バイデン大統領が息子のハンター・バイデン氏に恩赦を与えた影響

122日の日本時間の午前中にバイデン大統領が息子のハンター・バイデン氏に恩赦を与え、主要なメディアはどこも大きく報道した。

例えば、122日のロイターの「バイデン米大統領、次男ハンター氏に恩赦 退任前に方針一転」と言う記事の中では、

「バイデン米大統領は1日、銃の不法購入・所持で有罪評決を受け、税務府不正で罪を認めた次男ハンター氏に恩赦を与えたと発表した。」

と報じて、

「就任以降、私は司法省の意思決定に干渉しないと表明し、息子が選択的、そして不当に起訴されるのを目にしながらも、その約束を守った」

とした上で、

「父親として、大統領としてこの決定に至った理由を米国民が理解してくれることを願う」

と述べた声明を伝えている。

 
 
 
 
 

これまで、バイデン大統領は、銃の不法購入・所持で有罪評決を受け、税務府不正で罪を認めた次男ハンター氏に恩赦を与えることはないと繰り返し述べて来ただけに、今回のバイデン大統領の恩赦の判断には、複雑な想いを感じた。

私なりの勝手な想像だが、ハンター・バイデン氏の有罪評決は2024611日に出され、当初、量刑は同年1113日に予定されていた中で、次男の行く末を案ずるバイデン大統領には、次男に対する恩赦が次男を救う唯一の手段であることは十分認識はあったが、当時は2024年の大統領選挙に民主党の公認候補として出馬する前提にしていたので、自身の再選を最優先する中では、対外的には恩赦の切り札は切れなかった。

しかし、その後、民主党の最高幹部による“クーデター”で、バイデン大統領は大統領選挙から辞退を余儀なくされ、もはや自らの「公約」に縛られる必要もなく、量刑の言い渡しが124日に延期される中で、堂々と次男を助けることが出来たと言うことなのかなと理解した。

恩赦のニュースが各種SNSでも報じられ、視聴者のコメントを見ると、政敵であったトランプ大統領が11月の米国大統領選挙で民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に圧勝して、トランプ大統領の有罪判決や進行中の裁判に免責特権の判断が与えられたこともあり、ハンター・バイデン氏に恩赦は「妥当である」「バランスが取れている」「父親として理解できる」と言った見方をしている人が結構いて、正直驚いた。

しかし、トランプ大統領に対する司法の武器化は、先の大統領選挙で万が一敗北していれば、大統領の免責特権の判断はされることはなかっただけに、トランプ大統領の免責との比較感でハンター・バイデン氏への「恩赦」を語るのは、大きな筋違いと言えるのではないか。

また、今回の恩赦をバイデン一家をさらなる調査から守ろうとする試みと見る向きもある。 恩赦に批判的な立場の批評家の中には、恩赦はバイデン一家のビジネス取引に関する現在進行中の調査を妨げる可能性があり、ハンター・バイデンの法的な露出を減らし、捜査当局に協力する潜在的な動機を減らす可能性があると主張している。

今回の恩赦とバイデン一族のビジネス取引に係る調査については、恩赦は、バイデン一族のビジネス慣行について言及するものでも否定するものでもないし、恩赦は、ハンター・バイデンの特定の訴訟事件以外に存在する可能性のある賄賂や不適切な影響力の証拠に対処するものでも否定するものでもないと言える。

下院の監視委員会が、バイデン一族のビジネス慣行について調査を続けており、総額2,000万ドルを超える外国団体からの支払いの証拠が見つかったとしている。次期トランプ政権の下で、この調査が継続され、バイデン一族の取引実態の更なる解明に焦点が当たることを期待したいものだ。

最後に、バイデン大統領の今回の恩赦の判断は、ある意味、先の大統領選挙でカマラ・ハリス副大統領が選挙終盤の予想を裏切り、大敗北した後、米国としては一旦、大きく分断した有権者間の融和が必要な時に、この恩赦のお陰で、ハンター・バイデン氏の収監が更なる分断のきっかけを与えるのを防ぐ点では、政治的意味合いは大きいのではないかと思料する。

一方で、今回の米国大統領選挙で大敗北し、2028年の大統領選挙での復活を狙う民主党にとっては、バイデン大統領が「父親として、大統領としてこの決定に至った理由を米国民が理解してくれることを願う」と述べた声明は、ある意味、誠に身勝手であり、民主党の復活の道は長いものになると予感する。

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