イランのイスラエルに対するミサイル攻撃は、いかに、イスラエルの防空システムをかいくぐることが出来たのか?

10月2日のロイターの

“イランが弾道ミサイル攻撃、180発超イスラエルは報復示唆”

の記事では、

「イランは1日、イスラエルに向けて弾道ミサイルを発射したと発表した。レバノンの親イラン派武装組織ヒズボラに対する軍事行動への報復攻撃という。イスラエル側は180発を超えるミサイル攻撃を受け、防空システムで迎撃を行ったと発表した。」

と報じた。

 
 
 
 
 

このミサイル攻撃による被害については、イランとイスラエルでは発表内容に大きな差がある。

10月2日のThe Times of Israeの

“IDF acknowledges some Iranian missiles hit airbases, says no major damage caused”

の記事では、この被害の様子を

「イスラエル軍は2日、イランによる大規模な弾道ミサイル攻撃で、空軍基地の一部が被弾したことを認めたが、イスラエル空軍の機能には被害がなかったことを強調した。 軍によれば、ミサイルの着弾により、基地内のオフィスビルやその他のメンテナンスエリアが被害を受けたという。」

と報じ、

「空軍の継続的な作戦に被害がなく、戦闘機、無人機、その他の航空機、軍需品、重要なインフラに被害はなかった」

と述べている。

また、10月2日のSputnik Japanの

“米英仏がイスラエルへのミサイル攻撃を迎撃、「我々は様々な脅威に対抗できる」=米国防総省”

と言う記事では、

「イランがイスラエルに発射したミサイルの迎撃作戦には米国のミサイル駆逐艦「バルクリー」と「コール」が参加した。」

と言う米国防総省のライダー報道官の発言を紹介している。

また、同報道官が

「また、米国務省のミラー報道官は同盟国に対し、イスラエル防衛作戦に参加したことを公言しても構わないと発言した。」ことを報じ、「これを受け、英国とフランスが作戦参加を公けに認めた。」

ことも併せて、記事の中で伝えた。

それでは、イラン側は今回の攻撃の戦果をどのように発表しているのだろうか?

10月2日の

“イランによるイスラエルへの報復攻撃まとめ”

では、イラン当局、主要メディアの報道を紹介する形で以下のように報じている。

  • イスラエルに180発の弾道ミサイルを発射(ただし、エルサレム・ポスト紙はミサイル400発と報じる)。

  • 攻撃の第一波で発射したミサイルの8割が標的に命中(イラン国営通信Fars)。

  • イスラエルによる「占領地域」の重要な軍事施設(空軍基地、防衛システム)のみを破壊(イスラム革命防衛隊)。

  • イスラエル南部アシュケロンのエネルギー施設を破壊(イラン国営通信Tasnim)

  • イスラエル南部ネバティム空軍基地を破壊(イラン国営通信Tasnim)

  • F35戦闘機を20機以上破壊(イラン・メディア、なおイスラエル軍は報道内容を否定)

  • 攻撃にあたって米国には事前通告を行わなかった(イラン国連大使)。

中東地域が軍事的に大きく緊張している状況下では、両国とも、ポジション・トークの含めて、正確な被害状況、戦果については語らないが、各種メディアやSNS上では、イランの弾道ミサイルがイスラエルでそれなりの数が着弾している様子も映っており、世界で最強と言われていた、イスラエルの防空システムが、今回のイランによる攻撃では、必ずしも期待されたように機能していないのではないかと言う疑問が幾つか報じられている。

10月1日のJudging Freedom

“Scott Ritter : IRAN HITS ISRAEL”

のYouTube番組の中で、元国際連合大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官のScott Ritterは、以下のようなポイントを挙げている。

  • イランのミサイルがイスラエルの重要な軍事インフラ、特にベエルシェバ近郊のネバティム空軍基地を標的にしました。

    この基地は、イスラエル空軍のF-35戦闘機やその他の重要な資産を擁するイスラエルの防空および攻撃作戦の中心であり、ネタニヤフ首相の航空機もここに配備されています。


  • 攻撃の規模と標的: イランは大量のミサイルを発射し、その多くが目標に到達したとされていますが、すべてが意図した標的に命中したかどうかは不明です。

    これらのミサイルの大部分はネバティム空軍基地を狙っていました。

    特に、イランは最新型の極超音速ミサイルであるFattah-2を使用し、イスラエルの防空システムを圧倒しました。


  • イランの軍事戦略:イランは「飽和攻撃」を採用し、大量のミサイルを発射してイスラエルの防空システムの能力を超える攻撃を行いました。

    イランはすでに発射装置を再装填し、必要に応じてさらに攻撃を続ける準備が整っている。


  • イスラエルと米国の防衛の無力さ: イスラエルの防空システム(“Arrow 2”、“Arrow 3”、“アイアンドーム”)や米国の支援があったにもかかわらず、多くのミサイルを迎撃することができませんでした。

    特に、米国海軍やその他のアメリカの資産がイスラエルの防衛に関与していましたが、効果は限定的でした。ヨルダンのミサイルシステムもいくつかのミサイルを撃墜したとされていますが、世界で最も先進的とされるこれらの防衛システムはイランの攻撃に対して大部分が無力でした。


  • イランの先進技術: イランは進化したミサイル技術を示し、複数の弾頭やデコイを使用して防空レーダーを混乱させました。

    特に、極超音速ミサイルはその速度のため、迎撃が困難でした。

また、10月2日のThe Telegraphの

“How Iran may have breached the world’s best air defences”

と言う記事では、

「ソーシャルメディアに出回った映像は、光の筋が地面にぶつかり、その後の攻撃による被害を映し出しているように見えた。この映像は、イランが世界で最も強固な防空システムのひとつを打ち負かすことに成功したのかという疑問を引き起こした。

アナリストは、まだ判断するには早すぎると警告しているが、システムの性能を評価する際に注目すべきいくつかの兆候はある。」

と述べ、主たる4つの原因を以下のように説明している。

  • タイミング:前回イランが4月にイスラエルに攻撃を仕掛けたとき、その攻撃はかなり先まで電報で伝えられていたため、世界の大半は1週間の準備期間があり、イスラエルとそのアメリカ、イギリス、ヨーロッパの同盟国には、戦闘機や軍艦を配備し、イランの無人機やミサイルの連射を阻止するための準備を整える十分な時間が与えられていた。

    今回の攻撃は、事前通告も含めて、相対的に見て、準備期間が驚くほど短かかった。


  • より高度な兵器:今回使用した弾道ミサイルはマッハ5を超える極超音速で飛ぶことができるため、戦闘機や地上のシステムによる迎撃ははるかに難しい。


  • 弾薬の節約 :防空にはコストがかかる。4月の攻撃では、イスラエルとその同盟国が弾幕を阻止するために約11億ポンド(15億ドル)の費用がかかったと推定されている。

    迎撃用ロケットは数に限りがあるという問題もある。

    ロシアの砲撃からウクライナの都市を守るための西側の努力は、この分野でかなりの資源を使い果たした。

    イスラエルもウクライナも、迎撃ミサイルの多くをアメリカに依存しているため、決断を迫られている。


  • 飽和状態:ここでもまた、防空迎撃ミサイルの不足が懸念されるため、イランが大規模な砲撃でイスラエルを圧倒しようとする恐れがある。

The Telegraphの記事では、

「今夜、イランが発射したミサイルの数は少ないが、より高度なものであることは間違いないようだ。」

と述べ、イランに報復を誓うイスラエルではあるが、仮に報復した場合、イラン側も再攻撃を行うと宣言している中で、イスラエルの防空システムがイランの弾道ミサイル攻撃に万能でないことや十分な弾薬を確保に不安がある現状では、

「それが、紛争に発展させない理由かもしれない」

と報じている。

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