Scott Ritter: The U.S. Now Considers the EU an Enemy

Judging Freedomのこの回の対談では、冒頭でまずガザ情勢とイスラエル国内政治が取り上げられます。ミアシャイマーは、ネタニヤフ首相が大統領ヘルツォグに恩赦を迫りつつも、自らの有罪認定や公職離脱を拒んでいるという報道について、まったく驚かないと述べます。10月7日の大失態と継続中の汚職裁判にもかかわらず、彼は権力にしがみつき、自分が傷つかない形でしか「ディール」を受け入れない人物だと指摘します。そのうえで、トニー・ブレアがガザの「統治者」のような役割で起用される案についても批判し、10月7日以降ネタニヤフと頻繁に会っているブレアがイスラエル寄りである以上、中立的な管理者になり得ないと強調します。

続いてミアシャイマーは、トランプ政権がガザ処理を進めるうえで主要な交渉役にスティーブ・ウィトコフとジャレッド・クシュナーという“筋金入りのシオニスト”を据え、そこにブレアまで絡ませている構図を「植民地プロジェクト」に近いと批判します。その構想にはパレスチナ人の自決権も政治的地平線もなく、「ヨーロッパ人が運営し、トランプが名目上責任者となり、イスラム諸国とアラブ諸国に治安維持をやらせる」という形になっていると説明します。また、パキスタンやインドネシアなどが「ハマスの武装解除がない限りガザに部隊は入れない」と表明しており、他方でハマスには武装解除の見返りとなる政治的解決の展望がない以上、現実的には武装解除するはずもないと述べ、そもそもこの計画は出発点から成り立たないと断じます。

ガザとレバノンでの停戦について、ミアシャイマーはイスラエルが「トランプ・ウィトコフ・クシュナーの停戦案を遵守している」と主張するのは到底無理だとし、レバノンとガザの両方で一貫して停戦を破っていると指摘します。米国はそれを容認し、軍事支援と装備供与、そして国際的な外交庇護を続けていると批判します。ナパリターノはここから、カリブ海沖での麻薬容疑船への攻撃と民間人殺害に話を広げ、米議会が大統領の権限行使をほぼ無制限に認めていると嘆きます。そこへランド・ポール上院議員の発言(誤認率20%で人を殺す政策は狂気であり、法の支配と手続き的正義に反する)を紹介し、ミアシャイマーも全面的に同意しながら、国内法と国際法は安易に踏みにじるべきではなく、やむを得ない違反は安全保障上の例外として最小化するべきだと論じます。

国際法遵守について彼は、バイデン政権もトランプ政権も実務面では大差ないと批判します。バイデン政権は国際法や「ルールに基づく秩序」の美辞麗句を強調しながら、実際にはそれを踏みにじってきたとし、トランプ政権は少なくとも「国際秩序批判」と「秩序破壊」がレトリックと行動の両面で一致しているだけまだ一貫していると皮肉ります。また、トランプがベネズエラ沖のボート攻撃映像について「公開に問題はない」と言った直後に「そんなことは言っていない」と否定し、記者を侮辱するという、言行不一致と攻撃的態度も大統領として異常だと批判的に描写します。

ここから話題はNATOとヨーロッパの安全保障の歴史に移ります。ミアシャイマーは、冷戦終結時にソ連がワルシャワ条約機構を解体したにもかかわらず、米国がNATOに残留した理由を「欧州、特に再統一されたドイツを安定化させる“緩衝・鎮静装置(パシファイア)”としての役割」に求めます。旧ソ連・ロシア側も当時は米軍の欧州残留を受け入れており、米欧ソ三者が「NATO維持による安定」を共有していたと説明します。問題が発生したのはその後のNATO東方拡大であり、米国は「東方へ一インチも拡大しない」と口約束しながら、クリントン政権下で1994年に拡大路線へ転じ、それが現在の対ロシア対立とウクライナ戦争の根本原因になったと強調します。

ミアシャイマーの主張の核心は、「欧州の未来は二重の意味で暗い」という点です。第一に、ウクライナ戦争は「ハッピーエンドにはならない」。ロシアが最終的に「醜い勝利」を収める一方で、ウクライナ国家は破壊され、戦後もロシアとウクライナ、そして欧州との関係は毒々しいほど悪化し、東欧には多数の火種が残るため、停戦や凍結紛争の後も新たな戦争のリスクが常に存在する、と述べます。第二に、米国は国家安全保障戦略で明示されるように対中国を最優先とする「アジア・ピボット」を本格化させており、その結果としてNATOは崩壊、あるいは「殻だけの同盟」に劣化し、欧州は自前で安全保障を賄わざるを得なくなるが、欧州諸国はそれを恐れていると分析します。

ここで、ウクライナに駐在する英軍兵士が訓練中の事故で死亡したとの報道が紹介されます。マクレガーらによれば、これまでも英国特殊部隊や情報機関要員の死者が出ていたが秘匿されてきたという文脈で語られます。しかしミアシャイマーは、ロシアはとっくに英軍の存在を認識しており、数十人から百人規模程度なら戦局に影響を与えないと見なしているため、今回の公表は軍事的にも政治的にも大した意味を持たないと冷静に評します。英国が本格的に大規模地上軍を入れるつもりもない以上、クレムリンの計算はほぼ変わらないというのが彼の見立てです。

再び欧州首脳とゼレンスキーの会談に話が戻ると、ミアシャイマーは「ベルギーがユーロクリアのロシア資産を完全な債権担保として差し出すことを拒んでおり、増税も追加借入も難しい中で、欧州にできることは限られている」と指摘します。そのうえで、ウクライナが戦争を継続するための決定的な資金源は「ロシア凍結資産の“盗用”」しか残っていないと表現し、これが実現しなければウクライナは財政的に行き詰まると分析します。一方、欧州指導者たちは、まだ「ロシアが先に崩壊し、西側が最終的な勝者になるかもしれない」という幻想を捨てておらず、そのため戦争をできる限り長引かせようとしていると批判します。

トランプが「欧州を信用せず、ウクライナから手を引きたい」といった趣旨の発言をしたという報道について、ミアシャイマーは、トランプの言動はしばしば矛盾しており、その場限りのレトリックも多いため、額面通り受け取るべきではないとしつつ、すでに米欧ともに「ウクライナは負ける」と内心では理解していると語ります。現在の本質的な問題は「誰が敗北の責任を負うのか」という“責任のなすりつけ合い”になっているというのが彼の視点です。トランプが単純にウクライナから手を引くと、「トランプがウクライナを見捨てたからだ」と責任を押し付けられるため、彼にとって賢明なのは「ウクライナ問題はヨーロッパの責任」と位置付けつつ、支援を続けて欧州側に敗北の責任を残すことだと分析します。

一方で欧州諸国の論理は、「最後のウクライナ兵まで戦わせることで、自分たちが決して“裏切り者”と見なされない状況をつくる」ことだとミアシャイマーは見ます。つまり、限界まで支援を続けたうえで敗北したときに、「我々はやれることは全てやった。トランプが責任を取らなかったからだ」と主張するための政治的ポジションを確保しているというわけです。ミアシャイマーは、今回の敗北はアフガニスタン撤退のような「周縁的敗北」とは異なり、NATOとロシアが真正面からぶつかった大規模戦争での敗北であるため、欧米にとっては歴史的な大失敗・大災害になると強い表現で警告します。

最後に、トランプが自らの「28項目和平案」について「ロシアは受け入れている」「ゼレンスキーはまだ読んでいない」「側近たちは気に入っている」と語った件が取り上げられます。ミアシャイマーは、これは事実と真逆だと一刀両断し、ロシアもウクライナも案を受け入れておらず、ゼレンスキーは当然中身を把握したうえで拒否していると述べます。双方が完全に拒絶している以上、「合意の余地は今のところ存在しない」とし、トランプの発言は現実の交渉状況を反映していないと批判します。そのうえで、日本での講演では東アジアの安全保障環境、米中競争、日中関係、そして日本がこの「サメの群れのような危険な環境」をどう生き抜くべきかを語る予定だと述べ、番組は締めくくられます。

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