ロシアへの経済制裁は、新しい決済サービスを生み出す原動力となるか?

2022年にロシアがウクライナに軍事侵攻して以来、EU及びG7はロシアに対して繰り返し経済制裁を行って来た。

その中では、早い時期から、ロシアの商業銀行による、米ドルの国際的な決済通貨システムであるSWIFTへのアクセスを禁止して来て、ロシアの国際貿易の決済に大きな影響を与えて来た。

一方で、この経済制裁の下で、これまでロシアの国際貿易では米ドルを決済通貨として来た慣習から、ロシアや貿易相手国の通貨を用いて決済するような方向に動いて来たのも事実である。

 
 
 

こういう流れの中で、最近、”BRICS PAY”と言う言葉を耳にする機会も増えて来たので、これがどういったサービスを提供するのかを中心にお伝えする。

ホームページ(https://brics-pay.com/)によると、“BRICS Pay”とその決済プラットフォームの“BRICS PAY”については以下のように説明されている。

  • “BRICS Pay”は、BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)によるジョイント・ベンチャーで、BRICS Business Council(BRICSビジネス協議会)が2018年に年次報告書の最優先事項の中で立ち上げたものである。

    このベンチャーを支えるチームは、5カ国すべての出身者で構成されており、 その中には、決済、銀行、テクノロジー、その他の関連分野の専門家も含まれている。

    彼らはプラットフォームの開発、新機能の開発、カスタマー・サポートを担当する一方で、更に、パートナー、政府、その他のステーク・ホルダーとの関係管理も担当する。

  • “BRICS PAY”は、BRICS済圏の加盟国が共同開発中のデジタル決済プラットフォームである。

    BRICS PAYは、BRICS PLUS形式で各国間のデジタル決済を可能にし、企業や消費者が自国通貨で安全かつシームレスに決済を行えるようにすることを目的としている。

    このプラットフォームは、国際決済のコストと複雑さを軽減すると同時に、商品やサービスに対する安全で信頼性の高い支払い方法を提供するよう設計されている。

 
 

デスクトップで調査した限りでは、BRICS PAYはまだ準備中であり、正式には開始されていないようであり、近い将来、おそらく2024年のBRICS年次首脳会議でデビューする予定だと言われている。

このシステムは、BRICS加盟国間の国境を越えた取引を促進するために設計されたブロックチェーン・ベースの決済システムと説明されており、現在、159の参加者がこのシステムを採用する予定である。

BRICS PAYは、加盟国間の小売決済および取引のための共通システムを確立する取り組みの一部であり、将来的にはBRICS諸国にとって重要な決済システムとなることが期待されている。

一方で、9月17日のRTの

“Russia ready to use crypto in foreign trade – Vedomosti”

の記事では、ロシアとの外国貿易で暗号通貨を使う準備が整いつつあることを以下のように報道している。

  • いくつかの国内輸入業者と銀行が、デジタル通貨による国境を越えた決済をテストするために選ばれたフォーカス・グループが設立され、これにはロシア商工会議所、電子機器開発製造者協会、金融業者が参加しています。

    選ばれた企業や機関は、国境を越えた決済を行う一方で、「理論上」民間と軍事の両方に使用される可能性がある、デュアル・ユース商品への支払いに課題を抱えている。


  • また、プーチン大統領は、暗号通貨とデジタル資産の規制問題を提起し、法的枠組みや規制を早急に整備することが重要であると述べました。

    ロシア中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁も、規制当局が今年末までに最初の国境を越えた暗号決済を実施すると述べています。

    制裁を受けていない金属生産者も、テザーの安定したコインを使用して中国のパートナーとのクロスボーダー取引を行っていると報じられている。

同記事にあるようなデジタル通貨を用いた海外取引とBRICS PAYがそれぞれどのような位置付けにあるのかはこの時点では明確になっていないが、EU、G7の課した経済制裁のお陰で当初、ロシア経済、特に海外取引に大きな影響が出たが、その後、決済の脱ドル化が進み、今、新しい決済システムの構築が進行中で、経済制裁によるチャレンジを解決しつつあると言えそうだ。

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