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このインタビューでは、元英国海軍士官で安全保障・エネルギー分野の分析を行っているジェレミー・マクドナルド(Jeremy McDermy/Jermyと紹介)が、タッカー・カールソンとの対談で、ウクライナ戦争、中東情勢、NATOの戦略、欧州のエネルギー安全保障について、自身の分析を詳しく述べている。全体を通じて、「西側はロシアの戦略を根本的に誤解しており、その結果として欧州は極めて危険な状況に向かっている」というのが一貫した主張である。

### ロシアは「領土戦争」ではなく「国家存亡の戦争」を戦っている

冒頭でジェレミー氏は、西側では「ロシア軍は苦戦している」「ロシア経済は崩壊寸前」といった見方が広まっているが、それを裏付ける客観的証拠は乏しいと述べる。問題は、西側がロシアの戦争目的そのものを誤って理解していることにあるという。

彼によれば、この戦争はロシアにとって単なるウクライナ侵攻ではなく、「国家の安全保障と存続を守るための実存的(existential)戦争」である。EU高官などから「ロシアを解体すべきだ」という発言が繰り返される中、ロシアが安全保障上の危機感を強めるのは当然だと説明する。

また、ジョージ・ケナンやジョン・ミアシャイマーら西側の著名な戦略家も、NATOの東方拡大は将来的にロシアとの戦争を招くと何年も前から警告していたが、西側諸国はそれらを無視してきたと指摘する。

### ロシアは段階的な長期戦略を実行してきた

ジェレミー氏は、ロシア軍の行動には一貫した五段階程度の戦略が存在すると分析している。

第一段階は、軍事力を背景とした外交である。開戦直後からロシアとウクライナは停戦交渉を開始し、2022年3月にはウクライナの中立化やドンバス問題を含む合意案がほぼまとまっていたという。しかし、ボリス・ジョンソン英首相がキーウを訪問し、西側が全面支援するので戦争を継続するようゼレンスキー大統領を説得した結果、この和平案は破棄されたとの見方を示している。

第二段階では、ロシアはキーウ方面から撤退し、防御態勢へ移行した。スロビキン防衛線を構築し、ウクライナ軍を防御陣地へ誘い込み、人的・物的損耗を与える「消耗戦」に切り替えた。この間、西側は大規模な反攻を支援したが、防衛線を突破できず、結果としてウクライナ軍の戦力を大量に失わせることになったと評価している。

第三段階では、ロシアは軍需産業を拡充し、十分な戦力を整えた上で攻勢に転じた。ただし目的は急速な領土占領ではなく、依然としてウクライナ軍の消耗を続けることにあるという。したがって、西側メディアが「ロシアの進軍速度が遅い」と批判するのは、そもそも戦略目標を誤解していると述べる。

さらに、ロシアの最終目標については、最低限はドンバス4州の完全掌握、最大限ではオデッサを含む「ノヴォロシア」全域の確保まで視野に入っている可能性があると分析している。

### 西側には一貫した戦略が存在しない

一方で、西側諸国については、「軍事戦略ではなく政治的ナラティブによって戦争を運営している」と厳しく批判する。

ロシア側には国家安全保障という明確な戦略目標があるのに対し、西側の目標は「ロシアを弱体化させる」「ウクライナを支援する」など状況に応じて変化し、一貫性がないという。また、RAND研究所の2019年報告書『Extending Russia』なども紹介し、一部にはロシアを長期的に疲弊させる発想が存在していたと述べる。

さらに、アフガニスタン、イラク、リビア、シリアなど西側が関与した近年の軍事介入はいずれも戦略的成功とは言えず、それにもかかわらず現在の指導者層は過去の失敗から十分に学んでいないと主張する。

### NATOと欧州指導部への厳しい批判

ジェレミー氏は、NATOやEUの政治指導者に対しても非常に厳しい評価を下している。

カヤ・カッラスEU外交・安全保障上級代表、フォン・デア・ライエン欧州委員長、マルク・ルッテNATO事務総長らを例に挙げ、「冷戦後で最も質の低い西側指導者層だ」とまで述べる。

また、欧州社会には強いロシア嫌悪(Russophobia)が形成されており、その背景にはメディア報道の偏りがあると分析する。ロシア側の論理を理解しようとせず、一方的な情報だけで政策が決定されていることが最大の問題だという。

### 「欧州との直接戦争」シナリオ

インタビューの中心部分では、ジェレミー氏自身が執筆した「The Coming War with Russia(ロシアとの来たる戦争)」という論考に基づき、仮想シナリオを説明する。

このシナリオでは、西側が長距離兵器によるロシア本土攻撃を継続した結果、ロシアが英国・フランス・ドイツの兵器工場を極超音速ミサイルで攻撃すると仮定する。

その場合、NATO第5条が発動される可能性はあるが、第5条は加盟国全てが自動的に参戦する義務を意味するわけではない。ハンガリーなど一部加盟国は軍事介入を拒否する可能性が高く、NATO内部の結束にも亀裂が生じると予測している。

さらに最大の不確実性はアメリカであり、米国が欧州本土でロシアと全面地上戦を行う政治的意思は乏しいとの見方を示す。

### 欧州の軍事・エネルギー両面の脆弱性

ジェレミー氏は、防空・ミサイル防衛能力でも欧州は極めて脆弱だと指摘する。ドローンの飽和攻撃や極超音速ミサイルへの対処能力は限定的であり、LNG基地や石油ターミナルなどの重要インフラが攻撃されれば、深刻な被害が発生すると警告する。

さらに、ロシア産天然ガスやディーゼル燃料からの脱却を進めた結果、欧州のエネルギー供給は以前より不安定になっていると分析する。そこへホルムズ海峡封鎖が重なれば、欧州経済は深刻な打撃を受けるという。

エネルギー消費量とGDPには極めて高い相関があり、エネルギー供給が10%減れば経済規模も同程度縮小する可能性があると説明し、その結果として欧州は景気後退だけでなく政治的不安定化にも直面すると予測している。

### 核戦争の可能性について

欧州が通常戦力ではロシアに対抗できない場合、英仏が核兵器に依存する誘惑が高まる可能性についても議論された。

しかしジェレミー氏は、英国やフランスが核兵器を使用することは「国家自殺」に等しいと述べる。ロシアは圧倒的な核戦力を保有しており、核による応酬は欧州自身の破滅につながるため、実際にはその決断は極めて困難だとの見方を示した。

### エネルギー危機と世界経済への影響

後半では、エネルギー市場の分析にも時間が割かれた。

ジェレミー氏は、ホルムズ海峡の機能停止による影響は、タンカー輸送や在庫調整の時間差のため、数か月遅れて世界経済に現れると説明する。中国は戦略備蓄や需要抑制によって一定程度対応できるが、欧州や東アジア諸国はより脆弱であり、秋以降に景気後退が顕在化する可能性があると予測する。

また、原油先物価格が比較的低位で推移している一方、実際の現物市場ではシンガポールなど一部地域で1バレル200ドル近い価格で取引されている例も紹介し、先物市場と実需市場の乖離にも注意を促している。

### 今後の見通し

最後にジェレミー氏は、イラン情勢については、経済悪化や米国中間選挙への影響が大きくなれば外交的解決に向かう可能性があると述べる。

ウクライナ戦争については、欧州経済の悪化や西側の支援能力低下が停戦圧力となる可能性がある一方、ロシアがキーウへの再攻勢を政治的手段として検討する可能性も排除していない。

プーチン大統領については、国内から強硬論の圧力を受けつつも、長期的視点で戦略的判断を行う人物と評価しており、軍や情報機関の助言を踏まえながら、段階的かつ慎重にエスカレーションを管理するだろうと分析している。

## 総括

この対談全体を通じて、ジェレミー氏は、**西側がロシアの安全保障認識と戦略を根本的に誤解していることが現在の危機の本質であり、その結果として欧州は軍事・エネルギー・経済の三重のリスクを抱えている**と主張する。そして、NATOの抑止力や欧州の軍事能力を過信するのではなく、ロシアとの外交的対話を再開し、戦略的現実を踏まえた議論を行わなければ、1914年のような意図しない大規模戦争へ発展する危険があると警鐘を鳴らしている。

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