US, Europe Proposals for Ukraine ‘NOT SERIOUS,’ Russia Fights On | Lt Col Karen Kwiatkowski

このインタビュー全体の軸は「ウクライナ和平をめぐる米欧の動きは本気ではなく、ロシアは自分のペースで戦争を続ける」という認識です。冒頭で司会のレイチェルは、2025年12月時点でトランプ政権が依然ロシアとの交渉に動き、スティーブ・ウィトコフやクシュナーをモスクワに送り出しつつ、その直前にはフロリダでウクライナ側と4時間の協議を行ったことを紹介します。国務長官マルコ・ルビオは会談を「前向き」と言いつつも課題が多いと認めているものの、実際にロシアが受け入れられるような真剣な和平案はまだ提示されていない、という問題意識が出発点になっています。

カレン・クウィアトコウスキーはまず、トランプがこの戦争を「自分とプーチンの2者間ゲーム」と勘違いしていると批判します。実際には、少なくとも米・ロ・ウクライナ・欧州(特に英仏独)という3〜4主体の戦争であり、欧州主要国は「戦争を続けたい側」で、エネルギー・軍需・市場支配などの利害のために深くコミットしていると指摘します。彼女はペペ・エスコバルらの表現を引用して欧州を「吠えるチワワ」と揶揄しつつも、メディアとナラティブ支配の面では大きな影響力を持ち、和平を引き延ばす方向に世論を誘導していると見ています。つまり、トランプが「2者間で片付けられる」と思っている限り、欧州とネオコン勢力によって交渉は常にかき回されるという構図です。

そのうえでカレンは、ウクライナの軍事的敗北はすでに明白であり、オーバートンの窓が変わった結果、今やJD・ヴァンスなども公然と「ウクライナは負けている」と言える段階になったと述べます。ゼレンスキー自身も戦場の現実を理解しているが、欧州は「負けた投資から元を取り返そうとするギャンブラー」のように、和平を先延ばしすることで何かを取り戻せると幻想を抱いていると比喩します。これは、ビットコインを高値で買って暴落しても「損を取り戻したい」と思い続ける心理に似ていると彼女は説明し、欧州の戦争への執着が理性的ではなく「 sunk cost 」に囚われた感情だと強調します。

トランプ周辺の人事についても、カレンは厳しい評価を下します。ウィトコフやクシュナーといった側近は、長年の金銭的関係と信頼で結びついた「オリガルヒ的」存在であり、トランプはこうした人物だけを信頼して交渉に使っていると批判します。一方、ルビオを中心とする国務省官僚は「欧州に認められたい」勢力であり、NATO拡大やウクライナへのNATO駐留、ウクライナの完全なNATO陣営への組み込みをなおも夢見ているが、ロシアは絶対に受け入れないと断言します。最近までトランプのウクライナ担当だった高齢の軍事顧問もNATO的な視点の持ち主であり、政権内部でさえ対ロ戦略の一貫性がないことを示していると述べます。

和平案そのものの中身について、カレンはとりわけ辛辣です。ガザ向け20項目案やウクライナ向け28項目案はいずれも、実際の和平プロセスを設計する文書ではなく、「短い箇条書き」を並べただけの世論向けPRに過ぎないと断じます。本来の和平計画には、付属書、実施スケジュール、監視・検証メカニズム、段階的措置の詳細などが必要ですが、トランプ案にはそうした要素がほとんど欠けているため、イスラエルやウクライナ側が本気で拘束されるはずもなく、違反が起きても何のペナルティもない構造だと批判します。結果として、具体的かつ合意済みの枠組みはロシアに正式提示されておらず、ロシアから見れば「西側内部のサーカス」を遠巻きに眺めているような状況だと描写します。

欧州の戦争継続志向の背景には、各国指導者の極度の国内政治的不安定さがあるとカレンは分析します。マクロンのように国民から嫌悪され、議会を何度も解散してきた指導者たちは、フランスのルペン勢力をはじめとするポピュリスト・ナショナリスト潮流の台頭に追い詰められていると説明します。ウクライナ戦争は、欧州におけるエネルギー政策・移民・産業空洞化など広範な失政の象徴的案件になっており、これを「高コストの失敗」として認めて戦争を終わらせれば、ジェンガの一本の棒を抜くように他の政策失敗への怒りが一斉に噴き出し、政権崩壊につながりかねないと彼女はたとえます。そのため、指導者たちは自らの政治生命を守るために、戦争を終わらせない方向に必死でしがみついていると見ています。

一方、ロシアの戦争遂行については、カレンは非常に高く評価します。ロシアは「特別軍事作戦(SMO)」を事前に宣言し、議会の承認という法的根拠を整え、国家として明確な目的・範囲・制約を設定した形で戦争に踏み切ったと説明します。これはクラウゼヴィッツの言う「政治の延長としての戦争」の教科書的な実例であり、政権交代に左右されない国家政策として設計されている点で、第二次世界大戦以降の米国の戦争(ベトナムなど)とは対照的だと述べます。ロシアがドンバス住民の自治要求やミンスク合意の無視・破棄に直面し、「西側がウクライナ内戦に介入し続けた後にようやく介入した」ことも強調し、西側の内政干渉と比較しながらロシアの行動を正当化します。

カレンによれば、ロシアの目標はウクライナ全土の併合ではなく、「ロシア語話者・ロシア文化を持つ地域の保護」と「中立的なウクライナ」の確保です。ロシアはすでに2地域を併合し、必要ならザポロジアやヘルソンも含めてSMOで掲げた領域を確保するまで作戦を継続すると見られるが、その後に求めているのは、米国にとってのカナダやメキシコのような、友好的で交易可能な中立的隣国だと説明します。これに対して西側は、ノルドストリーム爆破や制裁を通じて東西のエネルギー貿易を破壊し、米国産エネルギーを押し込む方向に動いており、米国が本当に欲しているのは「ウクライナの平和ではなく、戦後復興と援助を通じた利権・マージン」だと批判します。

インタビュー終盤では、話題はベネズエラに移ります。レイチェルは、トランプがSNS上で「ベネズエラ周辺空域は完全に閉鎖された」と宣言し、まるで一方的な飛行禁止空域を設定したかのような発言をしたこと、米空母ジェラルド・R・フォードの部隊がベネズエラ攻撃の演習を行っているとの報道を紹介し、「米国が新たな終わりなき戦争を始める可能性」についてカレンに問います。カレンは、米国は「一つの戦争を終わらせるときには必ず別の戦争を始める」傾向があり、ウクライナ戦争の縮小とベネズエラ攻撃の準備は連動していると分析します。

ベネズエラに対する「麻薬・ギャング脅威」論について、カレンはDEAなどの認識とも照らし合わせて「事実無根に近い」と断じ、本当の狙いはベネズエラとその周辺の巨大なエネルギー資源の支配だと見抜きます。彼女は、トランプが以前グアイドなどを使ってクーデターを試みて失敗したこと、反体制派リーダーへのノーベル平和賞授与が政治的に仕組まれたものであり、トランプ自身の「ノーベル受賞要求」とセットで世論操作に使われている可能性を示唆します。マドゥロへの恩赦や制裁解除を拒否しながら、別の麻薬王には恩赦を与えるような二重基準も指摘し、トランプの「麻薬との戦い」レトリックが完全に偽善であると批判します。

カレンは最後に、38兆ドルの米国債務と、1四半期あたり1兆ドルという歯止めのない債務拡大、勝てない戦争の連続がドル離れを加速させていると警告します。彼女は、個人的には常に「平和候補」に投票してきたが、ブッシュJr.を含め、候補者は選挙では非干渉や平和を約束しながら、就任後には戦争を拡大するという裏切りを繰り返してきたと回想します。トランプが戦争によってこの状況を改善できると考えているなら、それは歴代の「愚かな政治家」と同じ思考パターンであり、米国の指導層は世界から見ても理解不能なレベルにまで劣化していると結びます。ロシアが少なくともウクライナ情勢では一貫した戦略と明確な目標を持ち続けているのに対し、米欧は「見せかけの和平案」「国内政治の延命」「新たな戦争の準備」という自己矛盾の中でもがいている、という対比がこのインタビュー全体の大きな落とし所になっています。

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