相次ぐ米国金融機関の”Net-zero Banking Alliance”からの撤退と今後の動向

トランプ次期政権の誕生が今月20日に迫って来たこととも関係があるのだろうか、ウォール街の金融機関が気候変動対策を目的とした国際的な銀行グループである

”Net-zero Banking Alliance (NZBA)”

からの脱退を続々表明している。

1月2日のBloombergの

“Morgan Stanley Follows Citi, BofA in Quitting Climate Group”

の記事では、

「米モルガン・スタンレーは、1月2日の電子メールで、銀行業界の主要気候変動対策グループ“NZBAから脱退すると発表した」

と報じた。

また、併せて、今週に入り、シティグループとバンク・オブ・アメリカ(BofA)がNZBAからの脱退を表明しているとも伝えている。

 
 
 

そもそもNZBAとは何か?。

UN Environmental Programme_Financial Initiativeによれば、その

「2024年の進捗報告」

の中で以下のように説明されている。

  • 2021年4月にNZBAが発足して以来、加盟行数は43行から144行へと3倍以上に増加した。

  • 最初の個別セクター別目標を設定する予定であった122行のうち、97%が目標を設定した。

  • 重要なエクスポージャーを持つ炭素集約的セクターのすべて、またはかなりの大部分をカバーする目標を設定する予定であった50行のうち、約5分の4が目標を設定した。

  • 移行計画を公表する予定であった91行のうち、3分の2近くが公表し、2024年にはさらに多くの銀行が公表する予定である。

野村証券によれば、日本企業では、野村ホールディングス、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友トラスト・ホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループが加盟しているとのこと。

前述の記事の中では、

「ウォール街金融機関の気候変動対策を巡り共和党議員からの圧力が強まっている。そうした議員は気候変動への取り組みを“ウォーク(社会正義に対する意識が高いこと)”キャピタリズムだとし、調査を開始したり、訴訟を起こすといった行動に出ている。」

と報じる一方で、

「11月には、米テキサス州を中心とする複数州がブラックロック、バンガード・グループ、ステート・ストリートを提訴。投資を通じて電気料金を吊り上げ、反トラスト法(独占禁止法)に違反したと主張した。」

とも伝えている。

米系金融機関では、ゴールドマン・サックス・グループやウェルズ・ファーゴが昨年12月に同団体から脱退している一方で、1月3日のYahoo Financeの

“Wall Street banks exit climate alliance as Trump 2.0 nears”

の記事によると、

「JPモルガン・チェースのようにアライアンスへの加盟を維持することを選択した銀行もあることは注目に値する。」

と報じている。

欧州やアジア地域の銀行がNZBAから脱退する動きは今のところ、見られない。

最近の脱退は主に米国の大手金融機関に集中していると言っても良いだろう。NZBAに関する注目すべき点は以下の通りである。

  • 香港を拠点とするバンク・オブ・イースト・アジアは最近、中国の銀行として初めてNZBAに加盟した。

  • NZBAは新興市場を含む様々な地域からの加盟が増加している。2023年、NZBAはパキスタンとギリシャから最初の加盟行を迎えた。

  • 2024年9月現在、NZBAは44ヵ国146行で構成され、世界の銀行資産の約41%を占めている。

米国の商業銀行、投資銀行のNZBAからの離脱は、トランプ次期政権の発足が目前に控える中で、共和党の政策立案者による特定の政治的・規制的圧力に影響されているように見えることは注目に値する。

2024年までは、欧州も左翼・リベラル政権が中心になって統治されて来たが、昨今の欧州地域やカナダの政治的な状況を鑑みると、左翼・リベラル勢力の退潮が顕在化して来ており、ドイツ、フランス、カナダでの保守勢力への政権交代も実現する可能性が高まって来ており、2025年以降のNZBAに係る流れについては要注目である。

と言うのも、米国の主力金融機関がNZBAから撤退する動きが他地域に拡大すると、銀行業務の競争上の公平さが担保されなくなり、脱退に拍車がかかる恐れがあるからだ。

また、通常、こうした世界の流れからは一廻り以上遅れている日本の金融機関の動きについても、併せて注視していきたい。

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