ウクライナ支援の目的に、日本による、G7基金への5,000億円について、国際法規上の整合性や日本へのインパクトについて国会でしっかり議論すべきではないか?

7月17日の読売新聞オンラインの「日本がウクライナ支援へ5000億円、ロシア凍結資産活用した基金に拠出へ…財政支援や復興に」の記事を読んで、先のG7で合意したロシア中央銀行の凍結した海外資産のインカム収入をG7によるウクライナ向け融資の返済原資に充当させる計画が日本でも具体化に向けて準備が進んでいる状況が把握できた。

この報道によると、「先進7か国(G7)が実施するロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援に向け、日本政府は新設される基金に5,000億円程度を拠出する検討に入った。

24日にもブラジルでG7の会議を開き、各国の拠出額を決める。」と伝えている。

また、「基金から融資される資金は、ウクライナの軍事面や財政面での支援、復興に充てられる。日本は国際協力機構(JICA)による円借款で対応する方向で、支出分が軍事面での支援に使われないようにする。」とも述べた。

国際法上、国家とその財産が外国の裁判管轄権に服さないという主権免責(国家免除)と言う制度がある中で、ロシアに対する経済・金融制裁の1つとして、ロシア中央銀行の海外資産が凍結されているいる訳で、これが主権免責規則に抵触しているのでないかと言う大きな懸念がある。

百歩譲って、ロシア中央銀行の海外資産はあくまで凍結されているだけであって、所有権は依然としてロシア中央銀行にあるので、資産凍結を違法であると主張するには無理があると言えるかもしれない。

しかし、今回のG7が採用したスキームは、凍結した資産、その多くはG7の発行する国債であると見られるが、国債の満期保有までの利払いを所有者の了解無く、ウクライナ向け融資の返済原資に充当させるとなると、前述の主権免責のルールに明らかに抵触しているのではないだろうか。

ロシア中銀の外貨準備高で西側が経済制裁の一環で凍結している資産は、約3,000億ドルあると言われていますが、この内、ユーロクリアで保管されている分が約2,000億ドル相当あるとされています。

日本もG7の1つとしてロシアに対して経済制裁を課しているが、その規模については、2022年2月28日の日経新聞の「日銀、ロシアの外貨準備を凍結 21年時点で4~5兆円」で、見出しにある通り、日本が凍結しているロシアの資産は主にロシア中央銀行の外貨準備であり、その規模は4兆~5兆円に達することが分かる。

これまで、ユーロクリアの中では、凍結された資産を利用することの法的・経済的影響について、金融セクターの間で進行中の懸念が浮き彫りになっている。

また、クリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行総裁は、金融システムの安定性や国家免責の原則に対する脅威を含め、潜在的な法的・経済的影響について懸念を表明している。

日銀もロシア中央銀行から預かる外貨準備を凍結している中で、読売新聞が報道するように、G7が実施するロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援に向け、日本政府は新設される基金に5,000億円程度を拠出する準備をしているのであれば、国会では、

①日本政府による資金の拠出が国内法上あるいは一般的に国家資産を差し押さえから守る主権免責の原則や国家管轄権行使に係る慣習国際法との整合しているのか否か、

②日本政府による資金の拠出が日本の金融市場の安心・安全に対してもたらすネガティブな影響、

③ロシアは国内裁判所と海外の裁判所の両方で、凍結されたロシア資産からのインカム収入をウクライナ向け融資の返済原資に使用されることに異議を唱える可能性が高いと考えるが、これにどのように対抗していくのか?、

④ロシア政府による報復措置として、ロシア国内にあるG7の民間の資産の没収も見込まれる中での対応策等について、しっかり議論して貰いたいと思う。

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