マーレシア首相は、ロシアとの関係を断つよう求めた米国の要請を断る

今から約1か月前に米国のブリンケン長官は、バイデン大統領に代わって、ラオスのビエンチャンで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に参加していた。

10月10日のVoice of Americaの

“Blinken builds ties with Thailand, Malaysia after turbulence”

という記事では、

「木曜日、アントニー・ブリンケン米国務長官は、アジア・サミットでタイとマレーシアの首相と会談し、最近の混乱後のタイとマレーシアとの協力に期待を表明した。

中東危機に関する徹底的な外交の後、ブリンケン氏はラオスで開催される東アジア・サミットに米国を代表して出席する。」

と報じていた。

 
 
 

同記事では、マレーシア首相との会談にも触れ、

「紺色の伝統的なラオスの上着を着たブリンケン氏は、その後、米国のイスラエル支援を声高に批判してきたマレーシアのアンワル・イブラヒム首相と個別に会談した。

記者団が見守る中、両者とも中東については触れず、その代わりに、ブリンケン氏は、米国がマレーシアへの外国投資でトップであることに触れ、“これは、信頼と信用の両方を示す、とてつもないサインだと思います。”」

と伝えた。

更に、同記事では、

「米政府関係者は内々に、イスラム教徒が大多数を占めるこの国の政治的圧力を理解し、アンワル氏が投獄された際にワシントンから強い擁護を受けたアンワル氏との協力関係を求めていると語っている。」

とも報じている。

このVoice of Americaの記事だけを読むと、ASEAN首脳会議の両国の首脳会談が順調に行われたかのような印象を受けるが、11月1日のFMT Reportersの

“Anwar: I rejected US call not to be friendly with Russia”

と言う記事の中で、アンワル首相は今日、クアラルンプールの国防大学(UPNM)での学生との会合で、

「アンワル氏は、先月ラオスで開催されたアセアン・サミットで、アントニー・ブリンケン国務長官と会談した際に、アメリカへの返答を行ったと述べた。

中東紛争と投資機会について1時間議論したという。アンワル氏、米国の外交官トップからロシアとの友好関係をやめるようにとの要請を拒否したことを明らかにした。」

と報じ、

「私はこう答えた。私たちは独立した主権国家であり、国民と国家のために決断を下すのです。」

とブリンケン氏に応対したことを伝えた。

日本の総理大臣でアンワル首相のように、強いハートを持った総理大臣はかつていたであろうか。

実は、アンワル首相は、ASEAN首脳会議の前に、9月4日にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでプーチン大統領と会談しており、これはアンワル首相にとってマレーシア首相として初めてのロシア訪問とであった。

更に、RTの同記事では、

「サンドゥ大統領は、ロシアが選挙に介入し、不特定の“犯罪グループ”が票を“購入”しようとしていると非難している。

サンドゥの国家安全保障顧問であるスタニスラフ・セクリエウは、モルドバの法律では違法とされる“組織的な有権者の投票所への輸送”を監視員が指摘したとXに記した。」

と報じたが、

「ロシアは、外国からの干渉のすべての主張を根拠がないとして退けている。」

と言うロシア政府の主張も併せて伝えている。

この会談の様子については、9月5日のBloombergの

“Malaysia PM Praises Putin, Pledges to Deepen Russia Ties”

と言う記事や9月4日のBenar Newsの

“Malaysian PM meets Putin in Russia to expand collaboration despite US sanctions”

でも取り上げられており、以下のような主要分野に焦点を当てて両首脳の会談は行われた。

経済協力

  • 両首脳は、半導体および関連分野を中心に、二国間貿易関係の強化について協議した。

 

 

様々な分野での協力

  • 会談では、航空宇宙、先端技術、農業、食料安全保障における提携の可能性について話し合われた。

ASEAN関係

  • プーチン大統領は、特にマレーシアが2025年にASEAN議長国を引き継ぐことを受けて、ロシアと東南アジアおよびASEANとの関係を発展させることに関心を示した。

BRICSへの参加

  • プーチン大統領は、2024年10月にロシアのカザンで予定されているBRICS首脳会議にマレーシアが参加するよう個人的に招待した。

二国間貿易

  • 両首脳は、約35億米ドルに上る二国間貿易の成長の可能性を認めた。

この両首脳の会談では、アンワル首相は、プーチン大統領のリーダーシップとロシアの発展を賞賛し、ロシアの経験から学びたいと表明し、同首相は自国の非同盟外交政策を強調し、すべての国と関わりを持ちたいと希望したと言われており、アンワル首相は、今回の会談を“深く、幅広く、生産的なものだった”と評していた。

今回の訪問は、マレーシアがBRICSグループに加わる可能性があることへの重要な一歩と見なされた。

それでは、先月開催された、BRICSサミットに、アンワル首相は出席したかとどうか調べたところ、実際には出席していないことが分かった。

代わりに、経済担当大臣のRafizi Ramli氏が同サミットには参加したようだ。

このBRICSに関しては、マレーシアはBRICSに加盟するための申請書類をロシアに提出した上で、BRICSサミットでは、正式なBRICS加盟国になるまでの間、他の12か国と一緒にBRICSパートナー国として公式に認められた。

マレーシアのアンワル首相は非同盟外交政策を強調し、すべての国と関わりを持ちたいと希望を兼ねてから持っており、また、BRICSの将来性について高く評価していることもあり、ブリンケン国務長官からのロシアとの外交・通商関係を断つような要請は、あまりに一方的で米国の利害によってなされているものであり、主権国家として到底受け入れるものではなかったと言えよう。

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