Scott Ritter: War Has Been Won & Russia Faces a Dilemma

Glenn Diesen教授の番組にScott Ritterが登場。このインタビュー全体でリッターが一貫して主張しているのは、「戦争としてはすでにロシアの勝ちが確定しており、いまロシアが直面しているのは“どう勝つか/どう終わらせるか”という政治的ジレンマだ」という構図です。

彼は冒頭から、ウクライナというプロジェクトは軍事的にも経済的にも最初から持続不可能で、欧米の資金と武器で人工的に延命されていただけだと強調します。経済はすでに「かご一杯のガラクタ」のような状態で、実体のある経済活動は崩壊しており、電力インフラ破壊によって「発電機経済」に移行した結果、この冬には物価がさらに20〜25%上昇する見通しだと述べます。そんな中で政治システムも崩れ始め、ゼレンスキーの周囲の権力構造が次々と瓦解し、彼自身がどれだけ持ちこたえられるかも不透明だと指摘します。

政治的崩壊の象徴として、ゼレンスキーの右腕とされてきたイェルマークの失脚を取り上げ、これには「反腐敗機関」の動きが絡んでいると説明します。リッターは、ウクライナの腐敗は上から下まで全面的であり、米国もそれを知りつつ、戦場で「役に立つ限り」は容認し、ときに利用すらしてきたと語ります。議会が監査や説明責任を求める仕組みを拒み続けたこと自体、その腐敗の深刻さを示しているという見方です。そして、ウクライナの「反腐敗機関」すらも、実際には米国が影響力を行使するために作らせた道具であり、イェルマークだけでなくゼレンスキーの「音声証拠」まで握っているとされる点を強調します。腐敗が急に「問題」にされたのは、米国がそうすることを決めたからであり、交渉の駒としてウクライナ指導層をいつでも崩せる状態にしている、という見立てです。

軍事・外交の面では、ヨーロッパはもはや「機能不全」であり、エスカレーション能力も政治的意思もなく、ロシアを相手に現実的な軍事行動は取れないという評価です。対照的に、ロシアは「スコアボードを指さすだけ」でよく、日々戦場で成果を積み上げているため、制裁や圧力も実質的には無力だと描写します。欧州やウクライナが期待するような「ロシアを崩壊に追い込む和平」や、将来またウクライナを代理軍として再武装させるための“ミンスク3”のような合意は、ロシア側が根本原因の解決を重視している以上、受け入れられないと断言します。プーチンは当初から「紛争の根本原因が恒久的に解消されない限り戦争は終わらない」と言っており、将来の再戦のためにウクライナを残しておくような合意には応じない、というのがリッターの解釈です。

リッターは、黒海での「影の艦隊」攻撃を例に、戦争末期に近づくにつれて、英国が主導する“無意味で危険なスタント”が増えていると批判します。ウクライナ無人艇によるタンカー攻撃は実態として英海軍・情報機関が企画しており、攻撃された船舶の多くはロシア籍ではなくパナマ船籍・トルコ所有や、カザフ石油の輸送プラットフォームだったと指摘。トルコやカザフスタンのように、これまでウクライナ寄りだった国々からも非難を浴びており、外交的に自ら支持基盤を崩しているだけだと評します。英国は「薄い赤線を守れ」と勇ましく叫ぶが、実際に血を流すのはウクライナ人であり、戦争が終われば誰からも好かれず、使い捨てられる存在として放り出されるだろうと悲観的です。

その一方で、彼は「本当にウクライナを救う意志があるのはロシアだけだ」と逆説的な主張を展開します。ゼレンスキー元顧問アレクセイ・アレストビッチの「ウクライナのために実際に戦い死ぬ覚悟があるのはロシア人とベラルーシ人のみ」という発言を引用し、戦争後にウクライナは西側から見捨てられるが、再建や経済統合、人的交流を通じて真に手を差し伸べるのはロシアになると予測します。ただし西ウクライナの極端な民族主義勢力(バンデラ派)は別で、彼らは排除・封じ込めの対象になると示唆します。最終的にウクライナが生き残る道は、ロシア・ベラルーシのような連合国家体制への実質的な編入か、完全な敗北と解体かという厳しい二択になるという見方です。

アメリカの役割については、現トランプ政権は伝統的な地政学よりも「巨大ビジネスディール」としてこの戦争終結を見ていると描写します。ヨーロッパはほとんど無視され、ルビオら“伝統派”は周辺に追いやられ、ウォロフやジャレッドがモスクワとビジネス交渉を進めている構図を示唆します。リッターは「アメリカは、ウクライナがロシアに吸収されたとしても、ロシアとのビジネスを通じて間接的にウクライナ資源の果実を得ればよい」と考えている可能性を指摘し、その意味で最終的な決着は「誰がウクライナの資源を管理し、誰が利益を分け合うか」という巨大な商取引になると見ています。ただし、米国内には強烈な政治的反対や中間選挙もあり、トランプがこのディールを最後までやり切れるかは不透明だとも述べます。

欧州とNATOの将来については、今回の戦争が「ポスト冷戦の汎欧州安全保障アーキテクチャの崩壊」を露わにしたと評価します。NATOの目的だった「アメリカを欧州にとどめ、ドイツを抑え、ロシアを締め出す」という構図が破綻し、実際にはアメリカの関与は縮小し、ロシアは無視できない大国として戻ってきていると分析します。彼は、もし欧州が本気でNATOと自国の安全保障を救いたいなら、ロシアが2021年12月17日に提出した安全保障条約案(NATO非拡大とインフラ撤退を含む)を棚から取り出し、米国を巻き込みつつロシアと新しい欧州安全保障枠組みを協議すべきだと提案します。ポーランドやバルト諸国はNATOに残るが、その領土がロシアへの攻撃拠点として使われないよう、1997年以前のレベルまで軍事インフラを後退させる——これがNATO維持とロシアの安全保障懸念の両立の唯一の現実的解だという立場です。

軍事的な純粋な見通しに関しては、ザポロジエ前線の崩壊や防衛線の陥落により、理論的にはロシアはヘルソン右岸やニコラエフを経由してオデッサに到達することも可能で、軍事的にはほとんど阻止不能だと認めます。ただし、プーチンは「殺気立った征服者」として振る舞うことを避けており、オデッサまで占領しても国際的承認が得られず、クリミアや占領地域の承認・制裁解除も遠のくのであれば、戦略的には得策ではないとリッターは読みます。ロシアにとってベストなのは、2014年以降の併合地域(4州+クリミア)のロシア領としての承認を勝ち取り、対露制裁をクリミア関連も含めて解除し、世界経済への正常な再統合を果たすことだと強調します。BRICSメンバーとしてのロシアが長期にわたる経済戦争状態に置かれるのは、BRICS全体にとっても望ましくないという視点も示します。

そのため、リッターは「ロシアは軍事的にはすでに勝っており、今は“どこまで軍事的勝利を追求するか”と“どこで政治的に手を打つか”の微妙なバランスを探っている」とまとめます。過剰な領土拡大は動員増・経済負荷・国際的孤立を招く一方、ほどほどの軍事成果で手を止めて政治的合意を通じてウクライナを“実質ロシア圏”として組み込めば、占領コストなしでウクライナ全体をロシアの経済・政治・文化圏に取り込める可能性がある——これが彼の見る「ロシアの戦略的ジレンマ」です。そしてロシア国内では、単なる領土争奪ではなく、ウクライナをどのような政治体制・倫理的枠組みの中で再統合し、長期の安定を作るかについて、かなり高度な哲学的・戦略的議論が行われているのに、西側はそれを理解しようとせず「領土争い」に矮小化している、と批判してインタビューは締めくくられます。

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