改めて、Trump Media & Technology Groupの業容と株価動向について

Trump Media & Technology Group (TMTG)と言えば、Nasdaq上場の銘柄で、トランプ前大統領が設立したSNSである、Truth Socialの運営会社である。

同社のホームページによれば、

「TMTGの使命は、インターネットを開放し、人々に声を取り戻すことによって、ビッグテックによる言論の自由への攻撃を終わらせることである。

TMTGは、大手テック企業による検閲がますます厳しくなる中、表現の自由のための安全な港として設立されたソーシャルメディア・プラットフォーム、Truth Socialを運営しています。」

と書いている。

 
 
 

TMTGが投資家のみならずメディアで注目され始めたのは、2024年3月25日に完了したDigital World Acquisition Corp.との企業合併取引の結果、TMTGは公開企業となり、2024年3月26日に”DJT”のシンボルでNasdaq市場での取引を開始したのがきっかけとなっている。

3月26日以降のTMTGの株価パフォーマンスを見ると、トランプ前大統領銘柄がNasdaq市場に登場したこともあり、終値ベースで見ると、3月26日の取引開始日にはUSD57,99で引けて、終値翌日にはUSD66.22まで上昇したが、その後乱高下はあったものの、9月23日にはUSD12.15まで下落して、10月8日にはUSD21.80で引けている。

同社のホームページによると、2024年6月25日現在、TMTGの普通株式の発行済み株式数は189,941,870株であり、トランプ前大統領は同社の発行済み株式の114,750,000株(約58.7%)を保有しており、名実ともに、同社はトランプ大統領銘柄であると言えるだろう。

因みに10月8日の終値ベースで試算すると、トランプ前大統領が保有するTMTG株の時価評価額は、約USD 2.5 billionとなっている。

TMTG業績を見ると、以下のようになっている。

2024年第2四半期(6月末)

  • 収入: USD 837,000
  • 受取利息: USD 2,300,000
  • 純損失:USD 16,400,000
  • 現金: USD 344,000,000

TMTGのNasdaq市場での上場は、Digital World Acquisition Corp.と言うSPACとの企業合併によって実現しており、このSPACがIPO時に資金調達した資金が十分TMTGのバランスシートにあり、カスタムメイドのコンテンツ・デリバリー・ネットワークを支える初のデータセンターを開設と iOS、Android、WebのTruth SocialにTVストリーミング・プラットフォームを順次追加していくことが同社のホームページ上で発表されている。

TMTGは、企業としては事業の赤字が継続しており、Truth Socialの口座数やそのアプリケーションのアクティブ・ユーザーの数を積極的に増やして、広告収入を上げるなどすることが必要となってこよう。

TMTGの成長戦略として、7月3日の同社のプレス・リリース

“TMTG Secures Perpetual Licensing for New Technology in Truth Social TV Streaming and Signs Long-Term Equity Deal”

の中では、

「TVストリーミングを推進するため、TMTGは、TMTGがコンテンツ配信ネットワークに使用する予定の新しいCDN技術について、Perception Group, Inc.およびその関連会社(以下「パーセプション社」)から世界的な非独占的永久ライセンス権を取得する予定である。

さらに、パーセプション社は米国市場においてTMTGと競合する可能性のある分野での事業展開について、5年間一定の制限を受けることになる。

この契約には、将来的にTMTGがパーセプション社を完全買収する偶発的な機会も含まれている。」

と開示している。

赤字企業であることや、トランプ前大統領の色が濃く出ていることもあり、前述の同社のTMTGのプレス・リリースを注意深く読むと、成長に必要な資金をデットで調達することが困難であると予想される中で、TMTGは、今後3年間のTMTGの事業拡大に必要な資金を調達するため、長期エクイティ・ファイナンスの手配を完了したとして、以下のような開示もしていたことが分かった。

TMTGの成長戦略を推進するため、当社はYorkville Advisors(以下「ヨークヴィル社」)が運営する投資ファンドであるYA II PN, Ltd.との間でスタンバイ株式売買契約(以下”SEPA”(standby equity purchase agreement))を締結し、重要な資金調達オプションを確保した。この契約は、一定の慣例的な条件に従い、TMTGが独自の裁量で、ヨークヴィル社に対して3年間で最大25億ドルの普通株式を発行するオプションを付与するものである。ヨークビルが支払う1株当たりの引受価格は、当社が選択した1日または3日間の価格決定期間中、市場価格(SEPAで定義されている用語)に対して75%のディスカウントとなる。TMTGはSEPAを戦略的に利用し、資本を調達・配備することを意図しており、市場の状況やビジネスチャンスによって正当化される場合には、状況に応じてSEPAを少額または多額利用する。

さて、改めてTMTGの株価の動きを振り返ってみると、

①2024年の米国大統領選挙でのトランプ前大統領への支持の度合や2025年1月の政権復帰の期待感と

②大口投資家のロックアップ期間終了後の同社株式の市場売却

の2つが、同社の株価の主たるドライバーになっていることは間違いないようだ。

直近では、ユナイテッド・アトランティック・ベンチャーズが保有するTMTG株式のロックアップ期間が2024年9月19日に解除され、ユナイテッド・アトランティック・ベンチャーズは速やかに保有株(750万株)のほとんどを売却し、9月23日には株価はUSD12.15まで下落したが、トランプ前大統領がTMTG株を当面、保有を続けると宣言したことで、これ以上の売却懸念感が和らいだことから、株価は反転基調となった。

その後、TMTGの株価は、テスラ社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が10月5日にペンシルベニア州バトラーで行われた選挙集会でドナルド・トランプ元大統領と共に登場したことを受けて上昇している。

10月7日(月曜日)のセッションを金曜日対比で11.5%上昇で終えた。

火曜日には、CBSニュースの「60ミニッツ」でのカマラ・ハリス副大統領のビル・ウィテカー記者との一対一のインタビューで、

①移民政策の実績を擁護し、

②経済計画を宣伝し、

③イスラエルのネタニヤフ首相を「強力な同盟国」と認めることを拒否した

ことを受けて、投資家はトランプ前大統領の11月の大統領選挙での勝利の蓋然性が上がったとして、前日比で18.5%上昇した。

米国の大統領選挙まで余すところ30日を切って、選挙戦はますます厳しさを増している。TMTGの株価からも目が離せない。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール