中国は、新トランプ政権の関税引き上げにどのように対抗するのか?

トランプ次期大統領は、就任初日に中国からの輸入品に対して10%の追加関税を課すと表明した。

この追加関税は、既存の全ての課税に加えて適用されるとしている。

では、現在の、米国に於ける中国製品の関税をPerplexityで調べてみると、以下のようなになっていることが分かった。

関税引き上げ( 2024 9 27 日より適用分)

  • 電気自動車: 100%25%から引き上げ)

  • 太陽電池およびモジュール リチウムイオン電気自動車用電池:25%(7.5%から引き上げ)

  • 電池部品(非リチウムイオン):25%(7.5%から引き上げ)

  • 鉄鋼・アルミニウム製品: 25% (0% または 7.5% から引き上げ)

  • 重要鉱物:25% (新関税)

  • 船舶用ガントリークレーン:25% (新関税)

  • 外科用および非外科用呼吸器およびフェイスマスク:25% (7.5% から引き上げ)

  • 注射器および注射針:100% (新関税、経腸用注射器を除く)

今後の関税変更

  • 半導体:50%(2025 1 1 日発効)

  • 医療用ゴム手袋および手術用ゴム手袋:50%202511日から適用、2026年に100%に引き上げ)

  • 使い捨て繊維製フェイスマスク:25%(202511日発効)

  • 外科用・非外科用呼吸器とフェイスマスク: 2026年には50%にさらに増加

 
 
 
 
 

改めて、バイデン政権の下で、20249月から中国製品に対して関税引き上げが実施されており、来年1月から製品によっては更に厳しい関税が課せられる予定であることが分かった。

それでは、トランプ次期大統領の追加関税政策も踏まえて、中国政府及び企業はどのような対応して来るだろうか?

関税の影響を相殺する一つの潜在的な戦略は通貨切り下げである。

人民元を対ドルで下落させることで、中国の輸出品を国際的な買い手にとってより手頃な価格にすることは可能である。

実際、この戦術は2018年と2019年に、トランプ大統領の第1期関税措置に対抗するために中国政府によって導入された経緯がある。

直近のブルームバーグの記事を見ると、JPモルガン・チェースは、ドナルド・トランプ氏が米国大統領の2期目に貿易政策を転換し、中国製品への関税を大幅に引き上げる可能性があるとし、その場合、人民元は最大15%切り下がる可能性があると予測している。

しかし、通貨切り下げには、潜在的な資本逃避や消費者信頼感の低下などのリスクが伴うことにも注意する必要がある。

次に考えられる戦略は、サプライチェーンの再編である。

中国企業は、米国の関税を回避するためにサプライチェーンを再編して来た歴史がある。

多くの中国企業は、特に東南アジア諸国やメキシコに海外製造施設を設立しており、この「チャイナ・プラス・ワン」戦略により、企業は中国から調達した部品を米国やその他の市場で販売する完成品に組み立てることができ、多くの場合、関税を回避することができると言われている。

しかし、122日のロイターの「米、東南アジア4カ国からの太陽光パネルに反ダンピング関税の仮決定」の記事を見ると、「国内メーカーの団体、米国太陽光発電製造貿易委員会が、マレーシアとカンボジア、ベトナム、タイの工場で中国の大手太陽光パネルメーカーが生産した製品がダンピングを通じて国際的な価格を暴落させる原因になっているとの申し立てを行っていた。」として、「米商務省は1129日、東南アジア4カ国から輸入される太陽光パネルに新たな反ダンピング(不当廉売)関税を課す仮決定をしたと発表した。」と報じており、この「チャイナ・プラス・ワン」戦略もイタチの追いかけっこであり、必ずしも抜本的な解決方法であるとも言えない面もある。

トランプ次期大統領は、米国大統領選挙前にブルームバーグとのインタビューに応じて、前述の関税強化政策についても持論を述べているが、米国の産業の更なる空洞化を懸念した上での関税強化政策であることを強調し、米国への輸出の一部は、海外企業による米国での生産拠点の開設を選択するところも出て来ること期待するとも述べていた。

即効性はないかもしれないが、中国企業にとっても本質的な問題解決方法であり、米国での競争力のある製造コストの実現などチャレンジはあるが、トライするところは出て来るだろう。

最後に、中国は関税のために対米輸出が減少する見込みであるが、他の国際市場への輸出を増やすことでこの損失を部分的に相殺することは勿論可能である。

中国の一帯一路構想諸国への輸出は拡大しており、現在では欧州と米国への輸出を上回っていると言われている。

更に、ウクライ戦争によるロシアへの経済制裁で、逆に結束が強まったBRICSでは中国もロシアと並びBRICSの中心メンバー国であり、経済成長が今後見込まれるグローバル・サウスでの中国企業の事業拡大が今後見込まれる中で、BRICS諸国への輸出強化は重要な戦略となって来るだろう。

いずれにせよ、中国のこうした一連の対応策は規模が大きいことから、日本経済や日本の金融市場にもそれ相当の影響をもたらすと理解しておくことが日本政府や企業にとって重要であり、日銀の金融政策にも影響を与えることになろう。

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