Bizarre negotiations and intel back channels

このThe DuranのYouTube動画では、フロリダ(マイアミ)で行われた米ウクライナ交渉と、それに絡む諜報・裏交渉の構図を、司会者とアレクサンダー・メルクーリスがかなり詳細かつ批判的に分析しています。表向きは、米側のルビオ国務長官、ウィコフ、クシュナーが、ウクライナ側の新任首席交渉官ウメロフらと約2時間協議したという形ですが、初期報道によれば、ウクライナはNATO中立化、軍縮、前線からの撤退といった核心条件をほぼ全面的に拒否し、現前線に沿った停戦のみを要求したとされています。両者は、ルビオが「建設的だが困難」とコメントした点に注目し、「外交用語で“困難”は実質的には何も合意されていないという意味だ」と解説します。

ウクライナ側の交渉団の構成も、動画の大きな論点です。首席のウメロフは国家安全保障・国防会議のトップで、元国防相、ゼレンスキーの側近であり、クリミア・タタール系の強硬派と説明されます。しかも彼自身、ヤルマクと同様に汚職捜査のターゲットになっているとされ、その弱みからゼレンスキーへの忠誠を強め、領土やNATOといった核心事項では一切妥協する気配がないと彼らは見ています。さらに交渉団は外務官僚ではなく、ブダノフ軍情報局長とその副官を含む諜報機関の幹部たちで占められており、「通常の外交交渉とは異なる、奇妙なインテリジェンス主導のチームだ」と評されています。米側はルビオ、ウィコフ、クシュナーの三人で臨みましたが、特にウィコフの表情からは深いフラストレーションが読み取れると指摘されます。

両者は、この交渉全体を「カブキ劇」「シミュレーションとしての外交」として批判します。彼らの見立てでは、ウクライナは2014年のマイダン政変以降、実質的な主権を失い、米国の全面的な軍事・財政・情報支援なしには存立できない状態にある以上、ワシントンが本気になればウクライナに譲歩を強制することは可能だという前提に立っています。それにもかかわらず、トランプ政権がわざわざウクライナや欧州諸国との協議プロセスを演出するのは、ワシントン内部、特に上院のグラム―マコネル連合やネオコン、官僚機構(いわゆるディープステート)からの強い抵抗をかわすためだと解釈します。つまり、「ウクライナ自身が同意した」と見せなければ、自国の批判勢力を説得できないという国内政治上の事情が、こうした茶番的手順を生んでいるという説明です。

動画の中盤では、ブダノフ軍情報局長の曖昧な立場が詳しく取り上げられます。交渉団編成当初、ブダノフが代表団を率いるという話も流れていたのに、最終的にはウメロフがトップに座り、ブダノフは名目上メンバーに入ったものの、マイアミでの記念写真や映像には映っていないと指摘されます。二人は、彼が実質的に「外され」「脇に追いやられた」可能性が高いとみています。同時に、ブダノフはアブダビでロシアFSB高官との極秘会談を行っていたことが報じられており、そこではロシア国内での暗殺やドローン攻撃、タンカー攻撃など「ダーティー・ウォー」のエスカレーションと、その“ガードレール”が議題だったのではないかと推測します。ロシア側は彼を法的にテロリスト認定しているにもかかわらず、その本人と裏チャネルを持ったことは、対ロ世論への説明が難しいほど「醜い構図」だとメルクーリスは評します。

このブダノフを巡る構図を踏まえ、彼らはさらに踏み込んだ推測を展開します。ウクライナ国内では、ヤルマク陣営が何度もブダノフ排除を試みたものの失敗してきたのは、米情報機関が彼を守ってきたからだと広く信じられていると説明しつつ、アブダビ会談でブダノフが米陸軍長官ドリスコルを場に持ち込み、ロシア側の裏チャネルの存在を半ば暴露する形になったことに触れます。そのうえで、マイアミではウメロフ=ゼレンスキー陣営がブダノフを交渉表舞台から外す一方、米側は彼をフロリダには同行させたうえで、別ルートでCIAなど三文字機関やドリスコルと会わせ、ゼレンスキー―ヤルマクラインを迂回する別の交渉軸を模索している可能性がある、と推測を述べます。これはあくまでコメント側の憶測ですが、「ワシントンがキエフ内部の権力構図をも動かそうとしている兆し」として描かれます。

また、彼らは「ダーティー・ウォー」そのものにも言及します。ウクライナがロシア国内の戦略爆撃機基地や石油タンカー(第三国籍を含む)をドローンで攻撃していること、それがカザフスタンやトルコのエルドアン大統領の怒りを買っていると伝えられていること、そしてロシア側もキエフでウクライナ治安機関幹部を暗殺したとされる報復を行っていることに触れます。さらに、極右政治家パルービの暗殺疑惑なども含め、双方がエスカレートする汚い戦争を続けているため、その「線引き」や相互抑制を協議する必要から、FSBとブダノフのような裏会談が行われるのではないかと論じ、「ゴッドファーザーさながらの世界だ」と皮肉ります。

ロシア側の正式な交渉姿勢についても、後半で詳しく取り上げられます。国会報告を行ったヤブロフ(ヤブコフ等の表記の可能性あり)が、「ロシアはこれ以上の譲歩をする立場にない。イスタンブール+ですらロシアにとって大きな譲歩だった」と述べたこと、プーチンがビシュケクでの会見で、ウクライナがドンバスとザポロジエ、ヘルソン全域などロシアが「占領地」とみなす地域から撤退しない限り停戦はあり得ないと示唆したことが引用されます。また、いわゆる28項目案や19項目案、22項目案などは、単なる「トーキング・ポイント」であり、署名可能な「草案」や「合意文書」ではないとプーチンが明言した点も強調されます。ロシア側は、正式交渉に入るには外務省(ラブロフ)が指揮する大規模な専門交渉団を組成し、イスタンブールやブダペストなど第三国で本格的な協議を重ねる必要があると考えており、今回のマイアミ会合やウィコフのモスクワ訪問で何かを「即決」する気は全くないというメッセージを発していると解説されます。

そのうえで、ウィコフとクシュナーのモスクワ行きの意味が議論されます。マイアミでウクライナ側はNATO中立化も領土問題も一切譲っておらず、戦況はウクライナにとって壊滅的に悪化しているにもかかわらず、米側は具体的な「合意済みのパッケージ」を携えてモスクワに向かうわけではない、と二人はみています。最も楽観的に解釈すると、「ウクライナや欧州の反対はあるが、それでも米露間で正式な交渉団を立ち上げ、本格協議を始めよう」という提案を伝えに行く可能性はある、と一応認めますが、現実には国務省、上院、民主党主流派などの強い反対もあり、トランプ周辺自身も戦略的意味を理解していないように見えるので、その見込みは薄いとかなり悲観的です。全体として、「カクテルナプキンに書いたような即興外交」「本当の交渉ではなく、それらしく見せるためのシミュレーション」にとどまっていると手厳しく評価します。

最後に、彼らは「劇場型」の側面が米側だけでなくロシア側にもあることを指摘します。ロシアは、実際には米国が戦争の主役であり、武器供与・情報・指揮統制・“影のタンカー戦争”などの背後にいるとよく理解しているにもかかわらず、あえて英国やEU、ゼレンスキー政権を“主たる戦犯・妨害者”として非難し、米国を「中立的な仲介者」「誠実なブローカー」として扱う枠組みを作っていると二人は見ています。その狙いは、最終的に米国自身をテーブルにつかせ、ウクライナだけでなく欧州の安全保障、軍備管理、経済関係も含めた大枠の合意を模索することにあるのではないかという見方です。ただし、彼らは「ロシアが念頭に置いているのは、もはや存在しない“過去のアメリカ”かもしれない」とも付け加え、現在のワシントンがベトナムやアフガン終戦時のような現実的な大国間交渉に踏み切れるかどうかについては、強い疑念を示して動画を締めくくっています。

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