TikTokの米国禁止を巡る新しい動き(続)

米国でTikTokの利用を禁止する可能性のある法律は、“Protecting Americans’ Data From Foreign Adversaries Act of 2024 ”(外国敵対勢力から米国人のデータを保護する2024年法、以下、「2024年法」と略す。)と呼ばれ、この法令は、ウクライナ、イスラエル、台湾に対する953億ドルの緊急支援策とセットにされて、バイデン大統領が「2024年法」に署名済みとなっている。

これにより、この法案は、ウクライナ、イスラエル、台湾に対する953億ドルの緊急支援策と結びついた。

TikTokの親会社であるケイマン籍のByteDance Ltd.は一定期間にTikTokの米国の持分を売却できなければ、アプリの全国的な禁止に直面することになる。

禁止スケジュールについては、ByteDance Ltd.による「適格な売却」がない場合、「2024年法」は制定から270日(9ヶ月)後の2025年1月15日に発効し、米国大統領は、同社が合法的な売却交渉を進めている場合、「90日以内」の1回限りの延長を認めることができる。

この場合に、米国での利用禁止は2025年4月19日となる見込みだ。

Reutersは、『「TikTokの禁止は「1億7000万人のアメリカ人の言論の自由を踏みにじることになる」とByteDance Ltd.は主張し、憲法修正第1条の根拠に基づいて米国の新法に異議を申し立てるとしている。

ByteDance Ltd.はこの法律に対して裁判所で異議を申し立てる』と発表しているが、関係者によれば、「もしByteDance社が法廷闘争に敗れた場合、事業売却ではなく、サービス終了を選択する予定である。」と報道している。

私もTikTokのショート動画をよく見ているので、そのユーザーの立場から申し上げると、YouTube同様にTikTokのショート動画やLive動画は日本にいながら世界各国のクリエーターが作ったこれらのコンテンツを楽しめるようになっているので、「2024年法」が求めるようなTikTokの米国事業を切り離して、第三者に売却する場合、ByteDance Ltd.の傘下でグローバルにTikTok事業展開しているのと比較すると、コンテンツ・クリエーションの観点からも大きくスケール・ダウンしている印象を受ける。

「2024年法」は、中国をロシア、北朝鮮、イランなどと並ぶ「外国の敵対国」に指定しているので、万が一、「2024年法」では直接的には認められていない、ByteDance Ltd.の株式の内、創業者持分が約20%あるが、これを2024年法が定義する、「外国の敵対国」以外の国の投資家に売却することで、米国での利用禁止を回避することは出来るのだろうか?

これが認められれば、米国のTikTok事業は従前と同様に継続できることから、既存のByteDance Ltd.の既存投資家にとっても同社の企業価値を損なわない点では望ましいと思われる。

ここからは私見となるが、ByteDance Ltd.の株式の売却は、おそらく米国の規制機関による徹底的な審査を受けることになるのではないだろうか。

売却先の第三者が信頼でき、国家安全保障上のリスクがないと判断されれば、売却は承認される可能性があると思量するが、米国政府は、新たな所有形態がTikTokの米国ユーザーのデータ・プライバシーとセキュリティを保証することを必要とするだろう。

この先、TikTokはどのようになっていくのだろうか?禁止のスケジュールについては前述した通りであるが、ByteDance Ltd.による法定闘争や中国政府からの反発等も考えると、このデッドラインは後ろにずれて行くことになり、バイデン政権の下では結論が出ないで、2025年から始まる新しい政権の下で、TikTokの運命が決まることことになると見込まれる。

現在の支持率等を鑑みると、トランプ前大統領が政権に復帰する可能性が高いと見られており、そうなると、トランプ前大統領は、TikTokの米国での使用禁止について、言論の自由の観点から懸念を表明していることや彼の超大口の支持者である、Jaff Yass氏(フィラデルフィアを拠点とするトレーディング会社Susquehanna International Group, LLP (SIG)の共同創業者)が彼個人及びSIGを通じてByteDance Ltd.の超大口投資家であることを考慮すると、トランプ前大統領が、政権復帰後にTikTokの米国での使用禁止の停止も対中国の交渉材料に活用するなどして、本案件が政治的な“ディール”化していくのではないかと思う。

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