理性を失った、EUによるロシア及びベラルーシの穀物に対する関税引き上げ

欧州委員会は、3月中旬にロシアとベラルーシからの穀物、油糧種子、および小麦、トウモロコシ、ヒマワリ粕などの派生製品の輸入に対する関税を大幅に引き上げることを提案していたが、この4月1日からこの関税引き上げを適用した。

関税は1トン当たり95ユーロまたは従価税50%に設定され、これらの輸入品がEU市場に入るのを事実上阻止することを目的としている。

欧州委員会の委員長フォン・デア・ライエン氏「によれば、この動きは「ロシアの穀物がEUの穀物市場を不安定にするのを防ぐ」ためのものだとし、EU当局は以前から、ロシア産の安価な穀物でEU域内は「洪水」を起こしていると主張していた。

しかし、この発言には違和感を覚える人も多いだろう。

ウクライナに対するロシアの特殊軍事作戦が実行されている中、黒海の主要航路がほぼ全面的に閉鎖されて、ウクライナは穀物輸出を陸路に頼らざるを得なくなっており、その結果として、大量の穀物が中央ヨーロッパに流れ込んでいる状況が昨年からメインストリーム・メディアでも報道されている。

実際、昨年9月にはEUは穀物価格の下落を恐れる農家を保護するため、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアの5カ国については、ウクライナ産穀物の輸入を一時的に禁止することにしている。

 

RIA Novostiが分析したEUの統計によると、ロシアは本年1月、EUへの穀物供給を12月に比べてほぼ半減させており、ロシアのEUへの農産物輸出は、1月にわずか10万8000トンにまで落ち込んだとしている。

この関税の目的には、

①ウクライナから不法に横領され、ロシア産と偽装された穀物の輸入を止めること、

②ロシアのウクライナ戦争の資金源となっている収入源を断つと言ったこと

も含まれているとされているようだ。

さて、本件については、EUは、ロシアとベラルーシの穀物のEU域外への輸送は影響を受けないため、この関税が世界の食料安全保障に影響を与えることはないと主張している。

世界の穀物市場は、地域によって分断されているものではないと考える方が自然かなと思うが、フォン・デア・ライエン氏は独自の見方を持っておられるようだ。

一方、ロシア政府は前述の関税が世界の食料安全保障に意図しない結果をもたらしかねないという懸念を持っているとされ、ロシア政府の Dmitry Peskov 氏報道官は、3月中旬に「この措置によって最も大きな打撃を受けるのは誰か?」という質問に対して「ヨーロッパの消費者は間違いなく被害を受ける。

一方、私たちロシアには多くの代替供給ルートがある」と述べ、「これも不公正競争の明らかな例である。」と付け加えた。

どちらの言い分が正しいのか、時間が教えてくれることにはなるが、EUは状況を注意深くモニタリングして、グローバル市場の食糧事情や価格に大きな影響が出始めたら、新たな政策を調整する用意をしておく必要があるのではないか。

EUは状況を注意深く監視し、もし関税が世界の食料供給と価格に大きな影響を及ぼし始めたら、その政策を調整する用意をしておく必要があるだろう。

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