第16回BRICS Summitを終えて

BRICS組織委員会は、3日間の会議の一部にアジア、アフリカ、中東、ラテンアメリカから36か国の代表が出席したと発表し、この36か国のうち、22か国は国家元首によって代表された。

また、国連やNew Development Bankを含む国際機関の代表も出席し、国連からは事務総長のアントニオ・グテーレス氏がサミットに参加した。

サミットには、BRICS加盟国と、経済圏との関係強化に関心のある国々の両方が参加し、BRICSアウトリーチ/プラス形式と呼ばれていた。

 
 
 

ロシアのウクライナ侵攻以来、ロシアは西側から経済制裁を受け、西側及び西側のメインストリーム・メディアは、ロシアのプーチン大統領が外交面で孤立化が進んでいると指摘・報道して来たこともあり、今回のBRICS Summitはプーチン大統領が主催した最大の国際会議と評されたことは注目に値する。

しかしながら、同サミットの規模や後述する経済・外交面への影響力を考慮すると、西側メディアのカバレッジは相当程度低いものであったと言える。

これは昨今のメインストリーム・メディアがグローバリストあるいは左翼・リベラル政権のプロパガンダ役を担っていることを考えると、プーチン大統領の外交面での活躍やBRICSの台頭を積極的に取り扱わない方針が反映されているものと思われる。

さて、今回のサミットの成果の1つは、BRICSの加盟国が拡大したことである。

サミットでは、新たにエジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が加盟した。この拡大によりBRICSの世界的な影響力が増し、現在では世界人口の約41%、世界GDPの24%を占めるまでになった。

次に経済発展に関しては幾つか注目すべき点があり、その1つは自国通貨の使用の推進である。

加盟国間の貿易における自国通貨使用の拡大に主眼が置かれ、このイニシアチブは、米ドルへの依存を減らし、域内の経済的安定を促進することを目的としている。

この関連で、BRICS間の資金決済系の発表も下記のように幾つかあった。

BRICSペイ

モスクワで開催されたBRICSビジネス・フォーラムでは、来場者に500ルーブル(20ドル相当)のBRICSペイ・カードが配布され、このサービスは2024年末までにロシアで開始される予定で、ロシア国内ではマスターカードとビザカードによる決済が可能になり、2025年には他の国にも拡大される予定である。

BRICSブリッジ

伝統的な銀行組織に取って代わり、金融メッセージの伝達を容易にすることを目的に開発中の統一決済システムで、デジタル金融資産の統合を考慮し、革新的なフォーマットとアプローチを用いるよう設計されている。

BRICSクリア

カザン宣言は、BRICSクリア決済・預託インフラストラクチャーの展開を発表した。

BRICSクリアは、BRICS諸国の統一的な預託・清算システムとなるよう設計されており、ユーロクリアやクリア・ストリームのような欧米のシステムに代わるものとして、国境を越えた証券取引のシームレスな確保を目指している。

BRICSクリアは、ブロック・チェーン等の分散型台帳関連技術に基づいて運営される見込みである。

また、制度的発展に関しては、カザン宣言は、主に経済分野において、BRICSの制度的発展をさらに推進する計画を強調した。

これには、New Development Bankの役割強化や、欧米主導の既存の金融システムに代わる制度の模索などが含まれた。

最後に、BRICS穀物取引所の設立に関しても少し触れておきたい。

同サミットでは、農産物貿易の改善を通じて食料安全保障を強化することや西側主導の穀物価格形成システムへの代替手段の提供することを目的としたBRICS穀物取引所の設立を歓迎した。

このイニシアティブは、BRICSは世界の穀物生産の約44%、消費の44%を占める規模や、取引額が将来的には1兆ドルを超える可能性もあることから考えると、BRICSにとって重要であると言える。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール