米議会下院エネルギー・商業委員会が“中国”のByteDanceに傘下の “TikTok”の売却を求める法案を可決したことについて

米議会下院エネルギー・商業委員会は3月7日に、“中国”のByteDanceに傘下のショート動画投稿アプリ“TikTok”の売却を求める法案を50対0の全会一致で可決した。

6カ月以内に売却しない場合、米国内でアプリを禁止するとしており、下院本会議の採決を来週行う模様だ。

米国には約1億7,000万人のユーザーがいて、全面的なアプリの利用は、米国民から表現の自由という憲法上の権利を奪うことになるとして、TikTok 側は今回の動きを批判している。

TikTok アプリの利用禁止は、トランプ政権下でも一時期活発に議論されており、ByteDanceは米国のTikTok 部門の運営上の独立を確保する為に、色々な工夫もして来たようにも見える。現在の会社組織や株主構成を見ると、既に、外形上はTikTok は“中国”の会社であるとは言い切るのは難しいかもしれないぐらいだ。

ByteDanceのホームページを見ると、これは中国企業の形態としては時々見受けられるのだが、ケイマンに持株会社のBytedance Ltd.を設立して、その傘下に、様々な事業運営会社をぶら下げている。

TikTok ブランドは、中国を除くブランドで、中国国内は抖音(Douyin)と言うブランドで事業展開しており、組織的には、香港にDouyin Group (HK) Ltd. を中間持株会社として設立して、中国のDouyin事業を担当する中国企業を複数所有している。他方、TikTok事業は中国を除くグローバル・オペレーションを指しており、ケイマン国籍のBytedance Ltd.の傘下に更にケイマンでTikTok Ltd. を設けて、世界各国に運営会社を設立して事業を展開している。

問題の米国事業は、その子会社として、TikTok LLCを米国に設け、更にその傘下に、TikTok Inc.やTikTok U.S. Data Security Inc.を設立運営されている。こうした資本関係を離れて、サービス・レベル契約のようなコマーシャルな契約を例えば、TikTok Ltd.とDouyin Group (HK) Ltd. と締結することは勿論可能なので、グループ企業間で資金や顧客情報がやりとりされる可能性は十分あるが、組織上かつ資本関係上は、中国のDouyin事業から切り離され、独立した印象を与える工夫はされている。

次に、取締役のメンバーを見ると、創業者のLiang Ruboに加えて Arthur Dantchik、William E. Ford、Philippe Laffont、Neil Shenの名前が登場している。例えばArthur Dantchik は、Susquehanna International Groupの共同創設者であり常務取締役であり、Philippe Laffont はCoatue Managementの創立者兼ポートフォリオ・マネージャーである。

外形的には、輝かしいキャリアを持った著名人で構成された取締役会とも言える。

更に、Bytedance Ltd.の株主は、同社のホームページやニュース等を勘案すると、グローバル・ベースでも著名なネームを含む一般投資家が約60%、従業員が約20%、創業者のYiming Zhang(現取締役会長)とRubo Liangが約20%が保有しているようだ。主要投資家には一般投資家には、COATUE、KKR、Sequoia Capital、General Atlantic,、SIG、SoftBank Investment Advisors、Source Code Capital、Tiger Globalの名前も並ぶ。

昨年7月にはロイターから「ByteDance社は、米国の従業員が保有する株式を株式市場への上場を待たずに権利確定し、現金化できるようにする予定だという。

この動きは、報酬の一部として付与された株式から利益を得るために新規株式公開(IPO)を待っていた落ち着きのない従業員をなだめることを目的としている。

情報筋によると、バイトダンスは今後、十分な時間が経過している限り、米国の従業員が保有する譲渡制限付き株式の権利確定を認めるという。

同社はこれまで、権利確定を行う条件として、IPOや会社売却などの“流動性イベント”を設定していた、と情報筋は付け加えた。

権利確定後、従業員はバイトダンスの自社株買いプログラムの一つで現金と交換することができる。」と言った主旨の報道も出た。

ByteDanceのIPOは未だ実現するのに少し時間はかかる見込みのようだが、会社としてはこれに向けて株主構成、組織・体制作りは念入りな準備をしていることには間違いなく、その企業価値は、2,000億ドルを超えるのではないかと言う評価もあり、スタートアップ企業としては非常に高い評価のある企業でもある。

この記事を書いている3月9日時点では、大統領選挙の年に上院・下院の両方で法案を通過させるのは困難であると言う見方も出ており、この法案の行方がどうなるか分からない状況である。

というのもTikTok利用者から議員に当該法案を支持しないように働きかけが急速に活発化しているためだ。

更に、トランプ大統領は、3月8日に、自身のトゥルース・ソーシャル「TikTokを排除すれば、FacebookとZuckerschmuckはビジネスを倍増させるだろう。

前回の選挙で不正を働いたFacebookに、これ以上頑張ってほしくない。彼らは真の国民の敵だ!」と投稿し、法案に懸念を示した。

私自身は万が一、この法案が両院で承認されても、これまでのByteDanceの株式の公開に向けた株主構成や組織運営面の創意・工夫を鑑みると、株主構成面での更なる“調整”を行うことは仕組上も可能であろうし、“中国”のByteDanceの傘下にある“TikTok”と言う見え方は事実上解消するのではないかと見ている。

これに加えて、従来は米国に反中国と言う大きな政治的テーマがあり、米国の安全保障上や個人情報保護の観点からTikTok排除の動きが進んで来たが、トランプ大統領からフリー・スピーチを重視する観点からTikTok排除の動きに対する懸念が示されたことで、状況はさらに複雑を増したのではないかと思う。

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