ウクライナのレアアース(希土類)鉱物資源の行方_陰謀論から停戦後の戦略的なリソースの争奪戦へ

ウクライナ戦争が始まって、三年目に突入したが、第二次トランプ政権の誕生により、選挙前の公約通りに、停戦に向けた合意形成の交渉が米国を中心にロシア、ウクライナ、EU & NATOと勢力的に行われている。

 
 
 

このように停戦に係る交渉が活発化する中で、バイデン政権下では、共和党のネオコン議員であるリンゼイ・グラハム氏が時々、ウクライナの地下に眠る鉱山資源が豊富にあることを指摘して、グラハム氏は、この豊富な資源が米国民に米国の関与を正当化する一助となる可能性を示唆し、

「トランプ大統領は米国民に向かって、ウクライナは重荷ではなく利益だと言うことができる」

と述べていたが、彼のネオコン思想等もあり、その時点では彼も発言が必ずしも正当な評価を超えていたとは言い難かった。

しかし、第二次トランプ政権誕生後、このウクライナの鉱山資源の権益については、トランプ大統領自らも直接的に言及するなど、従来の陰謀論から一気に戦略的リソースの争奪戦の様相を呈して来た。

2月15日のNBC Newsの

”Trump officials pitch Zelenskyy on U.S. owning 50% of Ukraine’s rare earth minerals”

と言う記事を見ると、

「アメリカ政府高官4人によれば、戦争終結に向けたロシアとの取引が成立すれば、その警備のためにアメリカ軍をウクライナに派遣することに前向きであることを示唆したという。」

と報じ、

「この所有権協定は、鉱物の代金を支払うのではなく、2022年2月の開戦以来、ウクライナがキエフに提供した何十億ドルもの武器や支援の代金をアメリカに返済するためのものだ」

と言う、2人の高官のコメントを紹介している。

更に、報道では、

「この提案は、スコット・ベッセント財務長官は、水曜日にキエフで行われた会談に持参した契約書の草案で、ウクライナのレアアース鉱物の半分を米国が所有するという提案をゼレンスキー大統領に提示した。」

と内部情報も報じている。

ゼレンスキー大統領は、その場での署名については留保し、草案のレビューを開始すると。

ゼレンスキー大統領としては、米国からの軍の派遣は安全保障上、喉から手が出るほど欲しいが、国際機関、EUやG7からの融資の返済もある中で、米国にだけレアアース(希土類)鉱物の所有権を渡す訳にはいかなかったんだろうと推察する。

ところでで、ウクライナに埋蔵されている、レアアース(希土類)鉱物資源の市場価値はどれくらいあると見込まれているのか?

また、埋蔵されたレアアース(希土類)鉱物は、ウクライナのどの地域に分布しているのだろうか。

そこで、AI ChatのPerplexityで調べてみると、以下のような回答を得られた。

  • ウクライナは、ネオジム、イットリウム、スカンジウム、ベリリウムを含むレアアースの欧州最大の未開発埋蔵量を保有しており、その総額は12兆~26兆米ドルを超えると推定されている。
  • 2025年2月現在では、ロシアはウクライナの重要なレアメタル鉱床の50~70%を占有しており、ドンバス(ドネツク、ルハンスク)と南部ザポリツィア地方に集中している。 これらの地域には重要なリチウム、タンタル、セシウムの埋蔵量があり、現在ロシアの軍産複合体に燃料を供給し、西側の制裁を回避している。

仮に、この回答が正しいとすれば、トランプ政権はウクライナに対し、ウクライナのレアアース(希土類)鉱物の50%の所有権をアメリカに認めるよう提案しており、ウクライナのレアアース(希土類)鉱物は、これが認められると、米露が事実上支配することになり、ウクライナ戦争に軍事的かつ又は経済的に支援して来たEUや米国を除くNATOやG7にとっては面白くない話しとなり、戦場になったウクライナにとっては、踏んだり蹴ったりの話しでもある。

何故、ウクライナ戦争が始まったのかについては、保守派と左翼リベラル派では全く異なる見解を持っているが、ウクライナはNATOに代わって、ロシアと代理戦争を行って来たと言う実態を鑑みると、ウクライナはこの戦争の為に多数の死傷者を出し、東ウクライナ地域のかなりの部分をロシアに実行支配され、領土の一部を失い、国としても大きく疲弊したにも拘らず、今、ロシアと米国の仲介でウクライナ戦争の停戦交渉過程で、レアアース(希土類)鉱物のような戦略的資産を手放す可能性が出て来ており、ゼレンスキー大統領の戦争に参戦し、尚且つ、早い時期での停戦合意を拒否して、ここまで戦い続けた責任は大変重いと言えよう。

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