下火になって来た(?)ESG

ここ数年は、資産運用の世界では、ESGや責任投資と言った言葉が脚光を浴びて来た。

しかし、海外市場では、状況が変わって来たようである。

7月18日のBloombergの“Backlash Against ESG Seen in Sharp Decline of Fund Launches”では、世界最大手の資産運用会社では、ESGファンドの新規組成が静かに停滞している状況を取り上げています。

 
 
 

資産運用業界で何が起こっているのだろうか?

同記事では、その原因について、「米国での政治的攻撃と欧州でのグリーン・ウォッシュの取り締まりを背景に、金融業界がESGラベルに冷淡になっていることを示す最新の兆候だ。

パンデミック時代の全盛期以来、インフレ率の上昇、金利の上昇、クリーン・エネルギー関連銘柄の低迷というカクテルが、ESGファンドのパフォーマンスを押し下げてきた。

好調なファンドの多くはハイテク株で占められており、その多くはESGの属性に疑問がある。」と説明している。

7月18日のBloomberg Greenの“ESG Investing_Vanishing act”では、資産運用会社各社のESGへの取組姿勢の変化について、

「米国の企業の中にはESGに固執しているところもあるが、その呼び名は薄れつつあると言うところもある。ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループはアナリストの職名にESGという言葉を「持続可能性と移行」という言葉に置き換えた。ウェリントン・マネジメントとラザード・アセット・マネジメントはESG関連の人員を削減した。バンク・オブ・アメリカはESGチームを再編し、同グループの活動をクリーン・エネルギーと統合した。」

と述べている

日本では、依然としてESG投資や責任投資に係る関心の度合いは依然として強いと言えるようだ。

ESG研究所が2024年1月30日発表した「ESG投資実態調査2023」では、以下ように要点を伝えている。

  • ESG投資残高(有効回答数61)は約104兆3000億円と、前回の22年調査(同41)に比べ約22兆6000億円増えた。一方、運用資産全体に占めるESG投資の割合は57%と同2ポイント低下した。

  • 運用資産全体に占めるESG投資の割合を10%刻みで尋ねたところ、現在、「10%未満」が34%(設問ごとの有効回答数に対する各選択肢回答数の割合、以下同じ)、「90%以上」は33%で二極化している。一方、5年後の計画は「10%未満」が24%に低下し、「90%以上」は46%に上昇する。

同レポートでは、「現状維持か増やす計画の機関投資家や年金基金が多く、ESG投資を重視する流れは変わっていないように見受けられる。」と分析している。

一方、ESGや責任投資の本場である米国では、ESGをめぐる議論は確実に変化したと言える。

前述のBloomberg Greenの“ESG Investing_Vanishing act”では、こうした変化について、

「ほんの少し前まで“ネットゼロ”の排出目標を掲げていた銀行のトップたちは、 化石燃料企業と取引を続けている。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズなどの投資大手は、地球温暖化と闘うために設立された団体を放棄した。環境や社会に関する株主提案に対する投資家の支持は低下し、気候変動や多様性、公平性、包摂性(DEI)への言及は、企業の電話会議ではほとんど聞かれなくなった。」

と伝えている。

この背景には色々な要因があると思われるが、同記事では、

「そしておそらく最も重要なのは、グリーンエネルギーの売り文句の大きな部分を占める風力と太陽光が、最近は単純に悪い投資になっていることだ。

S&Pグローバル・クリーン・エネルギー指数は、S&P500が過去最高値に上昇したにもかかわらず、2021年初めのピークから50%以上も急落している。」

と分析している。

資産運用の1丁目1番地は、運用パフォーマンスであることは言うまでもなく、ESG投資や責任投資であっても、例外はないと言える。

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