UKRAINE SWALLOWED UP BY CORRUPTION /Larry Johnson & Lt Col Daniel Davis

Daniel DavisのYouTube番組”Deep Dive”に、ラリー・ジョンストンが登場。番組の全体の核となっているのは、「ウクライナは軍事的に追い詰められているだけでなく、政権中枢を飲み込む超弩級の汚職スキャンダルで内部から崩壊しつつある」というテーマです。

冒頭では、ゼレンスキーの右腕とされてきた大統領府長官アンドリー・イェルマクが辞任し、その事務所にウクライナ版FBIのような捜査機関が家宅捜索に入ったことが「キーウ政界の政治的大地震」として報じられます。すでに別の側近が国外逃亡している中で、今度は最側近のイェルマクが捜査対象となり、「次はゼレンスキー本人に捜査の手が及ぶのではないか」という見方が強まっていると語られます。ジョンソンは、映画・テレビ業界出身でコメディアン時代のゼレンスキーの“エージェント”に過ぎなかった人物が国家戦略と戦争指揮を事実上仕切ってきたこと自体が異常であり、「こうなるのは時間の問題だった」と指摘します。

汚職スキャンダルの中身として最も重く扱われるのが、アメリカの対ウクライナ支援金の不正流用疑惑です。番組では、ウクライナの内部告発者がジョンソンの元ビジネスパートナーに接触し、その告発が米国防総省の監察官室に正式な「内部告発」として提出され、すでに刑事捜査が進行中であると説明されます。対象となっているのは、過去約4年間で拠出された総額3600億ドル規模の支援のうち、最大480億ドルが不正に流用された疑いで、その資金はまずエストニア・ラトビアなどバルト諸国の銀行を経由し、最終的にはケイマン諸島などカリブのオフショア金融センターに流れ込んだとされます。さらにそこから、ウクライナ支援を最も激しく唱える米上下両院議員23人以上に支払いが行われたという爆弾発言もあります。「誰がウクライナ戦争を最も声高に煽っているかリストを見れば、誰にカネが行ったか大体わかる」とまで示唆し、戦争推進と利権構造が直結している構図を描きます。

この汚職捜査の重要な点は、「ロシアのプロパガンダでも、西側メディアの暴露でもなく、ウクライナ自身の捜査機関(NABUなど)が動いている内側からの捜査だ」というところだと強調されます。そのため、多くのウクライナ国民にとっても「もう言い訳が効かない」現実となり、政権の正統性そのものが揺らいでいると解説します。同時に、デイビスは「これは西側(特にトランプ政権サイド)が、ゼレンスキーから手を引くための“ストーリー作り”として意図的にリークした疑いもある」と問題提起します。つまり、「ウクライナは徹底的に腐敗していて、我々の税金を盗んでいたのだから、もう支援は打ち切るべきだ」という物語を構築し、体面を保ちながら撤退・方針転換するための準備かもしれないという見方です。

一方で、マイケル・マクフォールや元欧州連合軍司令官ホッジスらは依然として、「ロシアは勝っていない」「ウクライナ崩壊は近くない」「ロシア軍の損耗の方が大きく、前線はほとんど動いていない」といった楽観的な主張を繰り返していると紹介されます。デイビスは実際にホッジスと討論した経験を挙げ、その主張は地図や戦況と明らかに矛盾していると批判します。これに対しジョンソンは、「もし本当にロシアが負けていて、経済も軍も崩壊寸前なら、西側は“和平プラン”などではなく、勝利まで押し切れと言うはずだ。ところが現実には、必死になってロシアを交渉の場に連れ戻そうとしている。これはロシア優位を裏付ける行動だ」と反論します。

軍事状況の分析部分では、ロシアの戦争遂行がいかに「ゆっくりだが着実」であるかが詳しく語られます。ジョンソンは、ロシアがこれまで進撃速度を抑えてきたのは「能力がないから」ではなく、大規模動員と訓練を時間をかけて進め、多方面同時攻勢を可能にする戦力を育成していたからだと説明します。現在ロシアはウクライナ戦域に75万人以上の兵力を展開している一方、ウクライナ側は人員枯渇と士気低下に苦しみ、ザポロジエなどでは既に数百平方キロの地域がロシアの手に落ちているとされます。またロシア側は砲兵・航空爆弾・ミサイルなどで8〜10対1とも言われる圧倒的火力優位に立っており、損耗比でもウクライナにとって致命的な状況が続いていると主張します。

人的損耗についてジョンソンは、「ウクライナ軍は毎月4万人以上が戦死・負傷し、さらに2〜4万人が脱走している。合計6〜8万人が月ごとに戦力から消えているのに、補充できるのは1万7千〜2万人程度。つまり毎月4〜6万人の純減が続いており、これは数学的に持続不可能だ」と具体的な数字を示して警告します。それに対しロシアは、当初は約12万5千人で作戦を開始し交渉圧力をかけることを狙っていたものの、イスタンブール合意を西側が潰した後、段階的動員と契約兵募集により兵力を拡大しつつ、火力優位を活かしてウクライナ軍をすり潰す戦略に移行したと解説します。ここでも、「ロシアはNATOの完全支援を受けたウクライナという“代理NATO軍”を相手に戦っており、単に“小国一つを倒せていない”という単純な話ではない」と強調されます。

外交・和平をめぐる部分では、いわゆる「トランプの28項目和平案」と、それに対する欧州側の反発が取り上げられます。欧州の一部はこの枠組みを「ロシアが書いた capitulation プランだ」と糾弾し、戦争継続を主張していると紹介されますが、ジョンソンは「欧州側こそが非現実的だ」と批判します。特に欧州が提案する「ウクライナ軍80万人維持」という条項については、英・仏・独3カ国の現役兵力合計が50万人弱しかないのに、それをはるかに上回る規模を、財政・産業基盤の崩壊したウクライナに要求していると指摘し、NATO自身の戦力空洞化と危機感の裏返しだと分析します。これに対しロシア側は、予備役1000万人規模の動員潜在力を持ちながら、いまだ全面動員すらしていないとされ、「本気を出せばさらに戦力を増やせるが、現状でも十分優位だ」と見なしていると語られます。

ヨーロッパやNATOの対ロシア姿勢については、歴史的な文脈を交えた批判が展開されます。プーチンは「ロシアが欧州侵略を企んでいる」という西側の主張を「完全なナンセンスで露骨な嘘」と断じ、1814年にナポレオンへの報復としてパリに進軍した以降、ロシアが欧州征服を企てたことはないという歴史的事実が挙げられます。第二次世界大戦後にソ連が東欧に緩衝地帯を築いたのも、侵略というより安全保障の観点から当然の選択であり、「もし米国が同じ状況なら同じことをしただろう」と指摘します。また冷戦終結後、エリツィンやプーチンがNATO加盟や協調関係を模索したにもかかわらず、米側が拒否してきた背景には、「巨大な国防予算を正当化するための恒常的な“敵”が必要だ」という軍産複合体の構造的問題があると批判されます。

ロシアの対ウクライナ外交姿勢については、「表向きは交渉に前向きだが、実際には軍事的勝利か、それと同等の条件を飲ませるまで引かない」というスタンスだと説明されます。最近のビシケクでの会見や軍服姿の演説でプーチンは、ウクライナ政権を「戦争継続を口実に権力を私物化する犯罪集団」と呼び、「特別軍事作戦の目標を無条件に達成する」と明言しました。これは、ゼレンスキー政権を交渉相手として認めない一方で、ハンガリーのオルバンやトランプとのラインを残し、「条件さえ満たされれば外交的解決も受け入れるが、必要なら軍事的にやりきる」という二本立てのメッセージだと解釈されます。プーチンの側に座る交渉責任者(ウシャコフ、メディンスキー、ラブロフ)が明示されていることも、ロシアが「自分たちの条件は固まっており、これ以上は譲らない」というシグナルと受け取られます。

番組の終盤では、「この汚職スキャンダルがウクライナ軍内部の士気と政権の存続に与える影響」が議論されます。既に前線の指揮官や兵士の間では、クレミンナやクルィンキ、バフムトなどでの無謀な持久戦や撤退拒否など、ゼレンスキーと軍司令部への不満が鬱積しているとされます。そこに「政権中枢が数百億ドル単位で私腹を肥やしていた」という疑惑が現実味を帯びてくれば、戦う意義そのものが失われ、脱走・投降・反乱が加速する可能性が高いとジョンソンは見ています。一部では「前線部隊がそのままキーウに“向きを変える”ことまで検討している」という情報も紹介され、クーデターや内戦の芽も示唆されます。

ジョンソンは最後に、ウクライナの現状を「タイタニック」に例えます。すでに氷山に激突し、船体は大きく損傷して沈没過程に入っているのに、上層部はなお「音楽を鳴らし続けろ」と言っているような状況だというのです。救命ボート(脱出ルート)は足りず、今は「ネズミが沈む船から逃げ出す」フェーズに入っていると表現し、ウクライナ国家プロジェクトとNATOの対ロ戦略が共倒れになりかねないと警告します。もし西側が最後まで外交的出口を用意せず、ロシアの軍事的勝利を許した場合、その後はNATOの信頼性崩壊と対ロ関係の廃墟処理という、さらに厳しい局面が待っているだろうと締めくくっています。

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