フランスの実業界では、2027年の大統領選挙で極右政党・国民連合(National Rally, NR)が政権を取る可能性が高まる中、同党との関係構築を急いでいる。企業経営者や経済界団体は、反移民・保護主義的な姿勢を強めてきたNRを「市場寄り」に転換させるべく、懸命に働きかけを行っている。
これまでフランスの財界は、NRを「経済音痴のポピュリスト」として敬遠してきたが、世論調査での躍進を受け、今や無視できない存在と見なすようになった。航空ショーや経済団体MEDEFの会合など、公開・非公開の場で接触が増えている。
財界の一部は、党首マリーヌ・ル・ペンが選挙出馬禁止の可能性がある中で、後継候補ジョルダン・バルデラに期待を寄せている。バルデラはル・ペンよりも市場志向とされるが、欧州中央銀行による仏債購入提案など、経済政策には不透明な部分も多い。最近の世論調査では、彼が他の候補を破って両選挙ラウンドで勝利する見込みが初めて示された。
しかし、国民連合の経済政策は一貫性に欠ける。議会では財政赤字削減を訴える一方で、減税や年金引き下げ、鉄鋼大手アルセロール・ミタルの国有化法案への暗黙の賛成など、矛盾した行動を取っている。企業経営者の間では「最も重要なのは安定」との懸念が強い。
党内でも、北部の労働者層に支えられる保護主義的なル・ペン派と、南部の裕福層から支持を得る自由経済寄りのバルデラ派で路線の違いがみられる。実業界は、同党が政権に就けばイタリアのジョルジャ・メローニ首相のように現実的な政策へ転換することを期待している。
NR幹部のルノー・ラバイは「均衡財政が必要。赤字削減は主権のためだ」と述べ、ビジネス界との水面下の接触も進んでいる。しかし政治評論家のアラン・マンは、もしNRが政権を取れば、財界が思うほど影響力を持てないだろうと警告している。
