Daniel DavisのDeep Diveにマクレガー大佐が登場。この対談でダグラス・マクレガー大佐は、まず「NATOには大人がいない」として、西側の現状を手厳しく批判します。形式上NATOを率いているのはトランプ大統領であり、各国首脳やNATO高官が無責任な好戦的発言を繰り返す以上、その最終的な責任はトランプにある、と指摘します。脅し外交の本質として、脅しを連発すればどこかで実行を迫られ、信頼性維持のために「何かをやらざるを得ない」局面が来る。だが今、ロシアは軍事力のピークにあり、国家としても社会としても結束している。その状況で対ロ戦争を本気でやるのは「自殺行為」に等しく、ドローン攻撃や遠距離ミサイルといったスタント的挑発は極めて危険な遊びだと警告します。本来トランプは、「大口を叩くだけでなく、今すぐNATOに停止命令を出して戦争を終わらせるべき立場にある」と迫ります。
次にマクレガーは、プーチンの最新発言を丁寧に読み解きます。プーチンは、NATOとの戦争の可能性について言及しつつ、「特殊軍事作戦(SMO)」と「戦争」を明確に区別しています。ウクライナに対してはあくまでも限定的・外科手術的な軍事行動にとどめており、「本当の意味での戦争」ではない、と位置付けている。一方で「もし欧州が本気で戦争を始めるなら、ロシアはすぐに応じる用意がある。そうなれば交渉相手がいなくなるほどの決着になる」と警告しているとマクレガーは解説します。西側では「ロシアはこの18〜24か月でウクライナ領土の1%しか奪っていない、だから弱い」というプロパガンダが流布されているが、プーチンのメッセージは「ゆっくりやっているだけで、本気を出せば一撃で終わらせられる」という意味だと強調します。
マクレガーは、ロシアの戦略目標は最初から「領土獲得」ではなく「ウクライナ軍の壊滅」であったと説明します。2022〜23年にスロヴィキンが構築した防御線(いわゆる「スロヴィキン・ライン」)や、ヘルソンからの撤退もその文脈で理解すべきだとし、ドニエプル川沿いの戦線整理やザポロジエ方面での今後の前進はありうるが、それは「軍事的必要性」からであって、西ウクライナを統治する野心からではないと指摘します。特に西ウクライナの住民は、歴史的経緯からロシアだけでなくポーランドとも深く対立してきており、「モスクワでは『西ウクライナ人はポーランドにくれてやれ、あれは厄介者だ』という冗談がある」と紹介しつつ、ロシアはその地域を抱え込む気がないと強調します。その意味で、軍事的にはもはや「行き詰まり」ではなく、ウクライナ側の政権と軍事構造だけが延命のためにしがみついている状態だと見ています。
ウクライナ政権については、マクレガーは極めて辛辣です。現政権は「腐敗しきった犯罪ネットワーク」によって支配されており、戦争継続による資金流入を自分たちの延命装置として利用していると断じます。欧米からの支援金は、最終的にこのネットワークの内部で再分配され、いつでも国外に逃亡できるように、滑走路に並んだ飛行機に現金を積み込む準備までしているのだと皮肉を込めて描写します。欧州世論は、戦争の目的やウクライナの実態について最初から大きな嘘を聞かされてきたが、徐々に現実が浸透し始めており、とりわけドイツで政治・経済体制が崩れつつあると警鐘を鳴らします。
マクレガーは、戦争の背景にある「金融勢力」の影響も強調します。ニューヨークとロンドンの銀行・金融界が、ロシアを弱体化し、資源や資産を奪取する長年の戦略のもとで、この対立を煽ってきたと指摘します。その象徴的な人物としてビル・ブラウダーを名指しし、「ロシアに対する嘘を積み重ねるプロの一人」として紹介します。対露戦略はすでに失敗しているにもかかわらず、その失敗を認めず、プロパガンダを維持するために戦争を長引かせているのだと批判します。一方で、ペトレイアスやキーンら西側の著名軍事評論家・元軍人たちは、「あと少し支援を増やせば勝てる」といった幻想を繰り返し、これは「狂気であり、数百万の将来を犠牲にしている」と強く非難します。
トランプの和平案と、ウィトコフおよびクシュナーの役割についても、マクレガーは懐疑的です。プーチンは最近のインタビューで、「トランプとの交渉には前向きだが、ウクライナと欧州はその和平プロセスを妨害している。トランプ案にロシアが受け入れられない要求をわざと盛り込み、ロシア側の拒否を口実として責任転嫁しようとしている」と語ったと紹介します。マクレガー自身も、トランプの28項目和平案には元々「毒薬条項」が多く、実質的には「和平案とは呼べない」とし、クシュナーとウィトコフは「トランプに政治的勝利を演出するための使者」に過ぎず、ウクライナや欧州の現実的な和平とはほとんど関係がないと断じます。ロシア側は条件を一貫して示しており、それは変わっていないため、彼らが何か新しい譲歩を引き出せる可能性は低いと見ています。
欧州政治については、特にドイツの状況に焦点を当てます。マクレガーによれば、ドイツではナショナリスト右派の勢力が急伸しており、彼らは「ロシアとの関係正常化」「従来のビジネス関係への回帰」を公約に掲げているといいます。既存の指導者たちは支持率30%前後で低迷し、フランスのマクロンやドイツの首相、英国のスターマーらはみな「終わりが近い」。彼らは政治的な延命のために「絶えざる危機と脅威」を演出し、戦争を続ける必要があると分析します。もしゼレンスキーが失脚したり突然逃亡するなどして戦争が急に終われば、欧州指導者たちは一斉に信用を失い、そのキャリアは完全に終わるだろうと予測します。
NATO内部の小国指導者についても、マクレガーは容赦がありません。オランダ出身のルッテやノルウェー出身のストルテンベルグが、あたかも大国のようにロシアを非難し、脅威を誇張していることを「滑稽」と捉えます。第二次世界大戦の例を引き合いに出し、フランスに展開していた米軍63個師団に対して、イギリス(カナダ含む)は19個師団しかなかったにもかかわらず、なぜアイゼンハワーは英側の意見をあれほど重視したのか、ソ連側は理解に苦しんでいたと述べます。現代欧州でも、オランダやノルウェーが実際に動員できる兵力は微々たるものであり、本来なら米ロという当事者が交渉と安全保障の枠組みを決めるべきだと主張します。「誰かが彼らに『黙って座っていろ』と言うべきだが、それをやるべきトランプがやっていない」と批判を重ねます。
最後にマクレガーは、米国内世論とトランプの姿勢を結びつけて総括します。米国民の大多数はNATOにもウクライナにも関心が薄く、「NATOに軍隊が駐留している」と言っても、場所も理由も知らない人が多いと述べます。トランプはこの「アメリカ国内の無関心」をよく理解しているはずであり、本来ならスポンサーや欧州の小国ではなく、米国民の利益と米露関係の安定を最優先に戦争を止めるという決断が可能な立場にあると指摘します。しかし現実には、トランプは「光学的な演出(オプティクス)」にこだわり、クシュナーとウィトコフを利用して自分の見栄えを整えることに忙しく、本質的な決断を先送りにしているように見えると批判します。マクレガーにとって必要なのは、「誰が悪いか」をめぐる物語ではなく、トランプがNATOに対し明確に「止まれ」と命じ、無意味な流血と欧州の自傷行為を終わらせることであり、その責任と権限はまさにトランプの手の中にあるのだと強調して締めくくっています。
