DEI重視の経営方針から後退する米国企業_いつまでも 後生大事にしている日本企業は大丈夫か

上場企業を運営していく上で、ESGを重視することはあっても軽視しては決していけないと言うのが、少なくとも日本の常識であり、世界の潮流かと思っていたら、ここのところ、おやッと思う記事が何件か続いたので、今回はそこに注目してみたい。

 
 
 

皆様の中でも、DEIと言う略語を耳したことはあるかと思う。

Advantage Journalによれば、

「DEIとは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの頭文字を取った略語で、多様性とアイデンティティを尊重し、かつ、公平な活躍機会を与えられている状態を意味する言葉」

であり、

「企業経営における人的資本活用の考え方として近年注目されており、経営戦略の一環として推進する企業もみられる』

とのこと。

DEIで直近、思い出すことは、米国の民主党の大統領候補の指名を受けたカマラ・ハリス氏だが、そもそも2020年にバイデン大統領の相方として副大統領に指名された訳だが、能力、経験、知見と言ったものに優れているから副大統領に選ばれたのではなく、彼女の性別が女性で人種的にマイノリティの出身だからと言うことが彼女の起用の大きなポイントであったこともあり、共和党側から“DEI採用”のレッテル貼られて攻撃を受けてもいる。

さて、そんなDEIだが、最近、DEI重視を推進して米国企業の中には、このDEI重視の姿勢から撤退するところが出て来たと言う。

8月26日のUSA TODAYの

”Lowe’s changes DEI policies in another win for conservative activist”

では、ホームセンターチェーンのロウズ(Lowe’s)は、

「DEIを支持する企業に対する保守的な活動家の反対キャンペーンの次のターゲットになるという知らせを受け、多様性、公平性、インクルージョンのコミットメントの一部を後退させている」

と述べている。

具体的には、同社は、LGBTQ+の擁護団体であるヒューマン・ライツ・キャンペーンの調査に参加しないことや多様な従業員のための従業員リソース・グループを1つの組織に統合する予定を明らかにしている。

8月29日のBloombergの

“Ford Joins Harley in Scaling Back DEI Policies Amid Backlash”

では、フォード・モーターもDEIへの取組を後退させる発表について取り上げており、

「フォード・モーターは従業員に対し、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンのイニシアチブを修正し、LGBTQ擁護団体による注目ランキングへの参加を終了すると発表した。」

と報道した。

同社では、

「政治的・社会的問題に関連する外部環境および法的環境は進化し続けている。」

として、ヒューマン・ライツ・キャンペーンの「企業平等指数」や様々な「働きがいのある会社」リストとはもう関わらないとし、従業員支援グループを再集約し、全従業員に開放すると述べたとしている。

 
 

DEIへの取組み縮小について、デスクトップ・ベースで調査してみたところ、ロウズやフード・モーター以外にも事例を発見し、最近では、トラクター・サプライ、ハーレー・ダビッドソン、ジョン・ディアと言った大手企業がこうしたの取組みの縮小を発表していることが分かった。

今回取り上げた、5社に共通しているのは、50万人近いフォロワーを持つ保守派活動家である、ロビー・スターバック氏がこれらの企業や他の企業にDEIプログラムの縮小を促して来たことである。

前述のUSA TODAYの記事によると、

「私たちの “Wokeness”に反対する運動は、企業にとって無視できない力です。」

と、スターバック氏はUSA TODAYに声明を発表したとのことで(注:Wokeは、「ポリティカル・コレクトネスや過度な意識高い」くらいの意味)、人種、ジェンダー、家族をめぐる文化的問題で引き裂かれたこの国で、同氏は、DEI、気候変動、ゲイやトランスジェンダー・コミュニティへのコミットメントを撤回するよう、米国企業に圧力をかけるアジテーターの新しい波に属していると紹介している。

日本の上場企業では、依然として、DEIの推進に注力しているところが多く、人材の多様化、労働力人口の減少、グローバル化の進展が進む世の中で、

「あらゆる人が公平に扱われ、尊重され、組織・社会において包括される」

取組みを進めれば、

「従業員の個性を発揮できる環境が企業の成長に繋がる」

と信じているところも多いのではないだろうか。

しかしながら、前述のUSA TODAYの記事によれば、

「DEIへの取組みが先行して来た米国では、かつては歴史的に代表権を持たないグループにのみ開かれていたフェローシップやインターンシップも、今では誰にでも開かれたものになりつつある。 株主報告書で多様性目標への言及を取りやめる企業も増えている。また、規制当局への提出書類において、DEIを“リスク要因”として記載する企業もある。株主報告書で多様性目標への言及を取りやめる企業も増え、また、規制当局への提出書類において、DEIを「リスク要因」に挙げる企業もある。」

とのことであり、米国企業のこうした動きには日本企業もアンテナを高くして、情報取集することも大切ではないだろうか。

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