何故、トランプ前大統領は、勝算の無いNew York州でラリーを開催するのか?

11月の米国の大統領選挙まで残すところ30日を切って来た中で、トランプ前大統領は投票日の9日前となる10月27日に、何故か、ニューヨーク市のマンハッタンにある、マディソン・スクエア・ガーデンで集会を開催する予定であることが発表されている。

同会場は、イベントの設定にもよるが、約19,500人を収容できるとされている。

 
 
 

実は、トランプ前大統領は、2024年9月18日に、ロング・アイルランドのユニオンデールのナッソー・コロシアムで集会を開催している。

FOX5の9月18日の

“Trump holds rally on Long Island; 1st since 2nd assassination attempt”

の記事によると、

「共和党関係者によると、チケットの申し込みは6万件ほどあったが、会場に入れたのはその4分の1にすぎず、入れなかった人たちはユニオンデールの会場の外にある巨大モニターで観戦しているという。」

と報じている。

更に、今年の5月にも、ブロンクスのクロトナ・パークで集会を開いていることも分かった。

ニューヨーク州と言えば、民主党が非常に岩盤の支持基盤を持っていることでも有名だが、にも拘わらず、何故トランプ前大統領は、集会をこれまでニューヨーク州で開催し、投票日の9日前にもマディソン・スクエア・ガーデンで集会を開催するのであろうか。

ここで、トランプ前大統領が大統領選挙に参加した2016年と2020年を振り返ることとしよう。

  • 2016年の大統領選挙では、ニューヨーク州では、ヒラリー・クリントン候補が勝利した。

    クリントン候補は約450万票(59.0%)を獲得し、トランプ候補は約280万票(36.5%)を獲得し、クリントン氏がニューヨーク州で約170万票の差をつけて勝利した。


  • 一方、2020年の大統領選挙では、ジョー・バイデン候補が勝利した。

    バイデン候補は約510万票(60.9%)を獲得し、トランプ候補は約320万票(37.7%)を獲得した。

    バイデン氏がニューヨーク州で約190万票の差をつけて勝利した。

このように、両年とも民主党候補がニューヨーク州で大差をつけて勝利しており、ニューヨーク州が民主党の強固な地盤であることが示されている。

実際、ニューヨーク州は1988年以降9回連続で民主党候補が勝利しており、最後に共和党候補が勝利したのは1984年のレーガン大統領である。

米国の大統領選挙の仕組みを考えると、民主党が強い州、共和党が強い州は比較的決まっているので、選挙の終盤は、選挙によって結果が変わるスイング・ステイトを中心に選挙の為の集会を開催することになる。

実際、トランプ前大統領も過去2回の大統領選挙では、ニューヨーク州では集会を開催していないようだ。

ニューヨークは伝統的に民主党が強い州であり、最近の選挙で共和党の大統領候補が勝利したことはない中で、2024年の大統領選挙では何故、ラリーを行うのだろうか?

赤字企業であることや、トランプ前大統領の色が濃く出ていることもあり、前述の同社のTMTGのプレス・リリースを注意深く読むと、成長に必要な資金をデットで調達することが困難であると予想される中で、TMTGは、今後3年間のTMTGの事業拡大に必要な資金を調達するため、長期エクイティ・ファイナンスの手配を完了したとして、以下のような開示もしていたことが分かった。

考えられる理由の一つは、トランプ前大統領がニューヨーク州でラリーを開催することで、下院議員の選挙戦の支援を行うことが出来ると言える。

米国の議会政治をよく見ると、大統領選挙で勝利することは最重要アジェンダであるけれども、トランプ前大統領が仮に政権にカムバックを果たしても、上院、下院、特に下院で過半数を確保しないとトランプ前大統領が望む政策を推進することは困難であり、トランプ前大統領も2025年以降の政権運営を考えると、下院議員の過半数確保を全力で支援する必要がある。

この当たりの事情については、9月18日のPoliticoの

“Trump’s pitch to New York: ‘What the hell do you have to lose?’”

の記事では、南部国境を越えた違法難民多数押し寄せた結果、犯罪が急増したニューヨーク市に関して、

「ニューヨーク首都圏ほど犯罪が選挙戦の争点になっている地域はない。バイデンに投票した後、共和党に大きく傾いたロングアイランドの選挙区(集会が開かれたアンソニー・デスポジート議員のロングアイランド西部を含む)は、今や民主党の最重要ターゲットであり、両党とも下院制圧のカギを握っていると見ている。」

と報じている。更に、同記事では、

「デスポジートとロングアイランド選出のニック・ラロタは水曜日の集会で演説し、不祥事を起こしたジョージ・サントス元議員の後任として今年初めに行われた特別選挙で勝利したマイク・リペトリも、民主党のトム・スオッツィ議員から第3選挙区を奪還することを望んでいる。
(デスポジートとラロタの民主党の対立候補は、議会が政府の資金繰りに頭を悩ませている中、投票をサボっていると批判した)」

と下院選挙に状況について、述べている。

但し、これだけの理由で、投票日の9日前にニューヨーク市のマンハッタンにある、トランプ氏は、マディソン・スクエア・ガーデンで集会を開催するであろうか?

10月9日のNew York Timesの

“Trump Plans Rally at Madison Square Garden”

の記事では、

「トランプ氏は、ニューヨーク州が赤に振れる可能性を示す世論調査はほとんどないにもかかわらず、今回の選挙はニューヨークが勝負どころだと繰り返し主張している。」

と報じている。

更に、

「スクラントンでの演説の中で、トランプ氏はニュージャージーとアトランタのアリーナでの集会を希望しているとも語ったが、これはニュージャージー州ニューアークのプルデンシャル・センターとアトランタのステート・ファーム・アリーナを指していると思われる。」

と言う推測も紹介しており、スイング・ステイトでしかラリーを行っていない、カマラ・ハリス副大統領の選挙キャンペーンとは対照的だ。

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