自己瓦解し始めた極左リベラル派&グローバリスト

米国ニューヨーク州地方裁判所は2024年2月16日に、トランプ前大統領やその関連企業などが長年にわたり、所有する不動産の価値を不当に高く評価して、不当な利益を得ていたとしてニューヨーク州司法当局に提訴された民事訴訟で、トランプ氏らに約35.5億ドルの支払いを命じる判決を下した。

同判決では、トランプ元大統領がニューヨーク州の企業で幹部として就労することや、同州に登録する金融機関から融資を受けることも3年間禁じた。共に訴えられていたトランプ大統領の息子2名には、同州での2年間の就労禁止と、それぞれ約4百万ドルの支払いも命じられた。

トランプ前大統領による本年11月の米国大統領選挙で勝利を望まない、極左リベラル派やグローバリストにとって、トランプ前大統領の支持率がバイデン大統領のそれを上回り、共和党の米国大統領候補者の予備選挙や党員集会で勝利を続ける中で、今回の判決はさぞかし胸がすくような思いであったと想像する。

しかし、今回の判決は不動産・金融業界に大きな影響を与えたことは忘れてはいけない。というのも、今回の裁判では、不動産王のトランプ前大統領の詐欺の主たる被害者とされる、ドイツ銀行はその不動産担保融資に関して元本・利息の遅延や毀損は一切発生しておらず、アレンジメント報酬や利払いで十分な収益を得ており、いかなる損失を被ったと訴えていないにも拘わらず、トランプ前大統領やその関連企業はこのような懲罰的な判決を受けることになったからだ。

不動産担保融資では、通常、不動産の所有者が当該不動産はこんなに価値があると主張しても、また、独立した不動産鑑定士の鑑定評価書があったとしても、レンダーはそれを鵜吞みにして融資金額や条件を決定することはなく、自らが不動産のデュー・デリジェンスを行った上で融資を実行するのは、金融機関としての忠実義務として当然のことである。

AP通信では、70年近くにわたる類似のケースの中で、今回の判決では、大きな経済的損失を被った明らかな被害者を示すことなく、Trump Organizationは不動産のデベロッパー及びオーナーとして、このような異例な処分を言い渡された唯一の大企業となったことが確認されたとしている。

ニューヨーク市あるいはニューヨーク州は、不動産デベロッパーだけでなく、年金基金や機関投資家、富裕層の中でも世界の不動産投資でも最も魅力ある街として長年評価を得て、長いトラック・レコードもあったが、このステイタスも安心して不動産開発・投資をする法的な枠組みや透明性が担保されているから成立して来たと言っても過言ではなく、今回の判決はニューヨーク州での不動産事業や不動産融資ビジネスのサステイナビリティに大きな疑問を投げかけている。

民主党のニューヨーク州知事のKathy Hochul氏は、判決後、ニューヨーク州の不動産オーナーに対して、「遵法精神に溢れ、ルールに忠実なニューヨーカーのビジネスパーソンは、トランプ前大統領や彼の行動とは全く異なるので、何も心配する必要はないと思う。」と発言して、今回の判決に過度に反応しないように求めたが、トランプ前大統領や彼の関連企業が行っている不動産事業がコンプライアンス違反を犯していると見ている業界の人はおらず、今回の判決がいかに政治的にトランプ前大統領を抹殺する目的で言い渡されたものとして認識されている。

グローバリストや左翼リベラル派は、ニューヨークの不動産市場を破壊しているだけではない。米国経済の繁栄の根幹である基軸通貨としての米ドルの絶対的な価値や信頼性が既に毀損し始めている。

きっかけ、西側諸国は、2022年2月のウクライナ紛争開始以来、ロシアに対する経済制裁の一環として、ロシア中央銀行、ロシア企業や富裕層の西側に保有している資産を凍結したことから始まった。RTの報道によると、西側諸国は、ロシア中央銀行に属する推定3,000億ドルの資産をブロックしているとされている。

英国と米国は最近、ウクライナ政府を支援するため、これらの資金の全面的な差し押さえを要求しているが、EUはより慎重で、代わりに清算機関であるユーロクリアに保管されている資産から得られる利息を差し押さえる計画を選択しているとされている。

というのも、多くの欧州諸国は、資金の全面的な没収は欧米の金融システムに悪影響を及ぼし、ユーロへの信頼を損なうと警告しているからだ。この件で非常に残念なのは、本来であれば、その職務の内容から政治的には中立な態度が求められている、Janet Yellen米国財務長官が、ロシアに対する経済制裁に積極的であり、ロシアの資産凍結・差し押さえだけでなく、ロシア産原油取引にも制裁を加えるなど、経済制裁の仕組み作りに積極的に加担していることである。

しかし、皮肉なことに、これらのロシアに対する経済制裁が直接的な原因で、米ドルを世界の貿易の決済通貨から外す動きが加速し、米ドルやユーロ建ての資産へのエクスポージャーを減らす動きが見受けられる。

米ドルやユーロへ依存することで、こうした通貨建ての金融資産やハード・アセットが万が一の場合、現地当局に没収される恐れがあると知ったら、中央銀行なら安全保障上の理由で、富裕層なら資産の安全な保管の観点から代替的なアクションを取るのは当然だ。ましてや、ウクライナ支援の名目で米国・EU域内の経済や人々を優先せず、ウクライナへ巨額の軍事・経済支援を行っている欧米の財政破綻リスクを考慮すれば、将来的な通貨下落リスクを織り込むのは、理性ある人の判断とも言える。

結局、ニューヨーク州の判決やロシアの経済制裁に関しては、極左リベラル派やグローバリストの行動は、一見すると、その場では敵対する勢力に対してピンポイントで効果があるように見えるものの、広い視野で考え、長期的なインパクトを考慮すると、実は、彼らの当面のインタレストを満たすだけの部分最適解でしかなく、結果として、彼らの行動が自らの立ち位置を危うくし、市場参加者の信頼を失っていることに気が付くだろう。

想像するに、極左リベラル派やグローバリストも決して一枚岩の組織体と言うよりは、大きな集合体に近いイメージであり、それぞれの持ち場で社会を壊していると言った方が正確ではないだろうか。

自国の主権や利益を優先した上で国際協調できる策を模索・実践するアンチ・グローバリストにとっては、今がターンアラウンドの絶好のチャンスであると思量するが、想像している以上に随所で社会の崩壊が進んでおり、社会を正しい方向に戻すのに費やせる時間はもうそんなに残っていないのかもしれない。

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