するか、いずれかを余儀なくされるだろう。これが、過去に日本と中国を巨大企業にした理由なのだ。」

と現状を説明した。

ここで気になるのは、これより先の4月15日に出たPoliticoの「トランプ大統領の通商顧問達がドル切り下げを画策(“Trump trade advisers plot dollar devaluation”)」と言う記事である。

同記事では、「トランプ前大統領に近い経済アドバイザーたちは、彼が2期目の大統領に選出された場合、米ドルを切り下げる方法を活発に議論している。

この劇的な動きは、米国の輸出を押し上げるかもしれないが、インフレを再燃させ、世界の支配的通貨としてのドルの地位を脅かすかもしれない。」と述べている。

また、「とりわけ(元通商顧問の)ライトハイザー氏は、一方的に(自国の通貨価値を変更するよう他国に圧力をかけることで)、あるいは関税の脅威を利用した外国との交渉を通じて、ドル安に誘導する方法を検討している。」という元政府高官のコメントを紹介している。

しかし、こうしたドル安政策は、米国の輸入製品の消費者価格を高騰させたり、ドル建て資産の価値を低下させることにもつながる恐れがあるのも事実だ。

ただ、英国、米国の戦後の経済運営と為替政策を見ると、自国通貨を緩やかに安くして、輸出にドライブをかけながら経済を成長させて来たのも事実だ。

Politicoの記事では、「ライトハイザー元通商顧問は2023年に出版した著書“No Trade Is Free”の中でドル切り下げを支持しており、ドルが「かなり過大評価」されていることは「明らか」であり、米国はその不均衡を是正するために多くの手を打つことができる。」と書いていることも紹介している。

今回のTruth Socialでのトランプ前大統領の発信と併せて考えると、米ドルの過大評価には強い懸念を示していることは間違いなさそうだ。

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