トランプ大統領の脱ドル化阻止に向けた動きは正しく理解されているか?

ウクライナ戦争に関して、ロシアに対する米国を中心とするEU、G7による経済制裁の影響を受けて、ロシアがBRICS向けの貿易の決済通貨を米ドルから自国通貨あるいは貿易のパートナー国の通貨に変更を進めた来たことにより、ロシア以外にもこうした流れに一定のモメンタムがついて来た。

今すぐでないにしろ、この傾向が更に継続すれば、結果として、米ドルの基軸通貨としての地位が危うくなることから、トランプ前大統領が、脱ドル阻止策を発表した。

 
 
 
 
 

9月9日のRTの

“Trump unveils plan to stop de-dollarization”

の記事では、

「トランプ前大統領が、脱ドル阻止策を発表し、国際取引においてグリーンバックに取って代わろうとする国々に100%の関税をかけることを約束した。」

と報じた。

同記事の中で、現状に関して、

「土曜日にウィスコンシン州で行われた選挙集会で、前アメリカ大統領は支持者を前に、世界の基軸通貨としてのグリーンバックの地位を維持することを約束し、貿易を他の方法で決済する国が増えているため、“大きな四面楚歌の状態にある”と強調した。」

と述べ、

「ドルから離脱すれば、アメリカとの取引はできなくなる。なぜなら、あなた方の商品に100%の関税をかけるからだ」

として、米国との貿易決済を米ドルで行うこと強く求めたと報道している。

トランプ前大統領が脱ドル化阻止に向けて計画を実施した背景には、米国が世界の貿易の決済通貨としての地位を長年維持することにより、米国以外での大きな米ドル需要が発生し、これが米国政府の資金調達の上で長年大きく手助けとなって来たことを熟知しているからだと推察する。

まして、2020年から続いたバイデン政権では、緩めの公約に基づいて財政支出が急上昇し、多くの経済専門家が米国の財政破綻リスクに警鐘を鳴らしていることも、今回、脱ドル化阻止プランを発表したことに理由の1つであると思量する。

これに対して、9月9日のBloombergの

“トランプ氏のドル支配構想、逆効果もたらす恐れ-コメルツ銀が警鐘”

の中では、コメルツ銀行の為替調査責任者ウルリッヒ・ロイヒトマン氏のレポートを引用して、

「世界貿易におけるドル支配を強いるトランプ前米大統領の計画は、経済的混乱を引き起こし、最終的にドル安を招くリスクが高い」

と指摘したと報じ、

「“禁止関税”は意図した効果と逆の結果をもたらす可能性がある」

と、同氏が警鐘を鳴らしたことを伝えた。

その理由としては、厳しい政策が各国のドル離れを誘発し、米国債の安全資産としての地位を脅かし、“大規模なドル安につながる”可能性があると、同氏は分析している。

トランプ前大統領の脱ドル化阻止に関する計画を評価する際には、「禁止関税」政策に加えて、同氏の経済制裁の使用を減らす考え方についても併せて考慮する必要があるのではないだろうか。

9月7日のRTの

“Trump pledges to scale back use of sanctions”

の記事では、

『木曜日、ニューヨークのエコノミック・クラブに出席したトランプ前大統領は、「ロシアやその他の国々に対するワシントンの経済制裁を“強化または修正”するつもりか」と質問され、「共和党の大統領候補ドナルド・トランプは、11月の選挙で勝利した場合、アメリカによる制裁の使用を大幅に減らすと約束した」』

と報じた。その理由として、

『「最終的にはドルを殺し、ドルが象徴するすべてを殺すことになるからだ」

と説明し、

「ドルが国際基軸通貨であり続けることは“重要”だ」

と前大統領は主張し、

「もし世界の通貨としてのドルを失ったら、それは戦争に負けたのと同じことで、第三世界の国になってしまうと思う。そうなってはいけない」』

と語ったとされる。

このように、脱ドル化を阻止するためには、先ずは、脱ドル化が進んだ一番の原因である、これまでの経済制裁を見直し、可能な限り経済制裁を減らすことにより、米ドルの国際基軸通貨としての地位を揺るぎないものにした上で、その上で、それに従わない事例については、米国との貿易に於いて米ドルでの決済を求め、応じない場合には「禁止課税」を課すと言っており、脱ドル化阻止には経済制裁を出来るだけ減らすことがそのボトムラインにあることは明らかであると思われる。

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