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この対談の中心的主張は、今回の対イラン戦争は、米国政府が公に説明しているような「イランによる差し迫った脅威」への防衛的対応ではなく、むしろイスラエルとその米国内支持勢力に強く引きずられる形で始まった戦争であり、その結果として米国の統治制度、外交意思決定、そして世界経済が重大な危機にさらされている、という点にある。冒頭では、国家情報長官室の高官ジョー・ケントが、イランには差し迫った脅威はなかったとして政権の対イラン戦争対応を批判し辞任したことが紹介される。その流れで、議会公聴会におけるトゥルシー・ギャバード国家情報長官の答弁が取り上げられ、議員から「イランは本当に差し迫った核の脅威だったのか」と問われても、彼女はそれを明確に肯定も否定もせず、大統領判断に話をずらした。ミアシャイマーはこれを、彼女が真実を言えないからだと断じ、情報機関もまたイランが差し迫った脅威でなかったことを理解していたはずだと述べる。つまり、この議論では「脅威認定」そのものが、政治的正当化の道具として使われているという見方が強く示されている。

そこから議論は、米国の憲法秩序や戦争権限の形骸化へと広がる。司会者は、かつて存在した立法・行政間のチェック・アンド・バランスや戦争権限決議の歯止めが、もはやほとんど機能していないのではないかと問題提起する。これに対しミアシャイマーは、議会はもはや深刻な抑制機能を果たす制度ではなく、大統領は外交政策において事実上、王や独裁者のように振る舞える状態にあると語る。さらに彼が強調するのは、今回の戦争をめぐる本当の問題は、単に大統領権限が強すぎるということだけではなく、「外国政府が米国を、米国自身の国益に反する戦争へ引き込める」構造があることだという点である。彼は、トランプが軍や情報機関の専門家よりも、ジャレッド・クシュナーやスティーブ・ウィトコフといった、イスラエルとの関係が深いと見られる人物の助言を重視したことを深刻視しており、そのうえで、英国側関係者の発言として、彼らが事実上イスラエル側の資産のように機能していたとの趣旨の話まで持ち出す。リンジー・グラムがネタニヤフに対して、どうすればトランプを対イラン開戦へ導けるか助言していたという話も含め、この対談では、米国が自律的に動いているというより、イスラエルの戦略目的に従属させられているという構図が繰り返し語られる。

対談のもう一つの大きな軸は、米国内の情報環境と政治指導層への根本的不信である。ジョー・ケントの辞任書簡では、主流メディアが戦争推進に積極的な役割を果たしたとされ、番組内ではその例としてリンジー・グラムがテレビで「差し迫った脅威」があったと断定する場面が紹介される。司会者は、それは新しい発見ではなく、以前から知られていた核関連情報をあたかも急迫した新事実のように見せているだけだと批判する。ミアシャイマーも、グラムもトランプもギャバードも信用できないと切り捨て、権威ある立場の人物の発言がほとんど信頼できないこと自体が、現在の米国政治の深刻な病理だと論じる。そして、こうした虚偽や誇張に支えられた対外介入が、アフガニスタンやイラクでも繰り返されてきたことを想起しつつ、米国は「逆ミダス王」のように、介入先を成功ではなく失敗へと変えてしまうと酷評する。

軍事面では、イスラエルが採用している斬首戦略、すなわち要人暗殺によって敵の国家機能や軍事機能を麻痺させようとする発想に対して、ミアシャイマーは極めて懐疑的である。ジョン・ボルトンは、イラン高官や革命防衛隊などへの打撃が大きな成功を収めており、戦争はまだ始まったばかりだと語るが、ミアシャイマーはこれを退ける。彼は、イランのような大規模で制度化された国家には厚い人材層があり、暗殺された人物は別の有能な人物に置き換えられるだけだと述べる。むしろ後任の方が有能である可能性さえあるという。加えて、イランはイスラエルの斬首戦略を長年研究し、こうした事態に備えてきたため、この手法が決定的な勝利をもたらすという考え自体が幻想だとする。対談ではイラン外相の発言も引用され、国家システムは一個人の生死に依存しておらず、最高指導者級の人物が失われても直ちに代替が可能だとするイラン側の自己認識が紹介されるが、ミアシャイマーはそれを概ね妥当な見方として受け止めている。

しかし、この対談で最も強い危機感が示されているのは、軍事的勝敗そのものより、戦争長期化がもたらす経済的・地政学的コストである。ミアシャイマーは、長い戦争になれば米国側が深刻な苦境に陥ると繰り返す。その理由としてまず挙げられるのが、ホルムズ海峡の閉塞、エネルギー供給、肥料供給、そして食料価格への連鎖である。彼は、世界の肥料の約3分の1がホルムズ海峡を経由していると指摘し、その遮断は単に原油高を招くだけでなく、農業コストを押し上げ、食料インフレを悪化させると見る。さらに、イスラエルがイランの南パールス・ガス田を攻撃したことにより、戦争は石油・ガスインフラの相互攻撃という次の段階へ上がったと分析する。もしイランが報復としてサウジアラビア、UAE、カタールの施設を攻撃すれば、原油・ガス価格はさらに高騰し、国際経済全体を揺るがすことになる。対談中では、100ドル近辺でも十分危険だった原油価格が、さらに上昇する方向へ動いているとの認識が示され、トランプに戦争終結圧力が強まるであろうという予測につながっている。

加えてミアシャイマーは、イラン側が持つ「エスカレーションのカード」を非常に重く見ている。彼の議論では、イランは単に受動的に空爆に耐えるだけの存在ではなく、ホルムズ海峡に加えて紅海、湾岸諸国の石油・ガス施設、さらには海水淡水化施設まで標的にしうる。特に淡水化施設は、サウジ、UAE、クウェートなどの湾岸諸国にとって生命線であり、そこを破壊されれば社会そのものが機能停止に陥る可能性があると彼は述べる。つまり、イランが実存的脅威に直面していると認識した場合、相手の社会基盤そのものを崩壊させうる強力な反撃手段を持っている、というのが彼の見方である。このため、長期戦・総力戦・相互インフラ攻撃の局面に入るほど、米国・イスラエル・湾岸諸国側の損害は拡大しやすく、結果として「長い戦争はイランに有利」というタイトルどおりの結論へ収束していく。

出口戦略に関しては、対談全体を通じて悲観論が支配的である。司会者は、過去の戦争のように米国が好きな時に「手仕舞い」できる局面ではなくなっており、トランプは明らかに出口を探しているが、受け入れ可能な政治的オフランプが見つからないと述べる。ミアシャイマーも、米国側が「勝利宣言して撤収する」以外に現実的な道が見えないとしつつ、それすら現実には敗北をごまかすだけであり、しかも本当に戦争を終わらせるにはイラン側の同意が必要で、そのためには米国が譲歩しなければならないと指摘する。しかし、トランプには国内政治上も対イスラエル関係上も、そのような譲歩を行う余地が乏しい。司会者は、これはウクライナが2022年春に受け入れられなかった「醜い和平案」に似ており、受け入れなければ状況はさらに悪化するだけだと語るが、トランプがそのような妥協に踏み切る見通しは薄いという空気である。

その代わりにトランプが模索しているとされるのが、軍事的に局面打開できる「一手」であり、たとえば同盟国海軍を動員してホルムズ海峡を再開放する案や、特殊部隊を投入してイランの濃縮ウランを奪取する案などが話題に上る。しかし、ミアシャイマーはこれらをいずれも非現実的、あるいは危険な幻想として退ける。ホルムズ海峡再開については、第一次世界大戦のガリポリ作戦とダーダネルス海峡攻防を引き合いに出し、機雷が敷設された狭い海峡を海軍力だけで突破することは極めて困難であり、現代ではそれに加えてドローンや巡航ミサイルもあるため、なおさら不可能に近いと論じる。仮に突破しても、ペルシャ湾内はイラン沿岸火力の「大きな標的」になるだけであり、米海軍が湾内接近自体を避けているのは当然だとする。また、特殊部隊による濃縮ウラン奪取案についても、イランがその可能性を当然想定して厳重防備しているはずであり、作戦成功の見込みは低く、たとえ一時的に成功しても、イランは再びウランを濃縮できる以上、根本解決にはならないと指摘する。むしろ今回の戦争からイランが学ぶ教訓は、「核抑止力を持たなかったことが誤りだった」という方向になりかねず、結果としてイランの核武装を促進する皮肉な帰結さえ示唆している。

終盤では、欧州の対露制裁姿勢にも話が及ぶ。対談では、トランプが原油価格抑制のためロシア産石油の市場流入をある程度認め、さらにイラン産石油まで市場に流し続けているとされる一方、欧州側はロシアの「影の船団」への圧力を強めようとしていると紹介される。これに対してミアシャイマーは、トランプは何としても原油価格を100ドル以下に抑えたいのに、欧州はまるでその逆をやっているように見えると呆れる。ロシアもイランも市場から締め出せば、国際経済にさらなる打撃が出るのは明らかであり、この局面でそれを理解できない欧州外交の浅さを批判している。全体として彼の議論は、米国も欧州も軍事・外交・経済の相互連関を十分に理解せず、願望に基づいて政策を動かしているという認識に貫かれている。

最後に、戦争がどれほど続くかについて問われ、ミアシャイマーは、国際経済へのダメージを考えれば2~3か月以上この状態を維持するのは難しいのではないかと推測する。ただし、エスカレーションの速度次第ではもっと早く破局的な圧力がかかる可能性もあれば、逆に両者が一定の抑制を保てばより長く続く可能性もあると留保する。要するに、この対談の結論は、米国とイスラエルは短期決戦や斬首戦略で局面を打開できず、しかも政治的に受け入れられる出口も乏しい一方で、イランは地理・資源・経済インフラ・地域打撃能力という面で長期戦における対抗手段を多く持っているため、時間が経つほど米国側の立場が悪化しやすい、というものである。したがって、「長い戦争はイランに有利」というこの動画の主題は、軍事的優位そのものではなく、持久戦になった場合に国際経済と地域秩序へ与える破壊力を通じて、イラン側の交渉力・抑止力が相対的に増していくという意味で語られている。

 

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