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Glenn Diesenの本対談において、John Mearsheimerは、トランプ政権の対外戦略が当初の期待から大きく逸脱し、結果としてイラン戦争という極めて不利な状況に自ら踏み込んだと厳しく評価している。トランプ再選直後には、単極覇権の終焉を前提に、米国の戦略資源を西半球と東アジアに集中させ、中東や欧州からの関与を縮小する合理的な方向性が期待されていた。また、「永遠の戦争」を終わらせ、新規戦争を回避するという姿勢も評価されていた。しかし現在では、こうした期待は裏切られ、従来型の軍事依存的な外交路線へと回帰してしまったと指摘される。

特に問題の核心として挙げられるのがイラン戦争である。ミアシャイマーは、この戦争を「イラク戦争やアフガニスタン戦争よりも悪い」と位置づけ、そもそも勝利不可能な戦争に突入したと断じている。米国とイスラエルは、政権中枢への打撃(いわゆる「斬首作戦」)と衝撃戦略によって短期間で体制崩壊を引き起こすことを期待していたが、この前提自体が誤りであり、結果として戦争は長期化し、消耗戦に移行した。この段階に入ると、むしろイラン側が優位に立つ構造が明確になる。

ミアシャイマーの主張の中核は、「長期戦においてはイランがほぼすべてのカードを握っている」という点にある。その理由として第一に、イランは世界経済に対して重大な打撃を与える能力を持つ。ホルムズ海峡を通過するエネルギー供給の遮断や、湾岸諸国のインフラ(特に淡水化施設やエネルギー施設)への攻撃により、地域全体の機能を停止させることが可能である。さらに、イスラエルの防空能力にも限界があり、ミサイル戦において継続的な圧力をかけることができる。加えて、米国には現実的な地上戦オプションが存在せず、数千規模の部隊では戦略的成果を上げることは不可能であると指摘される。

さらに重要なのは、エネルギー市場の制約が米国の行動を縛っている点である。世界経済の安定のためには石油供給の維持が不可欠であり、そのため米国はロシアやイランの石油輸出すら事実上容認せざるを得ない状況にある。つまり、軍事的にはイランを攻撃しながら、経済的にはイランの石油に依存するという矛盾した構造に陥っており、これがエスカレーションの上限を決定づけている。このため、米国は軍事的に優位を拡大することも、決定的打撃を与えることもできない。

外交面においても、状況は極めて厳しい。トランプ政権が提示する条件は事実上の「無条件降伏」であり、イラン側の要求とは全く接点がないため、交渉の余地が存在しない。加えて、時間が経過するほど米国側の経済的・政治的圧力が増大し、イラン側の交渉力は強まる。このため、イランには戦争を長引かせる強いインセンティブが存在し、短期的な妥結に応じる合理性がないとされる。

また、戦争の構造は経済面でもイランに有利に働いている。低コストのドローンによる攻撃に対し、米国は高価な迎撃ミサイルを使用せざるを得ず、非対称的な消耗戦となっている。さらに、エネルギー価格の上昇はイランの収入増加にも寄与しており、戦争継続能力を強化している。このように、軍事・経済・地政学のすべての面で、時間が経つほどイランの優位が拡大する構造が形成されている。

この状況下での唯一の現実的な出口は、米国が大幅な譲歩を行うことであるとミアシャイマーは指摘する。しかしそれは、事実上の敗北を意味し、国内政治的にも極めて受け入れがたい選択となる。さらに、イスラエルの意向や国内の強硬派勢力が妥協を阻む要因となっており、意思決定は一層困難になっている。このため、合理的には譲歩が必要であっても、実際には戦争が継続される可能性が高い。

彼はまた、歴史的な教訓として、日本が真珠湾攻撃に至った過程を引き合いに出し、国家が追い詰められた状況では合理性を欠いた決断を下す可能性があると警告する。現在の米国も同様に、経済的・戦略的圧力の中で「より危険な賭け」に出るリスクがあり、状況は極めて不安定であるとされる。

最後に、意思決定プロセスの問題として、トランプ大統領が専門的な官僚機構や軍・情報機関の知見を軽視し、限られた側近や政治的支持者に依存して戦争を決断した点が強く批判される。本来、戦争は高度な専門知識と綿密な計画を必要とする領域であるが、それが欠如した結果、予測可能であった失敗に陥ったと総括されている。

総括すると本議論の核心は以下の4点に集約される:

* イラン戦争は「短期決戦前提の戦略的誤算」により発生し
* 長期戦に移行した時点で構造的にイラン優位となり
* 米国は軍事的にも経済的にも決定的手段を欠き
* 実質的に「出口なき戦争」に陥っている

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